サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

第三章 人間の街

第36話 釣り

　家具屋惨殺事件(俺名称)から、5日が経った。
　あれから、俺は気付いてしまったんだよね。
　これ、馬鹿な商会を釣れるんじゃないかと。
　適当に商会に行っては適当に何かを買って、影収納と金を見せびらかす。
　欲に走った商人が手を出すんじゃないかなって。

　「うはうはすぎる」

　目立たない様にとはなんだったのか。
　この五日間で、商会が3つも消えた。
　不思議な事もあるもんだ。
　従業員や会長が行方不明になり、商品が全て消える。
　衛兵はてんやわんやの大騒ぎよ。
　この街の領主まで陣頭指揮を取って事件を捜査してる。

　「ついでに魔物寄せの香水も手に入ったし文句ない成果ではなかろうか」

　因みに俺は全く疑われていない。
　殺し終わった後に、影の中に入って移動して衛兵の所で世間話してるんだ。
　大体の犯行時間に衛兵と喋ってるから、容疑者にはなっておらず、裏組織の関与が疑われている。
　まあ、最近は衛兵も休み無しで働いてるから世間話も出来てないんだけど。

　「うーん。【影魔法】を維持する魔力がきつくなってきたし、そろそろ潮時かなー」

　とりあえず商品は全て貰って来たから、良く分からない物までいっぱいあるんだよね。
　どうにかして処理したいけど、売ったらバレるしなあ。

　この五日間は、午前中に図書館。
　午後からは、森に散歩に出掛けるか商会巡りと忙しくしてたし、ちょっと休憩しようかな。



　「ふんふんふんふーん」

　「キュンキュンキュン！」

　俺は今、影の中でスタンピードの仕込みをしている。
　騎士団が魔物の群れを見つけていたら台無しだが、今の街はそれどころじゃないので魔物の対処は後回しになるだろう。
　検問もかなり厳しくなっているし、街を出る時もかなり入念にチェックされるぐらいだ。

　「出来ればこの混乱を利用してスタンピードを起こしたい所だよね。後手後手に回せればそれだけ戦力を削れるし」

　「キュンキュン！」

　おっ。
　妖狐はサッカーの才能があるのかな？
　刺客の首を足を使ってリフティングみたいな事をしている。
　俺に見てほしいのかドヤ顔もしてる。

　「さては、影の中で練習してたな？　中々上手じゃないか！」

　よーし！　仕込みは一時中断して遊んでやろう！
　最近は森に散歩とブラッシングくらいでまともに遊んであげてなかったからな！

　「ほっほっほっと！　どうよ！」

　「キュンキューン！」

　サッカーなんてまともにやった事ないけど、体育の時間にサッカー部がやってたおしゃれなリフティングを見様見真似でやってみせる。
　ヴァンパイアの身体能力に感謝だな。
　割と簡単にできたぜ。
　妖狐も俺の真似をしようとして失敗していた。
　べちょっと音がして首を落としてしまう。

　「キュン…」

　「ふははは！　四本足では難しいだろう！　そら！　ボールを替えてもう一度だ！　お前のオリジナルの技でも考えてみろ！」

　俺は新しい首を渡してドヤ顔をする。
　前世の名前も知らないサッカー部のお陰だな。

　うーん。良い息抜きになるな。
　明日は服を取りに行く日だし、もう少し作業を進めたかったけど、まあいいだろう。