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第三章 人間の街
第49話 ヒューム・ヴァンパイア
しおりを挟む『名前 グレース・ミュラー
人種 ヒューム・ヴァンパイア
Lv 91
【ユニークスキル】
シックスセンス
【スキル】
剣術Lv8
盾術Lv6
体術Lv8
身体強化Lv7
集団指揮Lv5
水魔法Lv4
火魔法Lv4
吸血Lv1 』
へぇー。
種族変わってるじゃん。
これ、人間? 魔物?
「ステータス表記は人間準拠なんだよな」
「レト様。ステータスとは?」
ああ、そうか。
人間はステータスの存在を知らないんだっけ。
シュルペニア神聖王国ぐらいの大国なら、秘匿技術とかで見れるんじゃないかと思ってたけど。
騎士団長ぐらい上の立場のグレースでも知らないんなら、本当に見れないのかもね。
分かりやすく教えてあげよう。
「こんな情報が見れるとは…。これ、公になると革命が起きますよ」
起こるか? 大げさだと思うけど。
スキル覚えたら、なんとなく分かるらしいし。
自分のレベルとスキルレベルが分かるのは凄いと思うけど、それだけじゃん。
俺みたいに、常にマウントを取りたい人間とかなら欲しがりそうだけどな。
レベル至上主義みたいな。
「この世界の特権階級にいる人間はマウントを取りたい人間ばかりですよ」
俺みたいな人間ばっかりって事?
地獄じゃん。
「まあ、一種の目安にはなるけど、レベルだけが全てじゃないだろ」
魔物には、自身のレベルも能力のレベルもないしさ。
なんでだろうね。
「それはそうですが…。自分の成長が分かるのはモチベーションにもなりますしね」
「キュフスン」
グレースが、妲己をブラッシングしながら言う。
すっかりもふもふの虜になってやがる。
妲己も気持ち良さそうにしている。
気持ちは分からんでもない。
『ヒューム・ヴァンパイア』
人間から、ヴァンパイアの因子を取り込んで変異した半人半魔。
人間の枠組みから外れる事なく、不老の体になる。
飲食だけでなく、血液でも活動に必要なエネルギーを補給する事が可能になる。
「え? 不老ですか?」
「うん。不死ではないから、病気とか外傷では死ぬらしいけど」
「この若い体のままでいられると!? あ、ありがとうございます!!」
「お、おう。どういたしまして?」
グレースの目がギンッってなって、ぐいぐいくる。
そんな不老が嬉しいのか。
女性で若い体はそれだけのものなのかね。
「さてさて、これからどうするか」
ちきちき! 第一回レト・ノックス眷属会議~
「グレースの顔が売れてるのが問題だよな」
「申し訳ありません。私は主に国外での活動が多かったので、大都市等では素性がバレてしまうかもしれません」
うーん。
敢えてこのままグレースを神聖王国に帰すのもありだよなぁ。
スパイ的な事をしてもらって、情報収集してもらうとかさ。
「でも今、特別欲しい情報もないしなぁ」
流石に、大国に喧嘩売るのは時期尚早だろう。
神聖騎士団に手を出しておいて今更だけどさ。
バレてないからオッケーっしょ。
「結局今戻っても、今回の失態でなんらかの責任を取らされて、閑職に飛ばされるかと。騎士団は全滅ですし、私は若いですからね。妬み嫉みは人一倍買っています」
じゃあ、やっぱり侍らすかー。
ヒューム・ヴァンパイアがどんな感じで成長するか気になるし。
「眷属探しの旅にでも出るかな。珍しい魔物とかさ。ユニークスキルを持った有能な人間とか」
眷属化したら、忠誠を誓ってくれるらしいし。
グレースはともかく、妲己が俺に忠誠心があるのかは疑問だけど。
さっきも、煙草吸おうとして、顔面に火が付きそうだったからな。
可愛いから許しちゃうんだけど。
俺が許す範囲を見極めてオイタしてるのかな?
「グレースはユニークスキル持ってる人とか知ってる?」
「いえ。ユニークスキル自体が初耳ですので。私のシックスセンスも勘が良くなるスキルだと思っていましたし…。しかし、教皇の神託はユニークスキルではないかと」
それもそうか。
ステータス見れないのに、分かる訳ないじゃんね。
神託持ちは要らないかなぁ。
こっちからアクション取れるならまだしも、一方通行みたいだし眷属にしたら剥奪されそう。
「教皇ってどんな人?」
「そろそろ世代交代もありえるぐらい高齢の男性です」
なお要らん。
お爺ちゃんを侍らしてもおもしろくない。
イケおじ執事とかならありなんだけど。
「強そうな奴とか、頭良さそうな奴を片っ端から確認していくしかないかー」
どうせなら、ユニークスキル持ちとか異能持ちが良いよね。
異能持ちは魔王だから、難しいだろうけどさ。
「それなら迷宮都市はいかがですか? 色々な所から強者が集まっているかと」
迷宮都市ね。
いつかは行こうと思ってたけどなぁ。
「グレース行った事あるんだろ? バレるじゃん」
「あ、そうでしたね。顔を焼いて分からなくしましょうか?」
いや、怖い怖い。
キリッとした顔で何を言ってるんだ。
「せっかく美人を侍らさて良い気持ちになれるんだから勿体ない事するな」
こんな事言うと、関係各所から非難轟々だろうけど、美人と一緒に居るってのは一種のステータスになるからね。
某国のスポーツ選手や俳優のトロフィー型ワイフみたいな感じ。
あれは離婚ありきな様な気もするけど。
承認欲求は満たせる。
俺の場合は美人を眷属にしてる俺SUGEEEってやつよ。
グレースは、緑がかった髪に宝塚に居そうなボンキュッボンな麗人って感じだし。
「不老になった事だし、忘れられるぐらいまで身を潜めるか? いや、時間が勿体ないし暇を持て余すな」
「ここからかなり距離がありますが、魔境はいかがですか? あそこなら命知らずの馬鹿しか人が来ませんし、魔物も強いので進化も目指せるかと」
「俺もそれを考えてた。それがベストっぽいんだけどな。問題は魔境は魔王の縄張りだって事なんだよね」
何年も生きてる魔王相手に俺は果たして勝つ事が出来るのか。
魔境で強くなりつつ、最終的に魔王に挑めるゲームみたいな展開なら良いんだけど。
あいつら、縄張りで暴れ回るとすぐ怒るらしいからな。
今挑んで、ワンチャンあるのはエンペラー・リッチかな。
万を超えるアンデッドの配下がいるらしいけど。
「うーん、保留! 頭回らんくなってきた。ちょっと寝るわ」
よくよく考えたら今日は働きすぎた。
一旦寝てリセットしよう。
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