サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第五章 魔王討伐

第143話 新しい魔法

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 「てけてけてーん! レト・ノックスの新魔法~!」

 「キュンキューン!」

 「ゴギャギャー!」

 「……(ぱふぱふ)」

 む? 元人間組ノリが悪いな? 妲己達はノリノリなのにさ。ヴェガのそのラッパみたいなのはどこから入手したのかな? 影に転がってた? そうですか。ウェインの玩具かね。

 「なんだなんだ? もっとテンションを上げてこうぜ?」

 「レト様は急におかしくなるの」

 「そういう病気なんですよ。良い加減慣れましたが」

 「俺が特効薬を作ってみせるんだぞ!」

 辛辣~。俺がテンションを上げるとこいつは相対的に冷めるんだよな。一応主人だぞ? もっと、こう、なんかあるだろうよ。病気は流石に言い過ぎだろ。

 「いや、いよいよ魔王と会えるってなるとテンション上がっちゃって」

 「ずっと楽しみにされていたので、その気持ちは分かります。それで、新魔法とは?」

 おっと、そうだった。いや、空を飛びながら考えてたんだよね。最近は近接戦寄りの戦い方になったとはいえ、魔法も使えるわけだし。
 何か補助的に役に立てる魔法の使い方はないものかと。

 「それがこれだよ!」

 「? ただの魔石ですが?」

 キメラの実験は俺に良いインスピレーションを与えてくれたね。
 あれで少し思い付いたんだ。

 「ウェインの実験のお陰で魔石があれば擬似的に魂を作れると分かった。なら簡易的な斥候として使えないものかと」

 俺は【血液魔法】を使ってストックしてある血を少しだけ出す。

 「これをこうしてだね」

 血を蝙蝠の形にして、最後に魔石を与える。吸血鬼と言ったらやっぱり蝙蝠だよね。
 俺の原点でもある訳だし。いやぁ、あの時は弱かったなぁ。ゴブリン相手にひーこら言ってた頃が懐かしいぜ。

 「どうよ!」

 完成したのは、血で出来た蝙蝠。これは俺の血を使ってない所がポイントだね。
 使い捨てにする予定なのに眷属枠を消費したくないのです。
 蝙蝠はパタパタと羽を動かして俺の肩に止まる。

 「おおー! 凄いんだぞ!」

 「興味深いの」

 「……」

 「そうだろそうだろ」

 ウェインはマッドな目を覗かせつつ、ジロジロと蝙蝠を観察する。
 テレサは自分の魔法で再現出来るかを考えてそうだね。
 ヴェガは何故か嫉妬の籠った目で蝙蝠を睨んでいる。これはあれかな? ライバル出現するとかでも思ってるんだろうか? 大丈夫。使い捨てだから。

 こいつを使ってこの『腐死の森』を調査する。
 血と魔石はいっぱいあるからな。沢山作って広範囲を調べるぞ。

 「どうやって情報を得るのですか?」

 「こいつを通して【魔眼】で確認する」

 俺も最初は作ったものの戦闘能力もないし、愛玩生物にしかならないと思ったんだけどね。
 蝙蝠に魔力を送り込むと、能力やら異能が使えたんだよね。だから、こいつを送り込んだ所から魔法やらをぶっ放す事が出来る訳だ。

 「眷属に対してはそういう事が出来ないのに、この魔石生物相手には出来たんだよね」

 ヴェガにも出来なかった。何故なのかは現在研究中です。意志の有無が大事なんじゃないかと睨んでいます。

 「この森は広いし、俺が飛んで捜索したりするとあっさりバレそうだから。まぁ、これもすぐにバレるかもしれないけど。まずは相手の能力を確認したい」

 まぁ、ビビってるとも言いますね。早く魔王には会いたいけども。とてつもない戦力差がありそうなら方針を転換せざるを得ない。
 相手は何年前から存在してるか定かではない程の魔物で魔王だ。
 5年そこらしか生きていない木端の魔王で果たして太刀打ち出来るのでしょうかね。
 前評判では、一番弱い魔王の筈なんだけど。

 この蝙蝠をにももう少し隠密性を持たせてやりたい。ゆくゆくは蚊ぐらいの大きさで偵察出来るようになれば理想的だね。


 ☆★☆★☆★

 「クカカカカ」

 魔王・エンペラー・リッチは既に森に紛れ込んだ異物を探知していた。否。森に入る遥か前から探知していた。
 魔王が持つ膨大な魔力と繊細な魔力操作。それを使ってかなり広範囲で魔力探知をしている。その範囲は、ここから最寄りの街まで徒歩で一ヶ月はかかるというのに、その街の動向を探れる程だ。

 「久方振リ ノ 客人ダ」

 この地に居着いてどれだけ経ったか。魔王は覚えていない。昔は引っ切りなしにやってくる人間を血祭りにあげては、アンデッドに変えてきた。
 しかし、ある時から近付く人間種は皆無となり暇を持て余していた。

 「フム。人間 デハ 無サソウ ダガ」

 カラカラと遊び相手がやってきたと骨を震わせて笑う魔王。その姿は何処ぞのなんちゃって魔王よりも風格があり、まさしく王たる王であった。

 「オイ」

 魔王のそばに控えていたアンデッドの一人が呼ばれる。それは喋る事もなく、魔王に跪き指示を仰ぐ。

 「森ノ端ニ 何カガ 紛レコンデオル。捕マエテ 我ノ前ニ 連レテ来イ」

 アンデッドは一礼し、その場を離れる。
 その顔はアンデッドだというのに、主命を授かった喜びで歓喜に震えているようだった。

 「果タシテ 楽シマセテ クレルノカ」

 魔王は少し楽しそうにしながら部下が連れてくるのを待つ。これで楽しめなかったら久々に人間の国に侵攻してやろう。そんな事を考えながら。
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