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第三章 人間の街
第37話 ニューコスチューム
しおりを挟む妖狐とリフティングに熱中した次の日。
俺は朝からテンション高めに服屋に向かっていた。
「今日も衛兵さんが走り回ってますねぇ」
ご苦労様です。
是非とも早く犯人を見付けて、平和な街並みに戻してほしいもんです。
心から応援してますよ。
「おはようございまーす」
「いらっしゃいませ、お客様。お待ちしておりました」
相変わらずイケおじだぜ。
俺も年を取ったらこうなりたいもんです。
ヴァンパイアに寿命があるのかはさておき。
「我々職人一同の最高傑作にございます」
「おおおぉぉ…」
理想通り過ぎて言葉が出ない。
マネキンみたいなのに着せられてる、俺が着てみたかったマフィアスーツ。
そしてレザーロングコート。
「素晴らしい。店主、素晴らしいぞ!」
「そう言って頂けると我々も頑張った甲斐があったというものです」
いや、語彙力が無くて申し訳ない。
本当に素晴らしいんだ。
中の白いカッターシャツ以外は全部黒。
ベルトとネクタイも注文通り用意してくれてるし文句のつけようがない。
店主も誇らしげな顔をしておるわ。
「さっそく、着てみても?」
「勿論でございます。ささっ、こちらへ」
俺は逸る気持ちを抑えて、試着室の様な所でいそいそと着替える。
「お? おおおお! ファンタジー定番の自動調整! すげー!」
だめだ! 今日のテンションは天元突破してるぞ!
「お客様、こちら姿見でございます」
「おお! おおお! おおおおお!」
言語が行方不明になられた。
もう完璧じゃん!
良い感じに厨二病を拗らせたファッションになってる!
「店主! ありがとう!」
「いえいえ。これが仕事で御座いますれば。そろそろ、機能の説明をさせて頂いても?」
「機能?」
「はい。サイズの自動調整は既に体験して頂いたと思いますが、他に防汚、防水、防火、温度調整の魔法付与をさせて頂いており、レザーロングコートも同様です。更に、かなり高ランクの素材を使わせて頂いたので、物理防御や魔法防御も既存の服とは比べ物にならない代物となっております」
「もう、店主! 素晴らしいじゃないか! 大満足だ! 受け取ってくれ!」
俺は適当に詰めておいた金貨袋を店主に渡す。
「既に、お代は頂いておりますが…」
「水臭い事を言うな! 俺からの気持ちだ!」
「なんと…。ありがとうございます」
店主は感激して、深々と礼をしてるけど…
それ、盗んだお金だからね。
っていうか、自分で稼いだ金なんて一銭もなかったか。あっはっはっは!
「時に、店主。この辺で腕の良い宝飾細工してくれる店は知ってるか?」
「それでしたら、私の妻が得意としておりますが? 何か入り用ですかな?」
「ネクタイピンと言ってな。ここに、こうして留める物が欲しいんだが」
服を注文する事に夢中でネクタイピンの事を忘れていた。
商会を襲った時に、宝石も手に入れてるから是非作ってもらいたい。
「なるほど。その形なら、今日中に出来そうですな。妻にこの仕事をご紹介させて頂いても?」
「是非頼む! 宝石は持って来てあるんだ。この中から、この服に似合う宝石を選んでくれ。言うまでもないが、この宝石に当てる金属は最高級の物で頼む」
「かしこまりました。お預かり致します」
うははははは!
気分は最高潮だぜい!
ネクタイピンが出来るまで、街を練り歩いて自慢してやろうか!
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