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6章、北の大地
10、顔合わせ
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最奥の中央にある席。そこにソフィアが座っていた。傍らには、知らない女性が立っている。胸元に咲いている『リエーナの薔薇』の刺繍は、直属の騎士団員である証。フレアは見当たらない。
「昨日ぶりね、エドワーズ」
「あのさ。ここでは『ソフィア様』って呼んだ方がいい?」
「必要ないわ。最初に会った時と変わらず、普段通りのあなたでいてちょうだい。
後ろにいる子たちは、あなたの仲間?まずはお互いに自己紹介の方から済ませましょう」
ソフィア以外の全員が一斉に席を立つ。上で見かけた者たちとは違う。この場にいるのは、王国を真に支えている忠臣たちだ。
浅黒い肌をした老兵の名はアルベルド。軍のトップ。オストレリア王国の将軍らしい。その鋭い眼光は容赦なく俺たちのことを値踏みしていた。
背後には、彼の下で働く部隊の長たちが控えている。
『王国の盾』騎士団長、リデック。
攻撃隊、『ハーマイルの翼』騎士団長、ウィルヘイム。
歴戦の猛者たちだ。フレアは騎士団長の中で唯一の女性。将軍アルベルドの隣には、軍の関係者たちが続いている。
軍師、へクター。武と知略、その両方を兼ね備えた切れ者。
オストレリア軍は完全な実力主義らしい。故にアルベルド以外の者たちを差し置いて、歳若い彼が上座の席に着いている。
向かって右側にいるのは、国の政治に関わる者たち。
財政担当官のキンメルは、丸眼鏡をかけた細身の男。見るからに優等生という感じがする。かなりの出世頭らしい。目の前に積まれた書類の高さは三十センチを超えていた。
ソフィアの付き人の名前はジェシカ。セシルと同じくフレアの同期で、この三名が現騎士団の筆頭戦力。黒髪の癒し系お姉さん。剣を握って戦っている姿が想像できない。
いずれ直接目にする機会はあるだろう。
「それにしても驚かされたわ。リーゼは聞いていた通りの容姿をしているし、一緒に連れてきたティアっていう子は、物凄く美人なんだもの」
「フレア、リーゼの見た目を何だって?」
「……青い瞳を持つ妖精よ」
「あっ!それ、だいたい合っているのかも」
「フレアが、私のことをそんな風に?……恥ずかしい」
「あたしって美人なの?ふーん。言われてみると悪い気はしないわね!」
事実、二人はとても目立っていた。ソフィアに勝るとも劣らない美貌の持ち主。
騎士団員のジェシカが「ほえ~」と、間抜けな声を出して見とれている。面白そうな人だった。
「上では見世物になっていたでしょう?悪かったわね。憶測だけでおかしな噂を流さないように釘を刺しておきたかったの。
これでようやくこちらの方に集中できるわ」
ソフィアが見つめる先。頭上から青白い光が近づいてくる。誰かが動く石板の上に乗っているのだ。
「イルシア様!それ以上身を乗り出すと落ちてしまいます。お下がりください!」
「見てください。もう皆さん揃っていますよ。きっとわたくしたちが最後です。まさかお姉さま方を待たせてしまうことになるなんて……。
いっそ遅れた原因であるあなたが、わたくしのことを抱えてここから飛び降りればいいのでは?」
「この高さでは死にますよっ!」
聞き覚えのある声に反応したリーゼが上を見上げる。確信したのだろう。次の瞬間、一目散に駆け出していった。
「さあ、ようやく到着しましたよ!」
「お待ちください、イルシア様。まだ降下の勢いが完全に止まっていません!」
「――フレアッ!!」
「ん?いったい誰が私のナヲッホウッ!?」
フレアの体が後方に吹っ飛んでいく。リーゼからのタックルを腹部に受けたのだ。そのまま固い地面の上に転がされる。絶対痛い。
隣に立つ女王のイルシアは、状況を把握できず呆気にとられていた。
