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第四章 迷宮都市ラビリントス
第99話 まもなく100階
しおりを挟むあれから三日経った。
現在97階のボス部屋前で休憩中。
大体一日で2階ずつ進めるようにしている。
それなりにボス戦での消耗が激しいってのもあるし、時間が掛かるって理由もある。
「ボスラッシュは経験値効率が悪いな。消耗度合いと釣り合ってないや。これはさっさと攻略して次に行くべきだな」
ぷはーと煙草をふかして、血を飲む。ボス達の血はやはり美味しい。
経験値効率だけで見るなら最悪だけど、それなりの強い相手との戦いの経験を積めるのは悪くないんだよね。
でも今は経験値の方がほすぃ。
「キュ、キュン…」
「ん? あ、ロン」
ふはははは! まだまだイカサマで勝てるな!
いつになったら気付くのやら。ちょっと純粋すぎて心配になってきたや。戦う時は搦手も使ったりするくせにさ。
因みに、グレースにはバレた。
というより、普通に聞いてきたから答えた。
Q.なんで全戦全勝なんですか?
A.ズルしてるから。
麻雀はどうしても運が絡むからね。グレースも何かを怪しんでたんだろうけど、俺のイカサマが華麗すぎて分からなかったんだろう。
それぐらいしなきゃ、流石に全部勝つのは無理だよ。
呆れた顔をされたが、これも立派な技術、戦術である。気付かない方が悪いのだ。
勝てば良かろう精神である。
妲己とアシュラは完全に沼にハマっている。
多分何捨てても当たる気がしてる事だろう。
少なくとも後半年ぐらいは引っ張れそうだな。
「さて、今日はこの辺にしとこうかね」
あまりやり過ぎると、リバーシとかチェスでやり返してくるからな。
引き際が肝心なのである。
「ウェインも夜更かしし過ぎるなよー」
「分かってるんだぞー」
最近ウェインは細工に凝ってるらしく、色々な装飾品を作っている。
テレサに手伝ってもらい、魔法の付与や錬金で効果を追加してるらしく、中々の出来だ。
俺が前世のアクセサリーとか色々教えたからだろうな。寝ずにやってたりするから程々にさせておかないと。
寝ないと身長伸びないぞ? 眷属化にして、不老になったせいで成長しないかと思ったが、ほんの少しずつ身長は伸びてるんだ。
このまま成人並みに成長するにはかなりの時間が掛かるだろうが、とりあえず一安心である。
このまま細工や物作りの喜びに浸ってくれるのは良いんだけどね。
見た目が子供だから、どうしても気を遣う。
眷属にしたからには、それなりに責任を持たないとね。
親みたいなもんだし。前世の親程ひどくはなりたくないなと思います。
現状、似たようなもんだけどさ。
「ふむ。ウェインがもう少し大人な見た目をしてくれればな。大人の玩具を作って貰うのもありなんだけど」
「詳しくお聞かせ願いますか?」
おっと。ぼそっと言ったつもりなのに、グレースは耳聡く聞いていたらしい。
かくかくしかじかと、こんなのがあったんだよと説明する。
俺は使用した事はないが見た事は結構あるからな。それなりに詳しいと自負しております。
「なるほど。それは是非作ってもらいたいですね。ウェインにお願いしましょう」
「いや、子供にお願いするのはちょっと…」
俺の声が聞こえてないのか、無視してるのか。
さっきの独り言は聞いてたんだし、恐らく後者だと思うが、ウェインに突撃してしまった。
「すまんな、ウェイン。ちょっと早い性教育だと思ってくれ」
ウェインが性に目覚めたらどうしようか。
もしかして俺がお相手を探してあげないといけないのかしらん?
いや、まだ10歳そこそこだし大丈夫かな?
「同年代の眷属とかそう見つかるもんじゃないよなぁ」
男からすると、いや、女もか。男ばっかりケダモノ扱いされるが、女も中々性欲強いからね。グレースを見てたら良く分かる。
中々に由々しき問題だが、まだ幼いから時間はある。
きっと未来のレト君がなんとかしてくれるだろうさ。
「キュンキュン!」
しまった。捕まった。
ウェインに申し訳ねぇと手を合わせていると、妲己が【超念力】で将棋盤を浮遊させてニコニコと走ってきた。
今はサイズを変えて子犬サイズになってるから、可愛らしく見えるんだが、俺には今は死神にしか見えない。
ぬぅ。勝ち逃げしたかったが、仕方あるまい。
ウェインを売った罰だと思って頑張るか。
「俺の鉄壁の穴熊戦法を見せてやるぜ!!」
因みに、穴熊とはどんな形なのかは知らない。
なんかそんな陣形があったよなと覚えていて適当に言ってるだけだ。
ってか、そんな事する前に負けてるし。
「将棋でマジで勝ち方が分からんのですよ。生まれてこの方勝った記憶がない」
「キュンキュン」
目の前で取れそうな駒があったら、どうしても取りたくなっちゃうんだよ。それが罠だと分かっててもさ。
「妲己ちゃんは嬉しそうですねぇ」
容赦なくボコボコのボコにして満足したのか、アシュラ達の方に戻っていった。
対局時間は30分も無かったんじゃないですかね。
「レト様。お待たせしました」
いや、待ってない。本当に。
その手に持ってるいやらしい玩具はなんだね。
こんな短時間で作れるもんなのかい。
しかもゴム素材とか良くあったな。
「へぇ。魔物素材からこんな風に利用出来るんだ。すげぇな」
思わず感心してしまった。
そして大した手間もなく、これを作ったウェインの成長にも驚く。
結構複雑な形をしてるものとかもあるんだが。
こんな感じで成長を実感するとは、なんだか複雑な気分だな。
その日夜は中々に充実したとだけ言っておこう。
ウェインには大変申し訳ないが、これからも色々注文する事になりそうだ。
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