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第五章 魔王討伐
第141話 生体武器
しおりを挟む「んお? 盗賊達がアジトに着いたっぽい? 森の中で動かなくなった。そろそろ向かうか」
罪人夫妻の断末魔が途切れてから少し。
ヴェガもいっぱい食べて人心地ついている。
俺は馬車の中に置いてあった、金やら宝石やらを影の中に放り込み、早速盗賊の元へ向かう。
「なんで宝石とか山ほどあったんだろうね? 商談とかしに行く予定だったのかな?」
「あの二人に商談は出来そうにありませんが」
そこはほら。お付きの人とかが代理でやったりするんじゃないの? 執事っぽい人も死んでたし。
「お? またか? 欲しがりさんだな、こいつは」
「明らかに意思を持ってますよね、その武器」
グレース以外を影の中に入れて、盗賊のアジトらしき所に徒歩で向かう。
遠目で確認したところ、洞窟っぽいところを拠点にしてるらしく、今は盗賊達はぐったりと疲れている。
「なんか最近、やたらと血を要求するんだよね。なんでこうなったのやら」
雑魚専用武器になってしまっている、俺のブラッドチェーン。いつもは腰に巻いて見えないようにしてるんだが、たまに勝手に動いて血を催促してくる。
「面白半分で俺の血を大量に与えたのが、余程お気に召したのかな? それから積極的に欲しがるようになったし」
「武器が意思を持つなんて考えられませんが」
そう? ラノベでは結構王道なんだけど?
そのお陰もあってか、俺はすんなり受け入れられている。ウェインに見せた時は興味津々でブラッドチェーンを観察していた。
「ブラッドチェーンで実験させない代わりに、俺の血を大量に提供する事になったけど」
「研究は進んでるんですかね? ウェインは研究途中でも他に興味がある事が出てくると、すぐにそっちに意識を持っていかれますから」
わかんね。あいつは今、何個も並行して研究してるから。時折訳の分からん研究に熱を入れては、目をぎらつかせている。
偶にレポートを読んだりするけど、本当に意味があるのかって研究をしたりしてるからね。
「この前は妲己の尻尾の動かし方について研究してたな。なんでそれに興味を持ったのか分からんが」
「八本もある尻尾を器用に動かしてますからね。気になると言えば気になるでしょう。研究しようとまでは思いませんが」
まっ、ウェインは好きにやらせるさ。
ああいう手合いはこっちがあれこれ指示出すと、実力を発揮出来ない事もあるからね。
作って欲しいものがあれば頼むけど、それ以外は自由にやらせるよ。
「この煙草、いまいちだな」
「新作ですか? いつものは?」
「前にウェインが一瞬煙草作りに興味を持って、作ってもらったやつ。すぐに飽きて、結局試作品しかないけど」
やっぱり、いつも吸ってるやつが一番だね。
ウェインなら本腰を入れれば中毒性MAXなおクスリ煙草とかも作れそうだけど。
「さて。到着した訳だが」
「臨戦態勢ですね。私達が近付いている事がバレてたのでしょう」
まぁ、堂々と正面にから来たからね。
それなりに優秀そうだったし、普通にバレるか。
それでも直接アジトに帰ったのはダメだね。余程ヴェガの登場にビビってたと見える。
「こーんにーちわー! あーそーぼー!」
「子供ですか」
バレてるなら仕方ない。正面から殺すべし。
という事で、洞窟の前で大声を出してみたんだけど、返ってきたのは怒号だった。
「今なら見逃してやる! とっとと立ち去れ! 今はお前みたいな馬鹿に構ってる暇はないんだ!」
「馬鹿って言われちゃった」
「普通は馬鹿に見えます。致し方ない事かと」
どうやら、盗賊さんは見逃してくれるらしい。
なんて優しいのか。でも主導権を握ってるのはこちらなので。
残念ながら君達の未来は既に決定しています。
「よーし! ブラッドチェーンで大暴れしちゃおう!」
「洞窟の中では使いづらいですよ」
ところがどっこい。最近、意思を持ったからなのか原因は不明だけど、俺の鎖鎌を操るレベルが急上昇してるんだ。それに、壁とかにぶつかりそうになったら勝手に停止してくれるしね。
俺とグレースは盗賊の忠告を無視して、洞窟中に足を踏み入れる。
その瞬間、飛んできたのは無数の矢だった。
「馬鹿め! 見逃してやると言ってやったのによ!」
盗賊のボスは既に勝ちを確信してるのか、高笑いをしている。
「え? 自動防御じゃん。優秀すぎない?」
「もうなんでもありですね」
腰からブラッドチェーンを引き抜き、振り回してやろうと思ったら、勝手に動きだして飛んできた矢をどんどん叩き落としていく。
「これは流石に検証が必要だな。どこまでの威力の攻撃を防げるのか確かめないと」
雑魚専武器じゃん。使えねぇとか思ってたけど、とんでもない収穫があったもんだ。
「な、なんだ!? なぜ当たっていない!?」
「武器が優秀なもんで。すみませんね。ほーれ。あそこに血袋がいっぱいあるぞー。好きなだけ飲んでこーい」
自動防御が出来るなら、勝手に攻撃もするのでは? そう思ってブラッドチェーンを前に投げてやると、蛇のようにうねうねと動いて盗賊達を蹂躙していく。
「マジで攻撃してるじゃん。どうなってんだよ」
「ぎゃー!」
「た、助けてくれぇ!」
武器が眷属みたいな働きしてやがる。
この戦いが終わったらちょっと解析してみるか。
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