「フレア!ずっと、ずっと会いたかった!」
「……ッ!?その声は!まさかリーゼ……なのか?」
リーゼは、フレアの胸元に向かってグリグリと顔をうずめていた。待ち望んでいた再会。その反動が一気にきたのだろう。
フレアが恐る恐る手を伸ばす。以前とは違って振り払われるようなことはない。さんざん袖にされ続けていたからな。感極まった様子でリーゼの髪の匂いを嗅いでいる。相変わらずの変態だった。
「スーハー、スーハー!……リーゼだ。本物のリーゼがここにいるっ!!」
「そんなの当たり前。フレアは少しだけ汗くさい」
「あのなぁ二人とも。一応今は人前なんだぞ?」
「あら、エドワーズ。無粋なことを言ってはダメよ。久しぶりの再会なんだから。思うようにさせてあげなさい」
「(どうせ面白がっているだけだろう?)」
ソフィアは笑みを隠しきれていなかった。誰もが皆、唖然としている。
フレアが王国最強の騎士団長様ねぇ?老将軍のこめかみがピクピクと痙攣していた。ぶちギレる一歩手前に見える。その雰囲気を肌で感じた者たちが、一斉に慌てだし始めた。
「二人とも、とにかく今は離れてください!」
「フレアちゃん。アルベルド将軍がとーっても怖い顔で睨んでいるわ。また朝まで反省文を書かせられるわよ?
怒られる前に、早くそこからどいた方がいいんじゃない?」
セシルは青ざめた顔をしながら、目の前にいる上司の体を床の上から引き剥がしていた。
ジェシカは、フレアのことを『ちゃん』付けで呼んでいる。いつものことなのだろう。誰もなにも言わない。
ティアが、ウズウズと混ざりたそうにしていたので、流石に止めておいた。
「あらためてご挨拶を。イルシア・イーヴァ・オストレリアです。
姉妹共々、これから仲良くしてくださいね!」
「ちょっと子どもっぽい所があるけど、自慢の妹なの。姉である私の代わりに、女王としての責務をよく果たしてくれているわ」
「お姉さま!わたくしと歳は一つしか違わないのに。ヒドイです!」
仲睦まじい様子で会話をする銀髪姉妹。
「姉である私の代わり」――ソフィアはそう口にした。異議を唱える者はいない。イルシアが寄り添うようにして隣に並び立つ。それが本来のあり方なのだ。
「つまりソフィアが、この国を裏で実質的に治めているってことなのか?」
「正解。面倒なことになっているでしょう?訳はそのうち説明するわ。
今日は顔合わせのようなものだから。まずは食事でもしながら、お互いに親睦を深めましょう」
「エドワーズ様。わたくしに是非とも旅のお話を聞かせてくださいね?」
「えーっと?イルシア……女王陛下。俺の話は大して面白くないかもしれませんけど、それでもよければ」
「イルシア、です!お姉さまのことは呼び捨てにしているじゃないですか。それと、もっと砕けた話し方をしてもらっても構いません。わたくしが許可します」
「……わかったよ、イルシア。これでいいかな?」
「はい!」――ニッコリと満面の笑みを浮かべて応えるイルシア。周りからの視線が痛い。味方もなにも、ここでは俺たちは余所者だ。一部の者たちを除いて、まったく信用されていない。
険しい表情でこちらを見つめる老将軍。彼の信頼を得られるかどうかで、今後の立ち位置が変わってきそうだ。
「そういえば。ねぇ?フレア。イルシアの迎えが遅れた理由は何なのかしら?」
「そ、それは!?申し訳ありませんっ、ソフィア様!!」
「まったく、答えになっていないわね。
――イルシア。あなたの口から説明してくれる?」
「昨日壊してしまった壁の修繕作業を終えたあとに、仮眠をとっていたら寝過ごしてしまったそうですよ。お姉さま」
シュンとした様子で落ち込むフレア。まるで怒られた犬とその飼い主だ。
「またか」と、小声で誰かが呟く。前にも似たようなことがあったらしい。ソフィアの目つきはこう言っていた。
――さて。どうやって弄ってあげようかしら?
