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第四章 迷宮都市ラビリントス
第52話 道中
しおりを挟む「ここからラビリントスってどうやって行けば良いんだ?」
リブラを後にし、街道をとことこと歩いている。
飛んだりした方が早いんだけど、旅してる気分にならないからね。
向かってる道中で、思わぬ出会いもあるかもだしさ。
まあ、飽きたら終わりだけど。
「国を3つ程超える必要がありますね。このまま歩いて行くならば、1年はかかるんじゃないでしょうか」
はい、やめやめ。
飛んで行くよー。
「大体、俺たちの格好で歩いてるのはおかしいよな。高貴なオーラを醸し出してる奴が街道を歩いてるってダサすぎる」
豪華な馬車でも用意すべきだったな。
飽きたら飛ぶからと、無視してた案件でした。
「馬車のご用意を致しますか? 正直街にある馬車程度では乗り心地は最悪ですが」
「国宝級にすっごい馬車があるって聞いたんだけど?」
クラフト系主人公が作るやつな。
空間拡張して部屋みたいな馬車になるやつ。
そういうのがあるなら俺も馬車に乗るのもやぶさかではない。
「小国にはないでしょう。シュルペニア神聖王国にも2つしかなかったと記憶してます」
「作ったり出来ないの?」
「私はダンジョン産しか知りませんね」
おいー。
出てこいよ、スローライフがしたいのに結局目立って、俺なんかやっちゃいました系主人公。
得意だろ、こんなん作るの。
目立ちたくないんですーって言いながら、絶対目立つ物を作るのが大好きじゃないか。
「はあ。ダンジョンで魔道具集めするか。ダンジョン潜ってたら自然と集まるだろ。とりあえず近くまでは飛ぶぞ」
せっかく盗賊に襲われてるお姫様を助けて、ついでにお姫様も殺して国と戦争ムーブでもしようかと思ってたのに。
小国程度なら勝てるんじゃないかと思ってます。
「はい、今日はここまでー」
日中はずっと飛び続けて、変わり映えない景色を見てたけど日も暮れてきたし飽きた。
寝たいし。
「むん? 魔物か?」
少し外れた所で、影に入ろうとした時。
小さい反応がちらほらと。
「ゴブリンか? 無視したい所だけど、知らない反応もあるんだよな」
見た事ない魔物なら見てみたい。
俺は妲己とグレースを影から出して、魔物の反応があった場所に向かった。
「なんだあれ? ゴブリンじゃないのか? 似てるけど」
「私もあの魔物は見た事ないですね。職業柄色々な魔物は見てきたんですが」
醜い顔なのは変わらないが、やたらと腹がでている。
それなのに、他はガリガリとアンバランスな見た目。
身長も120cm程度で、とにかく腹が目立つ。
『餓鬼
名前 無し
【魔物能力】
悪食 』
おお!? 妖狐タイプか?
横文字魔物じゃないじゃん!
「あれ! 餌付けするぞ! 周りのゴブリンは始末してくれ!」
「かしこ…」
「キュンキューン!」
グレースにお願いしたんだが、それより早く妲己が動いた。
【雷魔法】を纏って、ゴブリンに急接近。
そのまま餓鬼以外を尻尾で叩き付けて即死させる。
新しい魔法の試運転でもしたかったのかな。
ゴブリン相手にしてもあまり意味があるとは思えないけど。
「よーし。餌付けするぞー! かなりビビってるけど仕方なし!」
俺は影からオークの肉を取り出して、餓鬼の前に置く。
餓鬼は肉を見た瞬間、ビビってた事を忘れ飛び付いた。
遠慮なしにガツガツ食べている。
「ふーむ。お腹空いてたのかな? お腹は膨れてるけど」
【悪食】って、なんでも食べれるってだけなんだな。
これ、どうやって強くなるんだろう。
「ん? まだ食べるのか?」
出したオーク肉を食べ終わると、こっちをジーッと見ておかわりを催促されてるように思える。
「ほれ」
「キュン…」
追加でオーク肉を出すと、妲己が悲しそうな鳴き声を上げる。
まあ、妲己用に取っておいた肉だしね。
「まだまだあるから大丈夫だって。無くなったらまた狩れば良いんだし」
「キュン」
渋々納得した妲己をグレースと撫で回しつつ餓鬼を見てみるが、まだまだ食えそう。
その体の何処に入るんだ?
身長はゴブリンと変わらないんだが?
ここまで来ると、いつ限界が来るのか気になる。
既にオーク三頭分は食べてるけど。
「ん? は? なんで?」
餓鬼が食べ終わるのを待ってると、光に包まれて急に体がちょっとだけ大きくなって、腹が微妙にへっこんだ。
特殊進化の挙動だ。
『悪鬼
名前 無し
【魔物能力】
鉄の胃袋
怪力 』
えぇ。訳が分からん。
食べる事で経験値を手に入れたって事?
ずるくない? ラノベで良くあるチートじゃん。
「グレースはこういった事案知ってる?」
「いえ、私も驚いています」
「しかも、妖狐ですらしてない特殊進化だぜ? 食べてただけなのに」
なんて優遇されてる魔物なんだ。
俺ですら初めての進化はノーマルだったんだぞ。
「まあいいや。眷属にしよう。レアモンかもしれん」
強くなるのかは知らんが。
こう、特別感に弱いのよね。
人間だもの。
「えーっと。鬼。鬼か。アシュラで!」
ステータスを確認すると、しっかりアシュラって名前になってる。
眷属の所も(3/5)になってる。
貴重な眷属枠をノリで決めてしまったけど。
ってか、やっぱり名付けすると勝手に眷属になるな。
人間種相手だけに血を飲ませる必要があるのかな。
「ゲギャ!」
「キュンキュン!」
アシュラがよろしくって感じで手を上げてくるけど、妲己はプンプンしてるな。
結局オーク十頭分は食べたからなぁ。
眷属同士、仲良くして欲しいもんです。
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