サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

第四章 迷宮都市ラビリントス

第119話 ウィザード

　
　「また、先を越された」

　テレサが二度目の進化をした。
　俺も後少しなんだけど、本当に必要経験値量が多過ぎて萎えてくる。
　その分強くなるんだと、自分を鼓舞して奮わせてるけど、これの更に次に要求されるであろう経験値量を今から考えると、嫌になるな。

　『名前　　テレサ　（眷属）
　　種族　ハイヒューム・ヴァンパイア・ウィザード
　　Lv 200
　　【ユニークスキル】
　　虹魔
　　【スキル】
　　家事Lv8
　　身体剛化Lv4
　　火炎魔法Lv7
　　雷轟魔法Lv7
　　魔力完知Lv1
　　水冷魔法Lv4
　　風塵魔法Lv4
　　土岩魔法Lv5
　　重力魔法Lv9
　　闇魔法Lv9
　　体術Lv5
　　罠探知Lv8
　　速読Lv5
　　杖術Lv3
　　氷魔法Lv5
　　回復魔法Lv5
　　光魔法Lv2                                           』

　元人間組はスキルが多いな。
　なんか、この点に関してはレベルもあったりと、優遇されてて羨ましいなぁと思う。
　その分、魔物は何回も進化があったり、肉体スペックが高かったりと、バランスは取ってるんだろうけど。
　勇者的な、どんなスキルにも適性がある人間とか出てきたら滅茶苦茶強いんじゃないかと思うね。

　「やっぱりグレースと違って、魔力量の上がり方が段違いだな」

　「職業もウィザード？　ですか。私達にはあまり馴染みのない言葉なのですが、レト様の世界での意味はなんなんです？」

　「魔法使いとか、そんなんだったと思うけど。キャスターも一緒じゃなかったっけ？」

　ウィザードは魔導士とか？　進化したんだし、そっちの方が強いんだろうけど、俺からしたら違いは分からん。

　「魔法の種類も多くてなってきて、ややこしそうだなぁ。俺なら絶対使いこなせないね」

　「色々と本を読んだりと、テレサはあの歳にしてはかなり頭と要領が良いですからね。時間はかかるかも知れませんが、きっちりやってくれるでしょう」

　グレースとそんな事を言いながらテレサを見る。
　進化が終わったテレサは、早速妲己と身振り手振りで話し合いながら、魔法について相談してるみたいだ。
　俺は魔法に関してはポンコツ疑惑が出てるからな。応用力がないのです。それでも練習はしてるから、少しずつ伸びてるかなとは思ってるけど。

　「後は俺だけか。1ヶ月もあれば進化出来るし、もう一踏ん張りだな」

　「長かった迷宮生活もいよいよ大詰めですね」

　それな。もう何年ぐらい、この都市で生活してるんだろ。迷宮の中にいるとはいえ、転生してからほとんどの日々をここで過ごしている。
　せっかく異世界に居るのに、全く見て回れてないのが残念だ。
　強くなる為には仕方なかったんだけど。

　「それにこれからは、異世界観光もまともに出来ないだろうなぁ」

　「指名手配されてしまいましたからね。教会の影響力がある所では、街中に顔を出すのもやめておくべきでしょう。レト様が喧嘩を売りたいなら、話は変わってきますが」

　まぁ、もう魔王ってバレても良いよね。
　でもそうなると、人間が逃げていく可能性があるから、自分から行動しないといけないんだよな。
　………いつも通りか。
　いつも通り、ノリで行動してたらなんとかなるだろ。その時のレト君に任せよう。

　「グレースお姉ちゃん、模擬戦するの」

　妲己との話し合いが終わったらしく、グレースを模擬戦に誘いに来た。
　魔力操作も以前とは比べ物にならないぐらい上達してるから、魔力量に振り回される事もなく、既に自分のモノにしてる感がある。
　全く、主人に似ずに眷属達は優秀だな。



　「うーん、魔纏鎧はやっぱりやばいな。魔法使い殺しじゃん」

　妲己がこれ覚えたらマジで手が付けられなくなるぞ。願わくば、これだけは覚えてほしくない。マジで勝てなくなる。
　いや、でも強くなるに越した事はないしなぁ。

　「キュン」

　テレサの模擬戦の様子を見に来た妲己と一緒に戦況を見守る。
　グレースの勘の良さとイージスの結界もあるんだろうけど、魔法の弾幕に突っ込みながら、捌いて接近している。

　身体剛化と併用して使うと、間合いを一瞬で詰められるんだよな。テレサもそこらの魔法使いよりは動ける筈だけど、グレースに軍配は上がりそうかな。

　「む？　上手いな」

　テレサも身体剛化を使って、接近してくるグレースからなんとか距離を取りつつ、地面に微妙な段差を作ったり、重力で動きを阻害したり、凍らせて滑らしたりと、対抗している。

　「でも、そういう罠っぽいのはグレースに通用しないんだよな」

　グレースは自分のユニークスキルを外れだと思ってる節があるけど、全然そんな事ない。
　接近戦では、未来予知じみた行動をしてくるし、不意打ちも通用しない。

　以前は、その勘に体がついてこない事もあったが、レベルやスキルが上がるにつれて、その欠点も解消されつつある。

　最近では、妲己相手にも良い勝負してるので、一番成長してるんじゃないだろうか。
　妲己もありえない成長をしてるんだけどね。
　俺も負けてられないな。

　「あ、終わった」

　最後は、グレースが魔法を盾で反射させて隙が出来た所を見逃さずに急接近。
　首に魔剣を添えた所で模擬戦が終了した。

　「なかなか白熱してたな」

　「はい。実りある練習になったかと思います」

　「また勝てなかったの」

　グレースはいつも通り淡々と、テレサは心無しかムスっとしてるように見える。
　最初は感情表現もあまりしなかった事を考えると、テレサとも随分打ち解けてきたなと思うね。

　「次はアシュラお兄ちゃんとやるの」

　「更に、近接ゴリゴリマシーンとやるのか」

　グレースよりも接近戦は強いぞ、多分。
　まぁ、魔法使いは近付かれたら厳しいからな。
　近接戦が強い人と戦って、対策を考えておく事は悪い事じゃないしな。
　その調子で頑張ってくれたまえ。