バキッ!と何かが割れる音が辺りに響く。老将軍の片手がテーブルの一部を粉砕していた。額には血管が浮き出ている。
同じ騎士団の副官であるセシルの心労は相当なものだろう。心底同情する。
「アルベルド。あなた、もしかして怒っているの?」
「……いえ、ソフィア様。私は特に怒ってなどいませんが?」
「(絶対ウソだ!!)」
何人かは、心の中でツッコミを入れていたに違いない。
老将軍の隣にいる、軍師のへクターが手を上げた。「茶番に付き合うつもりはありません」と顔に出ている。
フレアを弄る機会を邪魔されたくないソフィアは気づかないふりをしていた。だが、やがて無視をするわけにもいかなくなり、残念そうな表情をして息を吐く。
「……何かしら?」
「ソフィア様。まずは王国の守りの要である『古代魔導具』に関して、この場で早急に議論をするべきであると考えますが。いかがでしょう?」
「その件については、そう急ぐことはないわ。前にも伝えておいた筈でしょう?」
ソフィアは「取り合うつもりはない」と首を振る。意外にもへクターはすぐに引き下がった。
「疑いの目を向ける気持ちはわかるわ。私の判断を信じなさい」
「……いえ、出過ぎた真似をいたしました。申し訳ございません」
通るはずのない意見。それを敢えて口にしたのだ。へクターは遠回しにこう言っているのだろう。
――お前たちは本当に古代魔導具を所持しているのか?
本体を引き渡すのは簡単だ。そのタイミングは今ではないらしい。ソフィアの考えは分からなかった。しかし、これだけははっきりとしている。この場にいる誰よりも、彼女は賢い。
「さっきから随分と縮こまっているじゃない。一体どうしたのかしら?――フレア?」
「………」
ソフィアが、壁際に立っていたフレアに視線を向ける。様子がおかしい。何故か微動だにしなかった。セシルが訝しげにその顔を覗きに行く。
「団長……?ヒッ!」
口から漏れた小さな悲鳴。涙目でこちらに振り向く。リーゼは心配そうに見ていたが、やがて気がついたらしい。「あっ!」と驚きの声を上げていた。
周りにいた者たちも、徐々に何が起きているのかを理解し始める。
「あいつ、まさか――」
「……グゥ」
フレアは、口元からよだれを垂らしてグッスリ寝ていた。
その後、老将軍の雷が落ちたことは言うまでもない。
「昨日ぶりね、エドワーズ」
「あのさ。ここでは『ソフィア様』って呼んだ方がいい?」
「必要ないわ。最初に会った時と変わらず、普段通りのあなたでいてちょうだい。
後ろにいる子たちは、あなたの仲間?まずはお互いに自己紹介の方から済ませましょう」
ソフィア以外の全員が一斉に席を立つ。上で見かけた者たちとは違う。この場にいるのは、王国を真に支えている忠臣たちだ。
浅黒い肌をした老兵の名はアルベルド。軍のトップ。オストレリア王国の将軍らしい。その鋭い眼光は容赦なく俺たちのことを値踏みしていた。
背後には、彼の下で働く部隊の長たちが控えている。
『王国の盾』騎士団長、リデック。
攻撃隊、『ハーマイルの翼』騎士団長、ウィルヘイム。
歴戦の猛者たちだ。フレアは騎士団長の中で唯一の女性。将軍アルベルドの隣には、軍の関係者たちが続いている。
軍師、へクター。武と知略、その両方を兼ね備えた切れ者。
オストレリア軍は完全な実力主義らしい。故にアルベルド以外の者たちを差し置いて、歳若い彼が上座の席に着いている。
向かって右側にいるのは、国の政治に関わる者たち。
