サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第五章 魔王討伐

第139話 ヴェガ

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 「たったらったった~♪」

 「キュンキューン♪」

 「ゴギャギャー♪」

 前世の歌を口ずさみながら、眷属全員で森を歩いている。珍しくウェインも影から出てきてるんだぜ。素材採取の為だけど。

 「なんで今日は歩きなんですか?」

 「飛ぶのに飽きた」

 次の目的地。エンペラー・リッチが根城にしていると言われてる『腐死の森』に向かって、約一ヶ月が経過した。
 大体の方向しか分かってないから、街道沿いを飛んで移動してたんだけど、ずっと飛んでるのは飽きる。やる事がなくて暇だからね。飛びながら魔法の構想を考えたりしてたけど、それもテレサ達と相談しながらの方が捗るし。

 「みんなもずっと影の中は暇かなと思って。どうやらそんな事はなさそうだったけど」

 「各々やりたい事をやってますからね。でも、いざ外に出てみると良いものです」

 グレースはここ最近インテリアに凝っている。
 主に馬車の中の模様替えだが。最早、前世のラブホより居心地が良い空間に仕上がってるんじゃなかろうか。行った事ないから知らんけど。イメージ的にはね。

 妲己とアシュラはチェスボクシングに似た遊びに最近ハマっている。
 チェスをして模擬戦をしてまたチェスをして。
 まぁ、ボードゲームはその時によって違うけど、これが中々新鮮で面白いらしい。
 俺も何度か混ぜてもらったけど、模擬戦はともかくボードゲームで勝てないからすぐ辞めた。
 疲労してる状態で、ただでさえ苦手なボードゲームで勝てるかってんだよ。

 ウェインは相変わらず実験。キメラの事後観察やら、ダンジョンコアの研究やらで忙しくしている。
 しかし、ダンジョンコアの仕組みを未だに理解出来ないらしく難航している。俺も前世のラノベ知識を教えたりしてるけど、それがどこまで役に立つのやら。頑張ってくれとしか言えません。

 テレサは最近、合成魔法の研究に力を入れている。この前の魔法が余程お気に召したらしい。いかに魔法で災害を再現出来るかを研究している。
 俺もノリノリで前世にこういった災害があったよと教えてしまった。いずれは災害の魔女とか呼ばれるようになるんじゃないかな。楽しみです。

 そして眷属新入りのキメラ。
 ヴェガと名付けた。最初は前世の悪魔から名前を頂こうと思ったんだけどね。
 悪魔ってカッコいい名前が多いんだ。候補を出しすぎて決められなくなってしまった。
 で、たまたま星を見てた時に前世でそんなのがあったなと思ってヴェガにした。
 カッコいいしね。無性だから男でも女でも大丈夫な名前としては良いんじゃないかと自負しております。

 「お前はいつになったら進化するのかね」

 「……(フリフリ)」

 ヴェガはレッサー・キメラから未だに進化していない。レッサーぐらいはすぐに取れるかと思ったんだけどね。結構な数の人間を殺したり、ここまでの道中でも飛び出してきた魔物は優先的にヴェガに倒してもらってるんだけどさ。
 その代わりと言ってはなんだが、感情表現はかなり豊かになっている。ボディランゲージで言いたい事がほとんど分かるくらいだ。
 今も大げさに手を横にやり、首を振って「分かりません」と言ってるように思う。
 身振りがコメディなんだよな。欧米のドラマを見てるみたいだ。




 「遠いなー。なんでこんなに離れてるんだよ」

 「魔王の縄張りですよ? 人間が住む場所からは離れていて当然です」

 歩きながら愚痴を吐くが、グレースの正論パンチにすげなくあしらわれる。
 そうなんだけどさ。ってか、この大陸が広すぎるんだよね。どれぐらい広いのやら。暇つぶしに地図でも作ろうかな。いつか役に立つかもしれないし。

 「測量なんて知識ないしな。ウェイン辺りにふんわり教えたらやってくれないかね」

 「難しい事になると、ウェインに投げればいいと思ってらっしゃいますよね」

 なんか良い感じにしてくれるかなって。
 なんか生産職の仕事っぽくない?

 「あ、オーク」

 「キュン!」

 「……!!」

 俺がオークを見つけると、妲己とヴェガが走り出す。妲己は大好物だし、ヴェガは大食漢だからな。マジでなんでも食べる。人間や魔物も見境なしだ。

 「キュンキューン!」

 「……(ダムダム)!」

 まぁ、よーいどんでヴェガが妲己に勝てる訳なく。先に仕留めて早速むしゃついてるのを見て、地団駄を踏んでいる。
 妲己は優しいから分けてあげるんだけどね。

 「オークってなんでこんなに美味しいんだろうね。俺はあんまり食べたいと思わないけど」

 「平民が少し贅沢をする時に振る舞われるのが、オークの肉ですよ。値段も少し無理をすれば買えるレベルですし。なぜ美味しいのかは分かりませんが」

 顔が気持ち悪くて食べようと思わないんだよね。
 血は飲むんだけど。前世でも俺は手羽先が苦手だった。なんか鳥肌を見ると、モロに鶏を食べてる気がして無理なんだよ。唐揚げは大好きなんだけど。

 
 「むん? なんか人が居た痕跡っぽいのがあるな」

 「火を消した跡でしょうか」

 道に迷いたくないので、比較的森の浅い場所を歩いている。街道は流石に全員で歩くには狭いしね。
 妲己はサイズ変更の足環でなんとかなるけど、アシュラとヴェガは大きいから。

 「こんな街からも離れた場所で野営の跡があるとなると…」

 「盗賊ですかね」

 やったぜ! 遊び相手を発見! 
 早く見つけて遊ぶぞと思っていたら、街道の方から叫び声が聞こえた。

 「ヒャッハー!!」

 「奪え奪えー!」

 「総員! 馬車に近付けるな!! なんとしても死守するぞ!!」

 遠見で確認すると30人ぐらいの盗賊が、いかにも高貴な人が乗ってますという馬車を襲っていた。

 ほほう。これはあれですな? 異世界のお約束とも言える展開ですな? わくわくしてきたぞ。
 
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