サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第四章 迷宮都市ラビリントス

第86話 羅刹

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 グレースからお叱りの言葉を受け、鉱石掘りは断念する事にした。
 といっても、【土魔法】を取得出来たら、テレサの練習にもなるし存分にやらせもらう許可は得た。
 一応、俺が主人なんだけど…。

 それはさておき、採掘のスキル取得、レベルアップの為にも、ウェインに同行させて俺達が戦ってる間は出来る限りやってもらう。
 全然諦めきれてないじゃないですかとグレースに小言を言われたが、貧乏性なので許してほしい。


 そんなこんなで、現在55階。
 時間も結構経ったと思う。
 正直、ずっと迷宮にいるからそろそろ感覚が馬鹿になってきて、どれくらい過ごしたかも分からない。

 「宝箱もあるけど、思ったより目を引く物は出ないもんなんだな」

 「私達の運が悪いんですかね?」

 それもありそうだけど、俺達レベルになってくると、生半可な魔道具じゃ、満足出来ないってのもあるよね。
 ラノベでは、ぽんぽんと神器級のものが出てくるから期待してたんだけどな。

 そういえば、魔法書も一回出てきたな。
 あの時の俺のテンションの上がりようったら。
 まぁ、火属性だったんだけど。
 まさかの被り。勘弁してくれよ。
 ウェインも覚えれなかったし、当分埃を被る事になるだろう。

 「ゴギャギャ!? ギャギャ…」

 「んお!? 進化か!!」

 いつもの様に狩りをしてたら、魔物を仕留めたアシュラが光に包まれてパタリと倒れた。

 「長かったなぁ。一年ぐらい掛かったんじゃないの?」

 即座に、今日の狩りを中止して影の中に入る。
 ウェインとテレサは進化を初めて見るからか、かなりびっくりしてるな。

 「アシュラの事ですから、またご飯を食べてる時に進化するのではと思ってたんですけどね」

 「それは俺も思ってた」

 なんかちょっとがっかりだよね。
 こう、そうじゃない感がある。
 アシュラには悪いけどさ。

 「アシュラは次は何になるのかね。妲己はある程度予想出来たけど、こっちは想像つかんな。鬼に詳しくないし」

 「次は妲己の番ですかね? 私はここから更に進化するのか分かりませんし、レト様はまだまだですよね?」

 「まだまだだな。アシュラがそろそろと思って、出番を譲ってたのもあるけど、3割ぐらいしか溜まってない」

 レト君の先は長いな。
 その分強くなるんだろうと、ポジティブに考えさせてもらうけど。

 「おっ。終わったな」

 「ゴギャギャ!」

 ほわー。大きくなっちゃって。
 2mあるかないかぐらいか? 顔も最初の醜かったのとは雲泥の差だな。
 額に2本の角がある、男臭い顔をしてる。
 ラノベに出てくる鬼人って奴に似てるな。

 「この世界に鬼人って種族はいるの?」

 「鬼人ですか? 私は聞いた事ありませんね」

 ふむ、いないのかな。
 結構定番の種族だと思うんだけど。
 人、エルフ、ドワーフ、獣人のお決まり種族だけかしらん?


 『羅刹らせつ (眷属)
  名前  アシュラ
  【魔物能力】
  弱肉強食
  金剛城塞
  戦闘学習
  狂化        』


 【魔眼】で確認してみると、こんな感じ。
 鉄の胃袋が弱肉強食に。
 剛力と剛化が金剛城塞に。
 新しく狂化と。

 「なんか順当って感じ? いや、【狂化】とか怖いけど」

 例の如く、魔物として一線を超えたのか、格は凄い上がってる。
 魔力というより、覇気?
 なんか歴戦の武人って感じになってはる。

 「調子はどう?」

 「ゴギャギャ? ゴギャ!」

 てか、喋れるようになったりしないのかい?
 角を除けばほぼ人間みたいな感じなんだけど。
 相変わらず、ゴギャゴギャ言ってる。
 ニュアンスでしか伝わらないんだよね。
 人間っぽいのが、ゴギャゴギャ言うのは中々シュールな絵面だ。

 「アシュラ、『あ』って言ってみて」

 「ギャ」

 「い」

 「ギャ」

 「う」

 「ギャ」

 ダメだこりゃ。全部一緒だもん。
 俺が喋れてるし、出来ない筈ないと思うんだけどなぁ。
 【魔眼】の解析のお陰?
 いや、蝙蝠の頃から喋れてたしな。
 その時点で通じてたかはわからんけど。


 「ゴギャ!」

 つよすぎー。身体能力おかしいだろ。
 【金剛城塞】がえぐいんか?
 絶対あの獣人超越者より強い。
 ドレイク達がちぎっては投げちぎっては投げで蹂躙されてる。

 「人間と魔物の差がありすぎるように思うんだけど」

 「これで魔王じゃないんですか。魔王の強さが気になりますね」

 見た事ないもんなぁ。
 俺基準にされてもだし。
 正直、眷属達とそんなに強さ変わらないよ、俺。

 「【狂化】使わせてみるか。念の為、テレサとウェインは影の中で。アシュラが制御不能になったら、俺とグレースと妲己で抑え込むぞ」

 「かしこまりました」

 「キュンキュン」

 現時点で、かなりの強さなのにここから我を忘れて暴れられたら一体どうなるやら。
 多分俺達の中なら一人でも抑えられるだろうけど、苦戦するかもだしね。

 「アシュラー、【狂化】使ってくれー」

 「ギャ! ……グガギャラー!!」

 【狂化】を使った瞬間、アシュラの体が変化した。
 体中の筋肉がぱんぱんに膨れ上がり、目を赤くしてギラギラしてる。

 「あー、これあれに似てるな。魔物の血を飲ませたやつ」

 「スネイルですか。でも、見た感じ制御出来てる様に見えますが?」

 「スキル説明には、我を忘れて暴れ回るって書いてあったんだけど?」

 最初こそ、体の変化に戸惑ってたアシュラだが、変化が終わると首を傾げてこちらを見てる。

 「ギャギャ?」

 「うーん、目は完全にイっちゃってるんだけどな。なんで正気なんだ?」

 「常日頃から【感覚狂乱】で訓練させてたからでは? 似た感じなんじゃないでしょうか?」

 「あーなるほど? って事は魔力操作で【狂化】のデメリットはなんとかなるって事? ズルすぎない?」

 「まぁ、魔物が熱心に魔力操作の練習するなんて、ほぼあり得ない事ですし…」

 いや、そうなんだけど。
 なんか釈然としないなぁ。
 制御出来るに越した事はないから良いけどさ。

 「あ、萎んだ」

 シュルシュルと筋肉が萎んでいき、狂化前のアシュラに戻った。
 【狂化】を使ってる最中は、物凄い勢いで魔力を消費してたからな。

 「ま、難しい事は考えるのも面倒くさいし良いか。アシュラも進化した事だし、階層上げるスピードも上げよう」

 「レト様がなんだかんだ言いながら採掘してるから遅れてるのですが?」

 あーあー聞こえなーい。
 目に入るとどうしても取りたくなるんだもん。
 仕方ないと思いますね、はい。
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