財政担当官のキンメルは、丸眼鏡をかけた細身の男。見るからに優等生という感じがする。かなりの出世頭らしい。目の前に積まれた書類の高さは三十センチを超えていた。
ソフィアの付き人の名前はジェシカ。セシルと同じくフレアの同期で、この三名が現騎士団の筆頭戦力。黒髪の癒し系お姉さん。剣を握って戦っている姿が想像できない。
いずれ直接目にする機会はあるだろう。
「それにしても驚かされたわ。リーゼは聞いていた通りの容姿をしているし、一緒に連れてきたティアっていう子は、物凄く美人なんだもの」
「フレア、リーゼの見た目を何だって?」
「……青い瞳を持つ妖精よ」
「あっ!それ、だいたい合っているのかも」
「フレアが、私のことをそんな風に?……恥ずかしい」
「あたしって美人なの?ふーん。言われてみると悪い気はしないわね!」
事実、二人はとても目立っていた。ソフィアに勝るとも劣らない美貌の持ち主。
騎士団員のジェシカが「ほえ~」と、間抜けな声を出して見とれている。面白そうな人だった。
「上では見世物になっていたでしょう?悪かったわね。憶測だけでおかしな噂を流さないように釘を刺しておきたかったの。
これでようやくこちらの方に集中できるわ」
ソフィアが見つめる先。頭上から青白い光が近づいてくる。誰かが動く石板の上に乗っているのだ。
「イルシア様!それ以上身を乗り出すと落ちてしまいます。お下がりください!」
「見てください。もう皆さん揃っていますよ。きっとわたくしたちが最後です。まさかお姉さま方を待たせてしまうことになるなんて……。
いっそ遅れた原因であるあなたが、わたくしのことを抱えてここから飛び降りればいいのでは?」
「この高さでは死にますよっ!」
聞き覚えのある声に反応したリーゼが上を見上げる。確信したのだろう。次の瞬間、一目散に駆け出していった。
「さあ、ようやく到着しましたよ!」
「お待ちください、イルシア様。まだ降下の勢いが完全に止まっていません!」
「――フレアッ!!」
「ん?いったい誰が私のナヲッホウッ!?」
フレアの体が後方に吹っ飛んでいく。リーゼからのタックルを腹部に受けたのだ。そのまま固い地面の上に転がされる。絶対痛い。
隣に立つ女王のイルシアは、状況を把握できず呆気にとられていた。
「フレア!ずっと、ずっと会いたかった!」
「……ッ!?その声は!まさかリーゼ……なのか?」
リーゼは、フレアの胸元に向かってグリグリと顔をうずめていた。待ち望んでいた再会。その反動が一気にきたのだろう。
フレアが恐る恐る手を伸ばす。以前とは違って振り払われるようなことはない。さんざん袖にされ続けていたからな。感極まった様子でリーゼの髪の匂いを嗅いでいる。相変わらずの変態だった。
「スーハー、スーハー!……リーゼだ。本物のリーゼがここにいるっ!!」
「そんなの当たり前。フレアは少しだけ汗くさい」
「あのなぁ二人とも。一応今は人前なんだぞ?」
「あら、エドワーズ。無粋なことを言ってはダメよ。久しぶりの再会なんだから。思うようにさせてあげなさい」
「(どうせ面白がっているだけだろう?)」
ソフィアは笑みを隠しきれていなかった。誰もが皆、唖然としている。
フレアが王国最強の騎士団長様ねぇ?老将軍のこめかみがピクピクと痙攣していた。ぶちギレる一歩手前に見える。その雰囲気を肌で感じた者たちが、一斉に慌てだし始めた。
「二人とも、とにかく今は離れてください!」
「フレアちゃん。アルベルド将軍がとーっても怖い顔で睨んでいるわ。また朝まで反省文を書かせられるわよ?
