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第四章 迷宮都市ラビリントス
第136話 鏖殺
しおりを挟む「そーれ、行ってこーい」
「では私達も向かいますね」
俺達がまず最初にやったのは、三つの迷宮の回収。所有者権限で移動を選択して、今は影の中に三つのコアがある状態だ。
腰を落ち着けるまではそのまま放置かな。ウェインが弄りたそうにしてたから、一つはあげるけど。
急にどでかい塔の形をした迷宮が無くなった事で街は大混乱。その混乱に便乗して作戦開始だ。
街の広場のど真ん中に出来損ないの文字化けキメラや、一応成功しているレッサーキメラを放出する。文字化けキメラは制御出来ないからね。もう好きにしてくれって感じ。
それ以外のレッサーキメラは一応人間を殺してねとウェインにお願いしてもらっている。
「都市を破壊し尽くしても生き残ってたら面倒みてやろうかな」
「ウェイン兄の護衛に丁度良いと思うの」
グレース達は北門へ影で送り出し、俺達も影移動で南門へ。
急に門の前に現れた俺達に、特にアシュラを見て民衆は恐怖して街の真ん中へ逃げ出す。
俺達はそれを追いかけずに、門の前で陣取ってお喋り中である。どうせ逃げてもそっちにはキメラがいるからね。またそのうち戻ってくるだろう。
アシュラのインパクトのせいで、俺が指名手配犯ってバレてなさ気だな。どっちでも良いけど。
「ウェインの戦闘能力はなぁ。一応基礎トレーニングだけはしてるらしいけど」
「お兄があんなに運動音痴だとは思わなかったの」
前に投げようとして、後ろに投げる人って本当にいるんだなって思いました。
漫画の世界だけだと思ってたぜ。
「ってか、アシュラはお兄ちゃんなのに、ウェインはお兄なんだ? この差は一体?」
「わからないの。気付いたらそう呼んでたの」
さいですか。俺はレト様呼びから変化しそうにないし、なんか残念な気分だぜ。
お兄ちゃん呼び。少し憧れます。
「おおー。逃げてきた逃げてきた」
遠見で確認はしてたけど、街の真ん中でキメラはしっかり暴れている。
頼りの超越者は居ないし、実験の為に冒険者は結構拉致ったからな。
戦える人間は、冒険者に成り立てのビギナーと街の衛兵、領主の騎士ぐらいしかいない。
ビギナーなんて役に立たないし、実質衛兵のみだな。それだけで守れるはずもなく。
「じゃあ、シューティングゲームの始まりだな」
「頑張るの」
「ゴギャギャ!」
アシュラは金棒で衝撃を出すだけだからちょっと不利だけど。
俺とテレサは魔法で遊べるからな。
「俺のトゥーハンドが火を吹くぜー!」
「砂利ショット」
「ゴギャ!」
俺は指で銃を模して【血液魔法】で凝固させた血を飛ばす。前世でも銃にちょっぴり触った事はあるけど、反動がない分魔法のが便利だな。
テレサは杖を手にして【土岩魔法】で一般人を無造作に殺していく。
砂利ショットの名前通り、魔法で作った砂利を適当に撃ち込んでるだけだが、テレサがやると威力が半端ない。どんどん蜂の巣のような死体が増えていく。
魔法名は相変わらずちょっと残念。
アドバイスは急務だな、これは。
アシュラは金棒を振り回して、衝撃をそこらにばら撒いている。
時折、建物が倒壊して二次災害が起こってるが気にする程でもないだろう。
それにしても。
「思ったより逃げてこないな? この都市には5万人程は住んでる筈なんだが」
「逆の方に押し寄せてるの?」
目算だけど、1000人も来てないんじゃないかね? 綺麗に半々にならないとは分かってるけど、ここまで偏りがあるのは何故なのか。
「ゴギャギャ!」
グチャっと音がして、そちらを見てみるとアシュラが金棒で頭を叩き潰していた。
どうでも良いけど、アシュラの作った死体は汚いな。倒し方に気をつけてよね。
いつも返り血だらけじゃん。
「うーん? あーなるほど? 教会と領主館に逃げ込んでるのか」
そういえば教会にも微妙に戦力があったのを忘れてたな。本当に微妙にだけど。
俺は遠見を使いながら、これからどうするか考える。キメラ達は奮闘してるけど、ちょこちょこ倒されたりしてるんだよね。
そんなに強くないから仕方ないけど。
「グレース達はっと。………うわぁ。あっちの方が酷そう」
グロ注意ってやつだな。
超越者を素体にしたキメラが人間を食い散らかしてる。それを見てみんな逃げようとしてるんだけど、妲己とグレースが連携して逃さないようにしている。
ウェインは嬉々として薬品やら爆弾やらを実験している。投げるのはグレースかキメラに任せてるみたいだが。
あっちは戦場という言葉すら生温い場所だな。
「テレサー。あそことあそこに適当に魔法を撃ち込んでくれー」
「わかったの」
籠城なんて許しませんぜ。領主館と教会をテレサに狙撃してもらう。
【雷轟魔法】で上空から雷を落としてもらうだけだけど。
「うーん。教会を壊したりしたら、天罰とかあるのかしらん? 上位存在に好きにしても良いって言われたけどやり過ぎかも?」
「もう撃っちゃったの」
なら仕方ないね。やっちゃったもんは仕方ない。
後の事は後で考えましょう。大丈夫。きっとなんとかなるさ。
「わはははは! これでまた俺のリードだ!」
「影を使うのは無しなの。街中が射程範囲なのはズルいの。それならテレサだって大規模魔法を使ってやるの」
テレサと何人殺せるかゲームをしてるんだけど、ちょっと影で遠方にいる人間をどんどん串刺しにしてたら反則扱いにされた。
一応テレサが見える範囲だと思うんだけど。
ルールは目視してる人間をどれだけ殺せるかだからね。街の上空には串刺しにされた人間達が良く見える。なんかこういう芸術がありそうだな。
「大規模魔法か。それもありだな。よし! テレサ! ここら一帯を吹き飛ばす感じのやつを頼む! そろそろ範囲を縮小させていかないとな!」
「わかったの」
いつまでも門の前に陣取ってたら、残党狩りも出来ないからな。
とりあえずこの辺更地にして、生き残りを皆無にして街の中心に向かってみよう。
「ん? あつっ! あっつ!」
「ギャギャ?」
中々魔法を使わないなと思ってたら、まだテレサは魔法を練ってる最中だった。
「テ、テレサさん? その魔法は一体?」
「練習中の魔法なの。集中してるから話しかけないでほしいの」
多分【火炎魔法】。大きさはピンポン玉くらいかな? だけど、密度が半端ない。隣にいる俺とアシュラが熱さを感じるぐらいなんかやばい。
魔力視で確認してみると、ファイヤーボールを何度も何度も圧縮してるっぽい。
もう火が真っ黒なんだけど。やばいって。これ、街ごといっちゃうんじゃないの?
「アシュラ影の中に入れ」
「ゴギャ!」
被害想定が全く出来ない。
俺はアシュラを影の中に放り込み、北門で頑張ってる他の眷属も影に入れる。
とりあえずこれで大丈夫だろう。
真っ黒な焔ってなんだよ。【闇魔法】も混ぜてんのか?
「ふぅ。準備完了なの」
最終的に完成したのは小指の爪サイズの小さな黒い点だった。
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