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第五章 魔王討伐
第142話 一心同体
しおりを挟む『リビング・ウェポン (眷属)
名前 ブラッド・チェーン
【魔物能力】
血液魔法
不壊
一心同体 』
「もう訳が分かりませんな」
俺ちゃんの武器が眷属になってるんだけど。
確かに血をあげたけども。
「【一心同体】? なんだこれは」
盗賊達を文字通り血祭りにあげたブラッド・チェーンが機嫌良さそうに戻ってきた。
グレースとテレサは盗賊から身ぐるみを剥いだり、アジトにあった物資の検分をしている。
中々大所帯で盗賊にしては強かったから、溜め込んでるんではないかと期待してます。
「ぬぉぉおお!?」
【一心同体】とはなんじゃろなと思ってたら、ブラッド・チェーンが俺目掛けて突進してきた。
とりあえず避けたんだけど、それはお気に召さなかったらしい。なんかジャラジャラと鎖を動かして抗議している。
「なんとなく喜怒哀楽が分かるのは眷属だからか? 武器の気持ちが分かるなんて、痛い系の主人公だけだろ」
今度はゆっくりと俺に近付いてくる。そしてそのまま俺の体に吸い込まれていった。
「はいぃ?」
俺の体に吸収されたんだけど? もう全然意味分からん。急にファンタジーのゴリ押しし過ぎだぜ。
どうしようかと右往左往してると、手からひょこっと鎖が出てきた。
「びっくりした。なるほど? 【一心同体】ってそういう事か」
これは良い。腰に巻きつけるのはちょっと邪魔だと思ってたんだよね。でも影に収納してると、そのまま使わなそうだったしで、仕方なしに巻いてたんだ。
「なんか一気に強くなったな、お前。優秀な武器になってくれて嬉しいぞ」
くねくねと照れたように動くブラッド・チェーン。なんか可愛く思えてきちゃったよ。
これからはもう少し鎖鎌の練習に力を入れるかね。
その日の夜。
いつもの様に馬車ホテルにて一戦交える為に服を脱ぐと、右腕全体にタトゥーの様なのが入っていた。腕に巻き付く感じの鎖模様だ。
「レト様、それは?」
「ブラッド・チェーン。さっき【一心同体】で体に収納されてるって言っただろ? まぁ、俺もこんな形とは思わなかったけど」
なんかイカすじゃんね。全身に刺青やタトゥーはちょっときついけど、こういうワンポイントならありじゃなかろうか。
「動いてますよ?」
「ほんとだ。体のどこにでも行ける感じなのか?」
なんか鎖が体で泳いでいる感じだ。すげーな。
特に気持ち悪くもないし、好きにしたらって感じだけど。
「あ、こらこら。俺のエクスカリバーに巻き付こうとするのは辞めなさい。なんか恥ずかしいから」
「ふむふむ。ライバル出現ですかね」
え? グレースさん武器に嫉妬とかしないですよね? あのドロっとした目になるのはやめてよ?
「いよっ! ほっ! とう!」
ガキンガキンと金属音を鳴り響かせ、俺の武器とアシュラの武器がぶつかり合う。
「いよし! そこで巻き付け!」
「ゴギャギャ!?」
一瞬の隙をつき、アシュラの金棒に鎖を巻き付け、体を武器と一緒に一気に引き寄せる。
「くらえ! 魔王パーンチ!」
「ゴギャギャー」
引き寄せた勢いでそのままアシュラのお腹当たりを殴る。顔を殴りたいけど、身長差がね…。
でかいってのはそれだけで有利だぜ。
「はい。俺の勝利。アシュラは金棒を手離すべきだったな」
「ギャ」
いつもの模擬戦を終えて少し休憩。
しょんぼりしてるアシュラを慰めつつ、ブラッド・チェーンの使い心地を確かめる。
「使いやすさは段違いになってるな。これも【一心同体】のお陰か? どういう風に動かして欲しいとかが伝わってくるんだよね」
アシュラの血を飲んでみたいよと催促されたので、少しだけ貰う。
俺も偶に飲ませてもらってるからね。これがまたべらぼうに美味いんだ。グリフォンなんかよりよっぽど美味しい。妲己も勿論美味しい。ヴェガはイマイチだったな。強さのせいか、人間が混ざってるからなのか。ヴェガが強くなってくれたら分かるだろう。
「さて、もう少しで魔王の領域だな」
「ここからでも禍々しい空気が分かりますね」
盗賊の討伐から早くも半年程が経過している。
その道中何度も街を滅ぼそうと思ったけど、鋼の心で我慢した。
寄り道をするといつまで経っても目的地に到着しないからな。ヴェガの好物の人間は盗賊で調達出来たし。どこにでも居るんだよね、盗賊。まるでゴキブリみたいな奴だ。
人間様の治安維持に積極的に協力してしまっているな。その代金は街を滅ぼす事で払ってもらおう。
魔王討伐が終わってからな。それまでは束の間の平和を楽しんでおくといい。
「エンペラー・リッチかー。配下が山ほどいるんだよね?」
「正確な数は分かりませんが、そうらしいですね」
グレースもエンペラー・リッチがいつから存在してるかは知らないらしい。
なんでも昔、この辺には小国群があったらしいけどエンペラー・リッチにまとめてアンデッドにされて、それがウヨウヨと彷徨ってるらしい。
「見渡す限り森だけど? ここに国があったの?」
「伝承ではそうなってますね」
ほへー。こんな立派な森になってるって事は、相当昔から存在してるんだろうなぁ。こりゃ、強そうだ。
「気を抜かずにいかないとな。超越者みたいなお遊びでは済まないだろうし」
とにかくまずは姿を確認したいね。
解析でどんな能力を持ってるか調べてから、対策を考えたい。どこか分かりやすい所に居てくれたら良いんだけど。
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