サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第四章 迷宮都市ラビリントス

第92話 魔力回復ポーション

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 「ぐえーっ。ぺっぺっ! 不味い!」

 「これも駄目だったんだぞ」

 「お前、味見してから寄越せよ! 魔力は回復してるけどさ!」

 89階で狩り始めてから、そろそろ1ヶ月。
 俺の進化とテレサのカンストもようやく見え始めてきた。
 そこで、更なるスピードアップの為に、前々からウェインにお願いしていた、魔力回復ポーションの味変に付き合ってるんだけど。
 進捗芳しくないです。

 「どうやっても美味しくならないんだぞ」

 「もうこの際、美味しくならなくても良いんだよ。無味でも良い。不味くさえなければ」

 俺は口直しに血を飲みつつ、煙草を吸う。
 なんで魔力回復ポーションはこんなに不味いんだよ。普通のポーションは不味くないのに。

 「論文には飲み過ぎると中毒になるから、その対策として体が拒絶反応を起こしてるんじゃないかって書いてあるぞ」

 「んな訳ないだろ」

 ないよね? そんなご都合主義過ぎる薬あってたまるかよ。
 なんで人間だけじゃなく、魔物にも対応してるんだって話になるしさ。

 「てか、魔物も中毒になるのかね? 不味過ぎてガブガブ飲んだ事ないんだけど」

 「気になるんだぞ。試してみて欲しいぞ」

 目を爛々とさせながら、俺に魔力回復ポーションを渡してくるウェイン。
 試してみて欲しいって…。
 俺、一応主人なんだけど? 実験体として見られたりしてない? 大丈夫?

 「シャブ中にはなりたくないな。俺じゃなくてそこら辺の魔物で試そうぜ」

 「分かったんだぞ…」

 なんで残念そうなんだよ。君は俺の事をなんだと思ってるのか。ちょっと問い詰めたいね。

 「うわ~。こんな感じか。試さなくてよかった」

 って事で、小島に居るサハギンエンペラーさんを実験体にしました。
 ゴリゴリマッチョのサハギンエンペラーは、89階の階段前を守っている守護者みたいな感じなんだけど、もっぱら俺たちの遊び相手になっている。
 倒しても1日で復活してるしさ。
 魔法の実験やら、薬の実験で役に立ってもらっている。

 心無しか復活する度に悲壮感が出てきてる様な気がしてるけど。
 仕方ないよね。都合良く近くに手頃な強さで居るんだからさ。
 これからも、俺たちが階層を進めるまで実験体になってほしい。

 今日も今日とて、復活して決死の覚悟で襲いかかってくるサハギン達をあっさり仕留め、エンペラーだけを生きたまま影で捕獲。
 そこから、何か変化があるまでひたすら魔力回復ポーションを飲ませた。

 最初は不味さに顔を顰めて抵抗してきていたが、段々と目が虚になってきて、最終的には涎をダラダラ垂らしながら、フラフラになっていた。

 「アル中とシャブ中のダブルパンチみたいな感じか。俺で試さないで良かったな」

 「でも、強さもある程度関係してるかもしれないんだぞ。明日は普通のサハギンにも試してみるんだぞ」

 そうね。それが良い。
 その結果次第で俺が1日で飲める容量を決めようか。本当なら人間にも試したいんだけどな。
 ここに居ないのが悔やまれる。

 「妲己の【再生魔法】で治せるみたいだけどな。最悪中毒になっても大丈夫と」

 あんな涎ダラダラと垂らした醜い姿を見せたくないから、中毒にならないようにするけどさ。
 味にさえ目を瞑れば、狩りは更に効率化するんだ。一日3本くらいを目安に飲もうかな。
 味覚馬鹿になったりしないよね? 妲己の【再生魔法】で治せるかしらん?


 「おお。テレサの方が早かったか」

 テレサがカンストした。ここからが長いんだけどな、多分。グレースが進化した時は、結局壁を越えたからなのか、滅茶苦茶経験値量が必要なのか分からなかったし、テレサで分かると良いな。

 「テレサが壁を越える様な魔物かー。……ムカデしか思い浮かばないのがやばいな」

 ここ、89階だよ? それなのにテレサは普通に倒せてるんだ。
 それなのに、30階台の魔物に苦戦するって、やっぱり難易度調整がおかしいと思うんだよ。
 薬があれば簡単に倒せるとはいえ、あの場所にいるのはバグとしか思えない。

 ダンジョンマスターが居るのか、神が作ったのか知らないけど、もう少ししっかり設計して欲しいもんだね。

 「とりあえず、次の魔物の群れを1人で捌いてみるか? 中々きついだろうし、もしかしたら良い感じに壁を越えたりするかも」

 「わかったの」

 もしやばくなったら介入するけど、とりあえずやってもらおう。
 俺の見立てでは、ギリギリだと思うんだよな。

 って事で、魔力を放出して魔物を誘き寄せる。
 相変わらず、馬鹿みたいに海から押し寄せてくる魔物をテレサは【雷魔法】を使って、どんどん倒していく。
 妲己から毎晩使い方を教わってるからか、中々のワザマエ。

 ユニークスキルのお陰も相まって、効率的な魔力運用が出来てるんだよな。
 先生が良いのか、火と雷の魔法運用は突出している。
 妲己とどうやってコミュニケーション取ってるんですかねぇ。俺はニュアンスしか分からんのだが。

 「さーて、半分切ったぞ」

 魔物の数が半分切ったぐらいになったが、いくら効率的に魔力を使っていても、テレサの魔力量じゃ全滅まで足りない。
 とても嫌そうな顔をしながら、魔力回復ポーションを取り出して、一息に飲み干す。

 「うむうむ。鮮やか。なんとかなりそうか?」

 魔力を回復したテレサは、力を振り絞るように魔法を行使していく。
 俺の見立てより、楽に倒せそうだな。

 最後の魔物を落雷で倒して終了。
 テレサはその場にペタリと座り込み、荒い息を吐いている。
 側から見たら、虐待してるように見えませんかね、これ。

 「お疲れ。俺から見てたら余裕そうだったけど、実際はギリギリだったっぽいな」

 「魔力回復ポーションのせいで集中力が切れそうになるの。不味過ぎるの」

 蛇蝎の如く、ポーションの空き瓶を睨み付けるテレサ。お疲れ様ですとしか言えないね。

 「ふむぅ。進化は無しか。これぐらいじゃ駄目なのか、経験値量が足りてないのか。はたまた、両方なのか」

 とりあえずへとへとのテレサを影の中に入れて、一人で考えてみるが、答えは出ない。
 グレースのムカデの時も、確かに苦戦はしてたけどギリギリって感じでもなかったしなぁ。

 本人の気持ちの問題ってのもあるんだろうか。
 テレサ自体が何かを超えたいと思わないと駄目とかさ。
 それならまた相手はムカデになるんだけど。
 リベンジしたそうにしてたしさ。

 この世界は中々謎だねー。
 前世で進化なんて無かったから、楽しくて仕方ない。
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