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第四章 迷宮都市ラビリントス
第130話 身バレ?
しおりを挟むくそ。最後なのに登場シーンミスったぜ。
妲己の真後ろにいるせいで、向こうのパーティーからは俺の方が見えてないんじゃないだろうか。
「この状態で俺が出て行ったらお前、誰? ってなるよな。影の中に隠れてようかしらん」
「んふっ」
笑うな笑うな。
夜のうちに転移させようと思ったのに、妲己とのボードゲームで勝てそうだったから、つい興が乗って遅くなってしまった。で、焦って転移させたから、登場シーンに失敗してしまった。
リバーシで勝てそうだったんだよ。マジで。
結局負けたけど、次に繋がる良い戦いだったんじゃないかと自負しております。
「これは一体どういう事だ!」
カラミスが声を張り上げて何かを言っている。
いつも説明役は俺なんだけど、ちょっと今は隠れちゃってるから。
話をするのも面倒だし、さっさと始めたい。
「待て。そちらの女性。ミュラー団長ではないか?」
「おや?」
パーティーメンバーを拘束しようと影を伸ばそうとしたら、竜人のマスカードがグレースに話しかける。
グレースはまさかの身バレに首を傾げながらキョトンとして、少し目を上には向ける。多分記憶の中で会った事があるか考えてるんだろう。
「……お会いした事はなかった筈ですが?」
「やはりか。行方不明と聞いていたが、こんな所に居たのか」
会話が微妙に成り立っていない。
ちょっと面白そうだから、話を聞いてみるのもありだけど、グレースには興味が無いみたいだ。
「レト様」
「はいはい」
グレースがチラッと視線だけを後ろに向けて、アイコンタクト。
カラミスとマスカードのパーティーメンバーを両方拘束する。
「うおっ!」
「な、なんだ!?」
「きゃーっ!」
やばいな。もう超越者じゃない相手のレベルじゃあ影だけでなんとかなってしまう。
Lv99の人間も何人か居たんだけど、話にならない。影で拘束するだけで勝ててしまう。
戦いなら拘束じゃなくて、首を刎ねてただろうけど。
「何をしやがる!!」
「ミュラー団長。これは一体どういう事だ?」
パーティーメンバーを拘束拉致して、俺の方に引き寄せる。
ここでようやく俺が認識されたが、向こうはそれどころではないらしい。
あの超越者達、俺の事を雑用係かなんかだと思ってない? チラッと見ただけで無視されたんだけど。
「もう団長ではありませんので、その呼び方はやめて下さい。あなた達にはこれから、私とこちらの魔物と戦って頂きます。拒否権はありません。その為に人質を取りました」
「何故とかそういう理由も説明する気はありません。あなた達はただ黙って戦えば良いのです。そちらの細目の人間は私が。竜人の方は魔物が相手します」
以上ですとばかりに、淡々と説明したグレース。
言い終えたと同時に、グレースと妲己は戦闘態勢に入り、何か言おうとしていた超越者二人を黙らせる。
「オジキ。やるしかねぇよ。いつの間にかパーティーメンバーを人質に取られてんだ。考えるのは後にしようや」
「是非もなし。あの高潔な人間だったミュラー団長が何故こんな事をしてるのか疑問はつきないが、終わってから考えるとしよう」
一応会話は筒抜けなんだけどね。
向こうは勝てる気でいるらしい。
まぁ、【魔眼】とかが無ければ、立ち振る舞いとかで判断するしかないしね。
よくラノベとかで、みた瞬間震える程の強さが分かるとかあるけど。
本当に分かるのかね。確かに、妲己とか魔物を見れば分かるかもしれないけど。
同じ人間同士で一瞬見ただけで、判断したり出来る達人の方々が多いよね。
ってか、あの竜人のマスカード。
明らかにグレースと会った事があるような口ぶりだけど。グレースの記憶には無いみたいで、どういう事なのかちょびっと気になる。
竜人なんて珍しい種族。会ったら忘れないと思うんだけどな。
「まっ、どうでもいいか。俺はゆっくり観戦させてもらおう」
世界の真相に迫る話とかなら、戦いを中断して聞いてみてもいいけど。個人の関わりとかに興味を持ち出したらキリがないしね。眷属になる前の友達とかなら助けてあげるのもやぶさかでは無かったけど、そうじゃないみたいだし。
俺は毎度のごとく、ソファとテーブルを出して偉そうにふんぞり返る。
無視されて、雑用係と思われてる疑念を少しでも晴らしたい。まぁ、これから死んでいくであろう相手に見栄を張っても仕方ないんだけど。
俺のテンションの問題です。
「うーん。同時に始めそう。出来れば一人ずつ戦って欲しかったけど仕方ないか」
一つの戦いをじっくり眺めてたかったけど。
忙しい観戦になりそうだなと思っていたら、影からアシュラとテレサが出て来た。
「ゴギャ」
「眠いの」
明け方に転移させたからな。
アシュラとテレサは寝ていたが、起きてきた。
今回の戦いは二人も気になるらしい。
「こら、アシュラ。ぺちぺちしないの」
アシュラはまだ寝ぼけているのか、俺の足元付近に転がされている人質をおもむろに叩き始めた。
俺達から見ればじゃれてるみたいなもんだけど、やられてる側は生きた心地はしないだろう。
3mぐらいの大きさの鬼がペチペチ叩いてくるんだぜ。現に、人質の皆さんは絶望感を漂わせている。
そんなこんなしている内に、戦いが始まった。
戦況が動いたのはグレースの方からだ。
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