怒られる前に、早くそこからどいた方がいいんじゃない?」
セシルは青ざめた顔をしながら、目の前にいる上司の体を床の上から引き剥がしていた。
ジェシカは、フレアのことを『ちゃん』付けで呼んでいる。いつものことなのだろう。誰もなにも言わない。
ティアが、ウズウズと混ざりたそうにしていたので、流石に止めておいた。
「あらためてご挨拶を。イルシア・イーヴァ・オストレリアです。
姉妹共々、これから仲良くしてくださいね!」
「ちょっと子どもっぽい所があるけど、自慢の妹なの。姉である私の代わりに、女王としての責務をよく果たしてくれているわ」
「お姉さま!わたくしと歳は一つしか違わないのに。ヒドイです!」
仲睦まじい様子で会話をする銀髪姉妹。
「姉である私の代わり」――ソフィアはそう口にした。異議を唱える者はいない。イルシアが寄り添うようにして隣に並び立つ。それが本来のあり方なのだ。
「つまりソフィアが、この国を裏で実質的に治めているってことなのか?」
「正解。面倒なことになっているでしょう?訳はそのうち説明するわ。
今日は顔合わせのようなものだから。まずは食事でもしながら、お互いに親睦を深めましょう」
「エドワーズ様。わたくしに是非とも旅のお話を聞かせてくださいね?」
「えーっと?イルシア……女王陛下。俺の話は大して面白くないかもしれませんけど、それでもよければ」
「イルシア、です!お姉さまのことは呼び捨てにしているじゃないですか。それと、もっと砕けた話し方をしてもらっても構いません。わたくしが許可します」
「……わかったよ、イルシア。これでいいかな?」
「はい!」――ニッコリと満面の笑みを浮かべて応えるイルシア。周りからの視線が痛い。味方もなにも、ここでは俺たちは余所者だ。一部の者たちを除いて、まったく信用されていない。
険しい表情でこちらを見つめる老将軍。彼の信頼を得られるかどうかで、今後の立ち位置が変わってきそうだ。
「そういえば。ねぇ?フレア。イルシアの迎えが遅れた理由は何なのかしら?」
「そ、それは!?申し訳ありませんっ、ソフィア様!!」
「まったく、答えになっていないわね。
――イルシア。あなたの口から説明してくれる?」
「昨日壊してしまった壁の修繕作業を終えたあとに、仮眠をとっていたら寝過ごしてしまったそうですよ。お姉さま」
シュンとした様子で落ち込むフレア。まるで怒られた犬とその飼い主だ。
「またか」と、小声で誰かが呟く。前にも似たようなことがあったらしい。ソフィアの目つきはこう言っていた。
――さて。どうやって弄ってあげようかしら?
バキッ!と何かが割れる音が辺りに響く。老将軍の片手がテーブルの一部を粉砕していた。額には血管が浮き出ている。
同じ騎士団の副官であるセシルの心労は相当なものだろう。心底同情する。
「アルベルド。あなた、もしかして怒っているの?」
「……いえ、ソフィア様。私は特に怒ってなどいませんが?」
「(絶対ウソだ!!)」
何人かは、心の中でツッコミを入れていたに違いない。
老将軍の隣にいる、軍師のへクターが手を上げた。「茶番に付き合うつもりはありません」と顔に出ている。
フレアを弄る機会を邪魔されたくないソフィアは気づかないふりをしていた。だが、やがて無視をするわけにもいかなくなり、残念そうな表情をして息を吐く。
「……何かしら?」
「ソフィア様。まずは王国の守りの要である『古代魔導具』に関して、この場で早急に議論をするべきであると考えますが。いかがでしょう?」
「その件については、そう急ぐことはないわ。前にも伝えておいた筈でしょう?」
ソフィアは「取り合うつもりはない」と首を振る。意外にもへクターはすぐに引き下がった。
「疑いの目を向ける気持ちはわかるわ。私の判断を信じなさい」
「……いえ、出過ぎた真似をいたしました。申し訳ございません」
通るはずのない意見。それを敢えて口にしたのだ。へクターは遠回しにこう言っているのだろう。
――お前たちは本当に古代魔導具を所持しているのか?
本体を引き渡すのは簡単だ。そのタイミングは今ではないらしい。ソフィアの考えは分からなかった。しかし、これだけははっきりとしている。この場にいる誰よりも、彼女は賢い。
「さっきから随分と縮こまっているじゃない。一体どうしたのかしら?――フレア?」
「………」
ソフィアが、壁際に立っていたフレアに視線を向ける。様子がおかしい。何故か微動だにしなかった。セシルが訝しげにその顔を覗きに行く。
「団長……?ヒッ!」
口から漏れた小さな悲鳴。涙目でこちらに振り向く。リーゼは心配そうに見ていたが、やがて気がついたらしい。「あっ!」と驚きの声を上げていた。
周りにいた者たちも、徐々に何が起きているのかを理解し始める。
「あいつ、まさか――」
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