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第五章 魔王討伐
第140話 テンプレ
しおりを挟む「騎士の方が劣勢ですね」
「盗賊のくせに中々練度が高い。本当に盗賊か?」
言動は盗賊そのものだけど、よく見れば武器もしっかりしてるしレベルも高い。
「こういうのってさ、物語とかでよくあるパターンなんだけど、毎回護衛もっと増やせよって思うんだよね」
「15人はそれなりの人数だと思いますが」
いやいや。お偉いさんが乗ってるんだろ?
危機管理がガバすぎると思うんだよね。
日本で天皇が移動する時とか凄いぞ? まぁ、こっちで言う王族だからまた話は違うんだろうけど。
「おーおー。騎士がどんどんやられていくな」
「知っていましたが、助ける気はないんですね」
「ないない。なんで俺が助けなきゃならんのだ」
俺は勇者でも英雄でもなく魔王なので。
ただ盗賊に襲われてるのか、政治絡みのドロドロした政争か知らないけど、俺は関係ないじゃん。
「ユニークスキル持ちが居たら確保しようと思ったけど、居なさそうだしな。テンプレに遭遇したらスルーが推奨だぜ。どんな面倒事に巻き込まれるか分かったもんじゃない」
お礼をさせて下さいって言って連れて行かれて、更なる面倒事になるパターンとか、恩を仇で返されるパターンとか。
とにかく面倒しかない。
「盗賊側もそれなりに被害が出ましたが、決着がつきましたね」
「さてさて、お偉いさんはどんな人かね?」
お姫様とか貴族の令嬢とか? どんなパターンでくるのか楽しみだぜ。
「は? はぁ?」
「んふっ。レト様。凄い顔をしてらっしゃいますよ」
わくわくしながら成り行きを見守っていると、出て来たのはでっぷりと太った中年夫婦。
両方ともトドみたいな図体で顔もゴブリンみたいに醜い。
「おいおい。俺のわくわくを返せよ。襲われて当然みたいな風貌してやがるぞ」
「もしかしたら善人かもしれませんよ」
知るか。善人だろうが、悪人だろうが、俺のわくわく心に傷を付けた代償は大きい。
「ぶっころ。ヴェガ、ごー」
ビシッと敬礼して、一緒に見ていたヴェガが飛び出す。アシュラからいらんことを学んでるな。
敬礼とか異世界にないだろ。知らんけど。
「て、敵襲!!」
「見た事ない魔物が襲ってきやす!」
戦いが終わって、中年夫妻を縛り上げていた盗賊が騒ぎ出す。
騎士達との戦いで疲弊してるからか、今のヴェガなら苦戦しそうなレベルだけど、問題なく食い散らかせている。
「な、なんだこの魔物!?」
「ボス! どうしますか!?」
「ずらかるぞ! 引ける奴らはさっさと逃げろ!」
盗賊達の判断は早かった。でぶ夫妻を置き去りにして、我先にと逃げ出していく。
ヴェガが逃げた奴を追いかけずに、まだ生きてる奴を踊り食いにして、楽しそうな顔をしている。
「追いかけないのですか?」
「アジトとかがあれば、そこまで帰るだろ。ついでに溜め込んでるであろうお宝をもらっていこう」
ボスっぽい奴の影にタグは付けておいた。
これでいつでも追いかけられるだろう。
「ヴェガ、程々にしとけよー」
「聞いてませんね」
いや、あれは聞こえてて無視してるな。
人間を食べるので忙しいんだろう。魔物より人間の方が美味しいのかね。俺は魔物の血の方が好きなんだけど。
「さて、後はこいつらだな」
縛られたまま放置されているゴブリン夫妻。
何故か睨みつけられてるけど。俺は一応助けた立場だと思うんですけどねぇ。
とりあえず塞がれている口を開放する。
「ぶ、無礼者! わしが誰だか分かっておるのか!! さっさとこの縄をほどけ!」
「そうざますよ! 下民の分際で!!」
ほえー。ざますとか言う人初めてみた。
本当に存在するのかよ。一体どういう気持ちで使ってるんだろうね。恥ずかしくないのかな。
「レト様。どうなさいますか?」
「ヴェガの餌で」
まぁ、どんな人間だろうとそうしたけど。
お前の罪は大きい。俺が異世界に来た中で一番大きな罪を犯してしまったからな。
「罪状。俺のわくわくを台無しにした罪。ヴェガ餌の刑に処す」
「脂がたっぷり乗ってますし、喜ぶ事でしょう」
オーク夫妻の言ってる事を無視して、淡々と話しかける。言われてる事を理解してないのか、相変わらず叫び続けてるけど。
「こんな事をしてただで済むと思うなよ! わしは国王様にお会いした事もあるのだからな!」
「奴隷にしてやるざます!」
国王に会った事あるからなんなんだよ。とてもお前みたいな魔物を助けてくれるとは思えないし、もし国が喧嘩売ってくるならばっちこいだよ。
「ってか、やったの俺じゃないし。あの盗賊じゃん」
「ヴェガが来ましたよ」
うお。騎士の死体も含めて、綺麗さっぱり無くなってるじゃん。武器や防具は食べてないみたいだけど。
「そーれ。ヴェガ。脂の乗った美味しそうな餌ですよー」
「嬉しそうですね」
手をバンザイして喜んでいる。ここまで喜んでくれるとこっちまで嬉しくなってくるね。
ヴェガは人間が好きみたいだし、長期遠征で街に中々寄れない時の為に、死体をストックしておかないとな。
魔王の所に行く前にいくつか街を滅ぼしておくか。
「さて、俺は馬車の中でも漁ってくるかな。いかにも税金で贅沢してそうな奴らだし、それなりの物があるかもしれん」
「では、私は武器防具を検分しておきますね」
お願いしまーす。
まぁ、ウェインに渡したらおもちゃにするだろ。
鍛治とか早く覚えさせてあげたいね。
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