サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第四章 迷宮都市ラビリントス

第138話 いざ、次の目的地へ

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 「どっひゃー。すげぇな。所々凍ってる場所もあるじゃん」

 「【闇魔法】。興味深いの。これからは重点的に使って研究してみるの」

 迷宮都市ラビリントス。
 そこには既に何もなく、建物や死体すらない。
 全てがテレサの魔法に飲み込まれて、ただの荒野になっている。

 「キュキュ?」

 「【火炎魔法】だけじゃダメだと思うの。【闇魔法】か【重力魔法】を混ぜないとここまでの規模にはならないと思うの」

 「キュフスン」

 テレサは妲己に跨りながら、周りを見て回っている。普通に会話が成立してるのは凄いな。俺は未だにノリで会話してるんだが。

 「うーん。どうにか魔道具で再現してみたいんだぞ。でもあの規模の魔法を閉じ込めておける魔石が無いんだぞ」

 ウェインはキメラにだっこしてもらいながら、状況を確認している。
 都合良く足に使われてるね。キメラは満足そうだから良いけど。
 あ、そういえば、何体かキメラを残して比較実験する筈だったのに、結局テレサがまとめて吹っ飛ばしちゃったな。また今度作らないと。

 「これは流石に魔王バレするなぁ」

 これだけ被害を出したら、竜王も俺の事を教えるでしょう。どんな感じで報告されるのか気になるな。潜入して見てみたい気もするけど、ここから神聖王国はかなり遠いんだよなぁ。

 「どうなさいますか?」

 「予定は変わらん。次の目標は魔王討伐だ」

 勇者レト・ノックス一行による、邪悪な魔王討伐の旅が今! 始まる!

 「おのれ、魔王め! 首を洗って待っていろ! 僕の聖剣で世界に害を与えたお前に罰を下す!」

 「言ってて恥ずかしくないんですか?」

 「恥ずかしい」

 っていうか寒気がする。古今東西勇者も立派な異常者だから。なんであいつらは正当化されるんですかねぇ。
 あいつらだって、魔物は殺すじゃんね。虫唾が走りますわ。

 「よし! 長い長い迷宮編はこれにて終了! お疲れ様でした! 次は初の魔王戦だぞ!」

 「ここからレト様が飛んでも半年程はかかりそうですね」

 「ゆっくり行こうぜー。時間だけはたっぷりあるんだから。行く先々でユニークスキル持ちの誘拐とかもしたいなぁ」

 「都合良く見つかればいいですね」

 異世界にはご都合主義というのが存在してだね。
 一気に10人ぐらい見つかってもおかしくないと思うんだよ。俺がそんなに管理出来るかは別として。

 「ゴギャギャ?」

 「……」

 ウェインとキメラについて行っていた、アシュラが戻ってきた。
 ウェイン達も戻ってきて、俺に何かを訴えている。

 「あ、名前か。待ってな。今カッコいい名前を考えるから」

 キメラが物欲しそうな顔をしてたから、お腹でも空いたのかと思ったけど、後で名前をつけてあげる約束をしてたもんね。

 「うーん。俺、ネーミングセンスがなぁ」

 キメラっぽくて、カッコいい名前か。
 見た目は悪魔みたいなんだよなぁ。
 前世の記憶から悪魔の名前を引っ張ってくるかね。



 ☆★☆★☆★

 「猊下。北の竜王の元へ派遣していた部隊が戻りました。至急、共有すべき情報もあると。既に大聖堂には主だった枢機卿と大司祭は集めております」

 「ご苦労。すぐに向かう」

 祈りの間にて、いつものように祈っていた教皇の元に側仕えの人間が耳打ちする。

 事の発端は半年前。
 それなりに大きな国の迷宮都市が消滅したと報告受けてからだ。
 知らせを受けて、シュルペニア神聖王国は枢機卿と超越者の一人を派遣。
 それから程なくして戻ってきた枢機卿の報告では、消滅は比喩ではなく文字通り都市丸ごとが無くなっていたとの事で、教会一同は大いに驚いた。

 なんらかの魔法を行使した痕跡があり、災害ではなく人災と判断。
 未だに見つかっていない魔王の仕業も頭に入れて、教皇はすぐさま竜王の元へ貢物を持たせて超越者3名を向かわせた。


