サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第五章 魔王討伐

第151話 深層へ

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 「相性がわるーい!」

 ギャインギャインと剣とブラッド・チェーンがぶつかり合う。
 相手のツイン・デュラハンという、なんか身体二つがくっついた首無し騎士と戦っている。
 因みに名持ちの魔物だ。幹部なんだろうなとは思っている。
 初めて戦った、レブナント・ディザスターとは比較にならない強さだ。

 しかし、俺もここで長い間戦っている。
 有用そうな戦闘技術はどんどんと取り込んで自分流にアレンジしてるので、今ではブラッド・チェーンの習熟トレーニングを出来るぐらいだ。

 「ブラッド・チェーンは無機物相手には有効に戦えないね。鎧相手には血も吸えないし」

 俺はブラッド・チェーンを体に収納して、【音魔法】を身に纏う。

 「鎧は振動ブレードで切断する物。古事記にもそう書いてある」

 相手の剣に手刀で対抗しつつ、少しずつ鎧を削っていく。流石に一撃で仕留めれる程は弱くないんだよね。

 「そんな時はこれ。ウェイン謹製の酸だぜ!」

 影から素早く試験管を取り出して放り投げる。
 ヴェガが毒を作れるようになってから、飽きていた毒薬を作るブームがまたやってきたらしい。
 隙を見て実験してほしいと言われていたので、せっかくの機会だし試してみる。

 「いまいちだな。効いてないって事はないけど」

 ちょびっと溶けたぐらいか。まぁ、そこを重点的に狙えば良いでしょう。

 その後、体術の練習をしつつ戦闘終了。
 幹部も練習相手にしかならなくなってきたな。

 「進化しなくても強くなれるのは良い事だ。武芸者の気持ちが分かってきたかもしれん」

 強くなるのは楽しい。出来る事がどんどん増えていって毎日試行錯誤している。
 これからももっと頑張ろう。

 「さてさて、他の面々はと」

 妲己とアシュラは問題ないね。遊んでるぐらいだ。アンデッドには妲己の必殺技は効果が薄いらしい。だから、魔法を使って色々やっている。
 テレサの魔法に感化されて、最近は広範囲魔法に凝ってたみたいだけど。
 今は別の名持ちのアンデッド相手に、ちまちまと【雷轟魔法】を撃っている。

 アシュラは【戦闘学習】で学ぶ為に、手加減をしつつ技術を盗んでいる。
 グレースが最近追い上げてきてるから、負けてられないんだろう。
 最初、眷属にした時はサボり癖もあったのにな。

 ヴェガはまだ単体で幹部を相手取れるほど強くはない。こいつも【戦闘学習】は持ってるので、段々と強くはなってきているけど。
 今はテレサと二人一組で周りのモブを倒し回っている。テレサは前衛がいるからかなりやりやすそう。

 「……ぐしゃっと」

 魔法名は相変わらず。俺が一々名付けるのも違う気がするんだよな。自発的にかっこいい名前を言ってくれないもんか。
 今も【星力魔法】で押し潰すのをそのまま言っている。厨二力が足りてないね。



 「魔王が見当たらん」

 「名持ちの魔物は多く出てくるようになったんですけどね」

 いつもの様に影の中にて。
 妲己、アシュラ、グレースで麻雀をしながら話をする。

 「戦いながら【魔眼】で探してるんだけどな。ここは遮蔽物が多すぎて、なかなか遠くは見れないんだよ」

 「鬱蒼とした森ですからね。仕方ないかと」

 一気に飛んで奥まで行ってやろうかと思ったんだけどね。何故か俺達が侵攻してるのを、魔王はスルーしてるっぽいし。
 ここにいる経験値が勿体無いから、律儀に倒して行ってるんだけど。

 「奥行くに連れて、禍々しい魔力の圧は強まっています。何処かにいるのは間違いないでしょう」

 「気持ち悪い魔力だよな。瘴気みたいだ」

 アンデッドがそういうのを出してくるのはお約束だよね。
 俺達には効果がないみたいだけど。魔物だからかしらん?

 「あ、ロン。1000点」

 「キュ…」

 ふはははは。待望の親番を六巡目で流してやったぜ。苦虫を噛み潰したような表情がたまりませんな! レト君のウインクをプレゼントしてあげよう。はい、ばちこん。

 「このペースで行けば後半年もしないうちに、ここを制覇出来るぞ。なんで魔王は動かないのかね」

 「動きたくても動けないとかでは?」

 「え? 魔王さん、他にも戦線を抱えてたりするの? そんな気配ないけど」

 妲己にばちこんとウインクをお見舞いしつつ、ジャラジャラと牌を卓に流す。
 尻尾で頭をペシペシしてくるが、勝ってるからなんとも思いませんな。

 「いえ、容易に動いてはいけないルールがあるとか。レト様は上位存在から好きにして良いと言われてますが、他の魔王はどうなんでしょう。何かしらのルールがあってもおかしくはないと思います」

 「ルールねぇ」

 なんじゃこの配牌は。クソ過ぎるだろ。

 「魔王全員に上位存在が接触している可能性がありますよね。そこで何かしらの啓示があったとか」

 「そんな素直に従うもんなの? 進化したら知能が高くなるとはいえ魔物だよ?」

 喋りながら目の前の山をぶっこ抜く。
 相変わらず惚れ惚れする手捌き。山を取りやすく動かすフリをして、端と端を入れ替えていく。

 「いえ、あくまで仮説ですので」

 「ふーむ。分からんなぁ。っていうか、普段から縄張りで大人しくしてるのも謎だよね。暇じゃないのかよ」

 おやおや。調子に乗り過ぎて聴牌してしまったぞ。妲己をチラッと見てみると、手が良いのだろう。微妙に尻尾が動いている。
 こいつ、麻雀に向いてないのでは? ある程度自制出来るとはいえ、尻尾で調子がわかっちゃうぞ。

 「まっ、その辺は魔王に会って聞いてみるか。素直に教えてくれれば良いけど。リーチ」

 「キュン!?」

 くひひひひ。このダブリーで息の根を止めてやらぁ。今日も俺の勝ちで終われそうだぜ。

 「あ、私もです」

 「ゴギャ」

 「キュキュン!?」

 なんとグレースとアシュラも二巡目で追いかけリーチ。妲己の顔が面白過ぎる。

 結局その日も俺の勝ちで終わった。麻雀卓では一人真っ白に燃え尽きた妲己が項垂れていた。
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