サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第四章 迷宮都市ラビリントス

第129話 尻尾をブンブン

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 「なるほど。そう来たか」

 「良かったですね。楽が出来るように同時に来てくれましたよ」

 それはそうなんだけど。
 最後の一人は街で暴れてやろうと思ってたのに、一緒に迷宮に入ってきちゃったか。

 「片方のグループは見逃すか? 邪魔されるのも面倒だしな」

 「わざわざ街で暴れる為にですか? 別に超越者が居なくても街で暴れる事は出来るでしょう」

 「テンションの問題だよ」

 ちゃんと予定らしい予定を立ててないからこうなるんだよ。行き当たりばったりすぎたか。
 でも俺が予定なんて立てて上手くいった試しがないよね。前世ではもうちょっと思慮深い人間だった筈なんだけど。

 いや、衝動的に親を殺した時点で思慮深くはないか。その後はしっかり計画を立てて殺して回ったからノーカンノーカン。ちょっと色々なツテを使って手伝ってもらったりもしたけど。

 「まっ、いっか。街を壊すなんていつでも出来るんだし。今回は諦めてやろう。超越者との戦いに集中しようか」

 「本当に諦めましたか? いざ、出て行く時にやっぱりやって行こうとか思いませんか?」

 ……この場での発言は控えさせて頂きます。
 やりたくなるかもしれないし。
 立つ鳥跡を濁していくスタイル。
 濁す街が無くなるかもしれませんな。

 「それは置いといてだね。これ、両方共同時に移動させる? それとも、邪魔されないように片方だけ呼ぶ?」

 まだジト目で見てくるグレースさんの話を無理矢理元に戻して、これからどうするか提案する。
 そんなご褒美みたいな視線を頂いても、俺のその時の気分次第なんだから諦めて下さい。

 「片方だけ呼ぶと、異常を察知して迷宮から出て行くのでは? レト様からするとそのほうが嬉しいんでしょうけど」

 確かにそうだな。
 急に片方のパーティーがいなくなるなんて、ホラー現象が起こると、絶対冒険者ギルドに報告しに行くだろう。俺からしたら願ったり叶ったりだから良いけど。

 「でもなぁ。見てよあれ」

 「もし片方だけを転移させるなら、説得はレト様がして下さいね」

 同時に来た事を眷属達にも伝えてあるんだけど。
 妲己が尻尾八本をブンブンとちぎれんばかりに振りまくって、今か今かと待ってるんだよね。
 風魔法要らずだよ。扇風機みたいになって、テレサが飛ばされそうになってる。

 あんな楽しみにしてる妲己は久々に見たよ。
 麻雀で役満聴牌してる時でもあんな事にはならん。1000点で上がって尻尾で思いっ切りしばかれたのは良い思い出です。

 「ちょっとあれを説得するのは無理かなーって」

 「主人らしくガツンと言ってやれば良いのでは?」

 俺がそんな強権を発動した事あります?
 結構みんなの自由意志を尊重させてもらってますよ? 眷属にして、精神構造をいじってるから詭弁にしかならないけど。

 「いや、いいよ。いつも俺のわがままに付き合ってもらってるんだし。あんなに自己表現されたら、早くやらせてあげたくなる」

 「レト様…。大人に…なられましたね…」

 ほろろとハンカチを取り出して、目元を拭うグレース。
 いや、なに? その小芝居。涙も出てないし。
 どこから目線で話してるのかな、それは。
 まだそんなに感動的になるほどの時を重ねてないでしょうが。



 ☆★☆★☆★

 合同パーティー一行が、お城の迷宮に入ってから1日が経過した。
 15階までやって来たが、デスターやアグネスのパーティー、異常の原因は見つけられていない。

 そしてその日の夜。
 二つのパーティーが一塊になり、情報の共有をしていた。

 「まずは我らのパーティーから。ここまで特にこれといった発見はない。一応いつもより注意深く周りを観察しているが、我らでは何も分からなかったな」

 マスカード率いるパーティーから発言はあったものの、それはあまり意味のないものだった。
 マスカード含め六人いるパーティーだが、斥候を任せている者では何も見つける事が出来ていなかった。

 「んじゃ、俺らの方からも。オジキのとこと同様に俺らも何かを見つけた訳じゃねぇ。だが、迷宮に入ってから何かずっと見られてる感覚はある」

 「ほう? 監視か?」

 「いや、なんだろうな。俺も違和感がある程度なんだがな。監視というよりは、獲物を見定めてる感じと言えばいいのか。はっきりしねぇんだ。気配察知にも引っかかってねぇ」

 カラミスは迷宮に入ってから、ずっとまとわりつく様な視線を気にしていた。
 表向きは普通にしていたが、悟られないようにその視線の主を探っていたのだ。

 しかし、気配察知を全開にしても見つけられる事が出来ず、嫌な予感はずっとしている。

 「我は感じないな。元からそれ程鋭い方ではないのでな。すまぬ」

 「いや、俺もここまで見つけられないなら、気のせいじゃないかとは思うんだけどよ。もし、俺が見つけられない程の手練ならやばいぜ。嫌な予感は収まらねぇし、警戒だけは怠らないようにしてくれ」

 「元よりそのつもりだ。カラミスが見つけられない程の相手に油断をする事などありえん。念の為、今日の夜番は多めに人を配置しておくか」

 「その方が良いだろう。ほんと気のせいであってほしいぜ」

 それから、細かい情報共有も済ませてその日は終了。各々でご飯を食べたり体を休めたりしつつ、辺りを警戒していた。

 寝る時になっても、襲撃はいつも通りの魔物しか来ずに、やはり気のせいだったのかと思い始めた夜明け頃。
 全員が起床しテント等を片付け終わり、迷宮探索を始めようとした時だった。

 「な、なんだ!? オジキ!!」

 「うむ!!」

 一瞬の間に見た所もない場所に飛ばされた。
 他の迷宮では、転移罠があると聞いた事もあったが、ラビリントスでは事例はなく。
 それでも慌てずに、周りを見渡すと。

 「あれは…」

 「なんだこれはぁ!」

 そこに居たのは、女騎士と体長5m超える狐の魔物。
 圧倒的覇気を撒き散らし、こちらを楽しそうに、そして獲物を見る目で見つめていた。
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