 「お待たせしましたな。役目で忙しい方もいることだろう。前置きは結構。早速本題の話に入ってくれ」

 教皇が大聖堂に入るとすぐに一行は頭を下げようとするが、それを手で制する。
 そして教皇の隣の席の中年男性が立ち上がり、一礼して話を始める。

 この男は教皇直属の超越者で、今回の迷宮都市への派遣や竜王との謁見を任された、教皇一番の側近である。
 不老という事で、既に四代に渡り教皇に仕えていて信頼も厚い。

 「まずは迷宮都市のお話から。消滅した都市、ラビリントスには迷宮が無くなっていました」

 「それはやはり…?」

 「伝承の通りかと。誰かが迷宮を攻略し、迷宮を移動させたものと思われます」

 「ふぅむ。まさか本当にその様な事が出来るとは…」

 現在、シュルペニア神聖王国が知る限りでは、迷宮を攻略した国や冒険者というのは存在しない。
 魔物の強さだけなら抱えている超越者でなんとかなるのだが、迷宮特有のギミックに手こずっており、未だに最終階層まで到達出来ていなかった。

 しかし過去に栄華を極めた大国では、100階まで攻略すると、迷宮を好きなように制御出来ていたという資料が残っており、神聖王国では迷宮攻略に力を入れてきた。

 「それで? 持っていったのは誰なんだ?」

 「当初は不明だったのですが、竜王の元へ行ったお陰で分かりました」

 「という事は…?」

 「えぇ。魔王です。竜王が捕捉したみたいです」

 「ま、魔王が迷宮を攻略して持って行ったと言うのですか!? い、いや、それよりも魔王が迷宮に!?」

 この報告には、教皇でさえも目を見開いて驚く。
 縄張りから出てこないとされている魔王が自ら動き、迷宮攻略をしたなどとても信じられるものではなかったからだ。

 「確定ではないですがほぼ間違いないかと。現在は移動してるようですが、それまでは迷宮都市に滞在していたらしいです。新たな魔王の種族は吸血鬼という魔物らしく、今までに発見例はありません。見た目は人とほぼ変わらないらしく、見極めるのは困難だと言っていました」

 「吸血鬼? 私も聞いた事がない魔物ですね。名前からして血を吸う鬼という事なんでしょうが…」

 「竜王も言葉を濁していましたね。良く分からないのか、言いたくないのか。それは定かではありませんでしたが。それと一応『個』の魔王らしく、戦闘能力は生まれて10年も経っていないのにも関わらず、かなり高いらしいです。恐らく、迷宮都市にいたS級冒険者も討たれていることでしょう。しかし、迷宮都市を崩壊させたのは魔王の眷属という存在らしく…」

 「眷属? 部下とか配下とかそういう事か? 本人の戦闘能力も高いのに、部下にも魔王みたいな奴がいるという事か。頭が痛くなってきたぞ」

 「これまで通り縄張りで大人しくしてくれれば良いのですが、今回出現した魔王は縄張りを持っていないようで、あちこち行ってるみたいです。竜王も捕捉し続けるのは骨だと言っていました」

 「以前、ネルフィム枢機卿がラビリントスに禁忌の件で赴いた時に、風貌は割れているとか。その男が魔王で確定かは分かりませんが、ほぼ間違いないでしょう」

 あまりの報告に議会は紛糾する。
 手を出さないようにしようにも、あちこちに出向かれては対処のしようがない。
 結局この日で話はまとまらず報告会は延長。
 教会内で魔王吸血鬼対策本部を作る事で一応の決着はついた。

 しかし何から手をつけるべきか分からず、担当する事になった超越者の一人は部屋の一室で苦悶の表情を浮かべていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 迷宮編しゅーりょー!
 長い間お付き合い頂きありがとうございました!
 マジで長くなりすぎちゃったぜ…。
 次の魔王編はもっとコンパクトにまとめられるように頑張ります!

 って事で次はVSエンペラーリッチですね。
 初の魔王戦はどういう感じになるのか。
 作者にも分かりません!笑

 作者は他にも作品を更新してますので、良ければそちらもご覧下さーい。

 ではではまた次章で~。
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