54 / 184
第三章 人間の街
第51話 次の目的地
しおりを挟む「うむ。悪くない」
「ありがとうございます」
凛々しい顔を崩し、若干照れがあるけどそれもまた良い。
服屋に注文した三日後。
オーダーメイドの服を受け取り、早速グレースに着せる。
俺が注文したのは、THE秘書って感じのスーツ。
凛々しい顔も相まって、出来る秘書のイメージそのままの完成形になっている。
これでメガネでもつけりゃ完璧だね。
「で、どこに行こう?」
この三日間、図書館に行ったりして目的地を散々相談したが未だに決まっていない。
迷宮都市は身バレする、魔境は勝てるか怪しい。
10年位潜るのも考えたけど、その間暇じゃんって。
不老だから時間はいっぱいあるんだけどね。
まだまだ異世界ビギナーって事もあり、やりたい事が多すぎるんだよね。
実力が伴っていないのが辛い。
早く強くなりたいもんですな。
「私としましては、レト様に従うのみですが。やはり、強くなりたいのであれば迷宮都市か魔境が一番かと。私は迷宮都市派です」
「お前がバレるじゃん」
「見られたら始末すれば良いかと」
おおおう。
まさか、グレースからそんな事言われるとは。
君、神聖騎士団だったんだよね?
眷属になったら過激になったりするのかな。
「まあでも、グレースの言う通りか。ここで物資をしこたま買い込んで迷宮に篭れば、そんなに人に会う事もないかもな」
で、万が一グレースを知ってる奴に遭遇してしまえば始末すると。
分かりやすくていいね。
「じゃあそうするか。次の目的地は迷宮都市ラビリントスで」
「かしこまりました」
「キュンキュン!」
☆★☆★☆★
商業都市リブラでスタンピード被害があってから2週間後。
シュルペニア神聖王国の大聖堂では、緊急会議が開かれていた。
「それで? その報告は確かなのかね?」
「はい。こちらでも裏を取りましたが間違いないそうです」
「そう…か。まさかミュラー団長がな」
リブラから早馬で知らされたのは、スタンピードが発生し第二神聖騎士団が全滅したという事。
街への被害は無かったが、冒険者と騎士が共に生き残りが無しという凄惨な結果である。
「しかし、ミュラー団長がBランクの魔物に負けるかね? 歴代でも屈指のスピードで団長になったというのは伊達ではないのだぞ?」
「それに関してなのですが…。スタンピード直前に騎士団は付近の森を捜索しており、そこで奇妙な死体が多数発見されたと報告があります」
そこで知らされたのは、様々なバリエーションの死体の数々。
どれもが盗賊だという事もあり、報告書を見るのを後回しにしていたが、これはおかしい。
「ミュラー団長の報告書では魔王の可能性ありと。リブラ付近で知らずに魔王の縄張りを犯してしまったかもしれません」
「ううむ。しかし、この報告書では拷問された痕もあるそうじゃないか。盗賊同士の縄張り争いではないのかね?」
「いえ、付近の盗賊は全滅だと。生き残りは皆無だったそうです」
大司祭や枢機卿は顔を顰めつつも報告書を眺める。
だが、何度見ても今回の規模のスタンピードで全滅する程の被害が出るとは思えなかった。
「それともう一つ妙な話がありまして。ミュラー団長の遺体が発見されておりません」
「なんだと?」
死体はどれもこれも、魔物被害で滅茶苦茶だったが、騒動が終わってから確認するとミュラー団長と思わしき遺体だけが無かったのだ。
「それは…。まさかミュラー団長は逃げたと?」
「流石にそれは無かろう。部下思いの真面目な騎士だった。部下を見捨てて、自分だけ助かろうとするなぞありえぬ」
「確かに…。ではなぜ、彼女の遺体だけがないのだ? 他に不審な事は?」
「今回のスタンピードは、報告書にある通りオークとオーガ、そしてアントの群れがメインでした。しかし、現場に残されていた魔物の死体はアントとオーガのみ。オークの死体は一つもなく、後、魔石が全部抜かれてたそうです」
「ふむ? スタンピードの後に誰かがやってきてオークの死体と魔石だけを持って行ったと? 何故そんな事をする? 魔石は換金素材になるがそれだけだろう? 死体もオークではなく、オーガとアントの方が金になるはずだ。で、その人物がミュラー団長の遺体も持って行ったと? 全く訳がわからん」
「いえ、魔石は魔物にとっては糧にもなり得ます。オークを持って行ったのは何故か分かりませんが、魔王が今回のスタンピードに介入したとするならばどうでしょう? ミュラー団長が亡くなってしまったのも頷けると思うのですが」
「なる…ほど。なるほどな。それでも遺体が無い意味が分からんが。いや、まさか、かのエンペラー・リッチの様にアンデッドにしたりするのかも知れん」
会議はあらゆる可能性を模索して話し合われるが、どれもこれもが結局仮定の話にしかならず平行線となる。
「魔王の調査は如何致しますか?」
「一時棚上げするしかなかろう。丸々無くなった騎士団の補填もしなければならん。ミュラー団長の後釜などそう簡単には務まらんぞ」
「そうですな。我が国8人目の超越者になる可能性も秘めた才媛だったのですが」
「惜しいな」
その後、新たな騎士団の調整等を行い会議を終える。
新しく誕生した魔王はなんなのか。
それを知るのは、まだまだ先の事になる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて、第三章は終了です。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
今章は初めて人間の街に行き、軽くちょっかいを出した感じですね。
冒険者と騎士団、少しの商会の人間と全体的に見れば、被害は少なかったんじゃないでしょうか。
主人公視点ではですが。笑
次章は迷宮都市へ向かいます。
主人公陣営の成長回ですね。
早速、新たな眷属を出す予定です!
人間へのちょっかいはその時の気分次第。笑
作者でさえ、はっきりとは決めてません。
作者は他にも作品を更新してますのでよければそちらもご覧下さーい。
ではではまた次章で~。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる