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第四章 迷宮都市ラビリントス
第110話 50階突破
しおりを挟む「ってか、魔王ってどうやって判断してるんだ? 鑑定とかのスキルがないのに。神託で魔王が誕生したのは分かるんだろうけど、場所や種族とかは分からないんだろ?」
「被害です」
「は?」
「被害なんです」
「いやいや、意味が分からん。被害だけで魔王って決めつけてるの?」
ガバガバすぎるだろ。それなら強かったら全部魔王じゃん。
妲己をそこら辺に放り出して、小国を何個か潰したらすぐ魔王認定されるよ?
「人間では、そう判断するしかないのです。いえ、被害を出させる事が条件といいますか…」
「なにそれ? どういう事?」
「竜王が教えてくれるんです」
何故ここで竜王が出て来るんです?
確かにお話が出来るみたいで、手を出さなきゃ共存出来るらしいけど?
「理由は知りませんが、竜王は魔王が何処にいるか、どんな種族かが分かるらしいです。しかし、教えてもらう条件は人間側にある程度被害が出てからなんですよ」
「ふむん。意味が分からんな」
竜王が魔王の居場所やらを分かる事も分からんし、被害が出ないと教えてくれないのも何故なのか分からん。
「例えば、妲己が暴れ回って国が滅んだとします。で、竜王に聞きに行っても、それは魔王じゃないと教えて貰うだけです。唯の強い魔物ですね。魔王がしっかり被害を出してからしか、その後の動向を教えてくれないのです」
「だめだめ。聞けば聞くほど訳がわからん。頭こんがらがってきた。魔王の事が分かる異能でも持ってんのか? 被害が出てからしか察知出来ないとか? それとも愉快犯か。俺なら愉快犯だけど、竜王はどうなんだろうね。温厚みたいだけど、大昔は暴れ回ってたみたいだし」
「私は会った事がないので分かりませんが…温厚というよりは、邪魔されなければ手を出さないってだけで、態度は素っ気ないみたいですよ」
なんだ、ツンデレか?
ドラゴンのツンデレ…。結構ありがちな設定だけど、オスかメスかで判定は変わるな。
「鱗とか貰えるって聞いたけど?」
「その対価に色々いるみたいですけどね」
なんなんだろうね。やっぱり良く分からないや。
いつか会いに行って聞いてみるか。
バトルになるかもだから、相当強くならないとだけど。どれぐらい強いんだろうねぇ。
「やめやめ。難しい話は賢い人に任せるよ。話が逸れに逸れまくったけど、50階行くぞ!」
「ゴッギャー!!」
アシュラさんは衝撃が相当お気に召したんでしょうねぇ。るんるんで使ってらっしゃる。
念願の遠距離攻撃だもんなぁ。そりゃ、テンション上がっても仕方ない。
練習相手になってるボスのミノタウロスが可哀想ですな。
「森の迷宮も50階のボスってミノタウロスじゃなかったっけ? ちょっと覚えてないけど」
「確かそうでしたね。50階は共通なんでしょうか」
まぁ、なんか丁度良いもんね。強さが。
THE・50階ボスって感じ。
「アシュラ! アシュラ! この薬使って欲しいんだぞ!」
今回は珍しくウェインが影から出てきて戦闘を見ている。新しい薬の実験だそうだ。
「ゴギャ? ゴギャギャ!」
薬を受け取ったアシュラがボスに投げる。
ぶちまけられた薬は爆発した。
「液体爆弾? 凄いな」
「うーん。ダメージはいまいちなんだぞ」
いや、ボス瀕死ですけど。
あれでいまいちなのか。マッドは怖いね。
「予想では木っ端微塵になる筈だったんだぞ」
「人間の街に上空からばら撒いたら面白そうだな」
「もう少し拡散性を持たせてみるんだぞ」
ウェインはレポートを取りながら、次の実験について考えているみたいだ。
どんどんやばくなっていくな。
これも俺達の指導の賜物よ。鼻が高いね。
その後、ボスはあっさりアシュラが仕留めて終わった。ちょっと消化不良気味なので、次の階も戦わせてあげよう。
「宝箱はっと。おっ! 魔法書じゃん! 属性は回復!! 久々に被りなしをツモったぜ!」
「テレサが忙しくなりますね」
ふはははは! 久々だから気持ちいいぜー!
実はもう、結構魔法書被ってるんだよね。グレースも適性がないみたいで覚えられないから、どんどん溜まっていく。次の眷属が出来るまでこの状態かな。
「グレースが試してみるか? テレサは言ってた通り色々な魔法の練習で忙しいからな」
「…そうしてほしいの。テレサ忙しいの」
一気に覚えすぎて全然練習出来てないもんな。
まぁ、俺が調子に乗って覚えさせまくったのが、悪いんだけど。
どうせそのうちまたツモれるさ。
それまでにはテレサも余裕があるかもしれないしさ。
「では、ありがたく。適性があればいいのですが…。あ、いけそうですね。この感覚は覚えれそうです」
ほほー。グレースさんは【回復魔法】の適性があったみたいですな。
回復しながら攻撃出来る筋肉僧侶になれると。
いや、聖騎士の方が正しいのか?
魔王眷属の聖騎士か。意味分からないな。
その日の夜。
いつも通り馬車部屋の中でハッスルして、グレースさんをけちょんけちょんにしてやったんだが、なんと【回復魔法】で復活してきやがった。
こちらも負けてられぬと【感覚狂乱】を強めて勝利したんだが…。
俺は渡してはいけない相手に魔法書を渡してしまったのかもしれない。
次回からの魔王対聖騎士の夜の戦は心してかからねばなるまいな。
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