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第三章 人間の街
第50話 リブラの様子
しおりを挟む「くあーっ」
擬似スタンピードをリブラの街にけしかけた翌日。
やはり、かなり疲れていたのか半日も眠ってしまった。
「おはようございます」
「キュンキュン!」
「ああ、おはよう。寝てないのか?」
「眷属にして頂いてから、眠らなくても良くなったみたいで」
「いや、寝た方がいいぞ? 俺も寝る必要ないけど、睡眠取ったらかなりスッキリするし」
今現在、思考はかなりクリアである。
ただ寝る時の服が欲しいなと思った。
仕立ててもらったスーツはかなり良い物だけど、寝るには不向きだった。
当たり前か。
「では、私も少し仮眠を取らせて頂きます」
「うん。俺は妲己と遊んどく」
グレースは恐縮そうに、ベッドへ向かう。
それ、さっき俺が使ってたベッドなんだけど?
ほんとに恐縮してる?
家具屋からパクって来たから、他にもベッドはいっぱいあるじゃん。
「まあ、いいか」
下手に突っ込んで、またドロドロの目になったら困る。
君子危うきに近寄らず。これ大事よ。
グレースがベッドに入ったのを見て、影から飛び出す。
グラスに血を注ぎ、煙草を吸う。
優雅なモーニングタイムである。
「うーん、ハードボイルド」
ハードボイルドのなんたるかは良く分かってないけどな。
雰囲気で良いんだよ。
「キュンキュン!」
妲己はさっきから【雷魔法】の練習をしてる。
昨日簡単に雷の仕組みを教えてあげたけど、果たして理解出来ているのか。
見た感じ扱いはかなり難しそうだ。
「どう? 難しい?」
「キュン…キュンキュン!」
妲己は成果を見せる様に雷を身に纏う。
毛が逆立ちになり、体がバチバチになってる。
……痛くないんだろうか?
ビジュアルはかなりカッコいいんだけど。
これでもかってぐらい強キャラ感は出てる。
「んんん? いやいや脳筋すぎるだろ」
【魔眼】で魔力を良く見てみると、【雷魔法】と【回復魔法】を併用して使ってる。
体を傷付けては回復を繰り返してるみたい。
まだ体に被害を出さずに身に纏うのは難しいのかな。
「キュンキュン!」
「体で無理矢理覚える? だめだめ! いつからそんな脳筋思考になったんだ」
少しずつ慣れていきなさい。
纏うのは確かにとてもカッコいいけども。
雷を放電したり、なんかもっと、こう、あるだろう?
「キュン…」
「ほら、おいで。逆立った毛をブラッシングしてあげる」
しょんぼりしてる妲己をブラッシングする。
うーん、もふ具合がアップしたからか気持ち良いね。
よく考えたら、海の魔物相手に無双出来そうだよな。
どこ行くにしても、海に寄って血の補給してから行こうか。
「おはようございます」
「うい」
5時間ぐらいかな?
グレースが起きてきた。
俺はその間に妲己の御機嫌取りをしたり、今回のスタンピードで大量に増えたオークの処理をしていた。
血抜きして、妲己が食べられる様にしただけだけど。
商会から色んな調味料をパクってきたから、是非妲己には新たな食を開拓してほしい。
「レト様。結局どうなさいますか?」
「とりあえず服だな」
俺の寝る時の服とグレースの服。
街の混乱具合も気になるし、一度行ってみようとと思う。
グレースと妲己は影にいてもらうが。
「服ですか? 私はこれでも構いませんが」
「いや、ぼろぼろじゃん」
俺と戦った後の姿そのままだから、至る所に穴が開いたりしてる。
控えめに言ってえっちである。
俺の聖剣がエクスカリバーしてしまう前に新たな服を用意せねば。
「もう、どんな服にするか決めてるんだ」
メイド服と迷ったけどね。
まだ俺には、メイドを侍らせる勇気が無かった。
ここが異世界って分かってるし、俺のスーツの方が浮いてるのは承知なんだけどね。
なんか恥ずかしい。
メイド服はもう少しこの世界に馴染むまで待って欲しい。
「そうですか。では、楽しみにさせていただきますね」
「じゃあ、早速向かうかな」
俺は妲己とグレースに影に入ってもらい、空を飛んだ。
上から見た限り、リブラの街はてんやわんやしていた。
そういえば赤髪の男捜索網が敷かれてたけど、大丈夫かな?
グレース以外の騎士団は殺したし、なんとかなるか。
俺は何食わぬ顔で、詰所にいる衛兵に話しかける。
「騎士団の人が探してるって聞いて来たんだけど」
「ん? ああ、君か。見つけたら丁重にお連れする様にと言われてたんだけどね。ちょっとそれどころじゃなくなって…」
「昨日の魔物騒動で何かあったの?」
「いや、うーん…。ここだけの話にして欲しいんだけどね。騎士団と冒険者が全滅してしまって…。こちらもシュルペニア神聖王国に連絡したりと色々あるんだよ」
「なんと!? あの神聖騎士団が? じゃあ俺なんかに構ってる暇はないね。もう少しこの街に居るから何かあったら声をかけてよ」
「ああ。すまないな」
ふむ。俺の事は大丈夫そうだな。
かなり忙しそうにしてるし、スタンピードのせいで神聖騎士団が全滅なんてシュルペニアがなんて言うかね。
領主とか胃が何個あっても足らなそう。
ま、俺には関係ないし服屋に向かうかね。
「また来てしまったよ、店主」
「いらっしゃいませ」
相変わらずイケおじの店主とスタンピードの世間話をしながら新しく欲しい服の注文をする。
「この服が想像以上に良くてな。妻にもプレゼントしようかと思って、また来させてもらったんだ」
「それはそれは。有り難い限りですな」
「うむ。それで、こんな服を作って欲しいんだが。勿論金に糸目はつけない」
「ふむ。お客様にお作りした物に似てますな。お売り頂いたフォレスト・スパイダーの糸はまだ残っておりますし、すぐ製作に掛からせてもらいます」
「ああ。頼む。1週間ぐらいか?」
「いえ、今回は3日ぐらいで出来るかと。前回は初めてだったので、多めに時間を頂いただけですので」
「わかった。3日後にまた来よう」
俺は、寝巻きになりそうな服を自分の分とグレースの分を2.3着購入し、オーダーメイドの服の分の料金も前払いし、店を後にした。
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