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第1章 高校生活
第11話 ピッチャー達
しおりを挟む「なんだこれ? こんな機材昨日までなかったぞ?」
「今日運び込んでもらったのよ。これで隅々まで調べるからね」
室内練習場に入ると、ブルペンの所に色々な機材があり、俺の死後の恋人トラッキングマシンちゃんもある。
「じゃあ、3年生の吉見君からやっていきましょうか。豹馬ちゃん、手伝ってちょうだい」
ちゃん付けは辞めておくんなまし。
それから、カメラやトラッキングマシンを使ったフォームのチェックから始まり、ストレートの回転率や回転方向を調べ、サーモグラフィーにやる肉体の内部の筋肉の動きを調べる。
俺以外の選手は初めての事ばかりで最初は戸惑っていたが、徐々にのめり込む様に色々と調べていった。
分かる分かる。
なんか色々数値化させてはっきり見るといいよね。
これでみんなもトラッキングマシンに虜だぜ。
2時間程かけて、全員分調べ間食しながら話を聞く。
「はい。じゃあ見てもらったら分かると思うけど、みんなこれだけ体を無駄に使ってるって事がわかったかしら? 豹馬ちゃんの記録を見てもらったら分かると思うけど、この子は中学に入った頃からこの機材を使って、フォームをいじったり微調整したりしてるわ。だから無駄に使ってる筋肉は少ない。トルネード以外はね」
「ト、トルネードはロマンだから!」
どれだけ無駄だと言われようがトルネードだけは辞められねぇ。
だってかっこいいんだぜ。
気持ち的には捻って上手く上体の力を伝えられてると思ってるんだ!
「はぁ、まあいいわ。どれだけ言っても辞めないんだもの。とりあえずみんなは、今からシャドーでフォームを軽く弄るわよ。ただ、金子君と三井君はまだほんとに軽くね。まだ筋肉量が足りてないから、理想のフォームには出来ないわ。吉見君は3年生だけあって及第点だわ。2人はこの1年身長は伸びてるかしら?」
吉見先輩は3年生のピッチャーである。
言っては悪いがTHE平凡である。
「俺はもう1年の頃と、ほとんど変わってません」
「俺は10cm以上伸びてます」
「三井君はそろそろ本格的に筋力アップしても良さそうね。明日迄にメニュー考えるわ。金子君はまだもう少し伸びそうね。まだ過度な筋トレは避ける事。わかった?」
「「はい!」」
「金子君は焦る事はないからね。豹馬ちゃんを見てみなさい。針金みたい体でしょ。まだ身長が伸びてるからまともな筋トレが出来ないの。筋肉なんて後からいくらでも付けられるんだから我慢するようにね。成長を阻害して怪我なんて馬鹿がする事だからね」
針金とはなんだ!
後10cmぐらいは伸びる予定なんだから仕方ないじゃないか!
これでも、家にあるジムのプールで全身運動をしっかりしてるから筋肉皆無って訳でもない。
それから、シャドーピッチングで鏡を見ながらフォームを微調整していく。
「ここ。もうちょっと脇を締めて絞るように」
「ちょっと窮屈なぐらいがいいんだよ」
「そうそう。そのまま真っ直ぐね」
俺と母さんで指導しつつ、トラッキングマシンでチェックする。
すると、目に見えて結果が出てくる。
まずコントロールと球速が微上昇した。
「ふむ。こんなところかしらね。とりあえずこれでフォームを固めてみて」
すぐ出来る所としてはこんなもんだろう。
「三井君は緩急を取れる変化球が欲しいわね。チェンジアップかカーブでどうかしら?」
「カーブは上手く抜けないんすよね」
「なら、チェンジアップかしらね」
「そうすね。チェンジアップも抜けるか心配ですけど」
「豹馬ちゃんに聞いてみなさい。金子君にカーブのアドバイスを聞いてもう一度チャレンジするのもありよ」
「そんな簡単に教えてくれるもんですか?」
「金子君は分からないけど、豹馬ちゃんは簡単に教えてくれるわよ。シニアの時も他の子に教えてたから」
「わかりました。聞いてみます」
吉見先輩と金子君に俺のナックルカーブの投げ方を教えていたら三井先輩がやって来た。
「豹馬、チェンジアップを教えてくれ」
「チェンジアップ? あぁ、なるほど。確かに今の三井先輩に緩急があったらめっちゃレベルアップしますね」
「あぁ、頼めるか?」
「勿論です。まぁそんな難しく考える事も無いと思いますけど。ぶっちゃけ、腕の振りが同じで速度落とせればなんでもいいんですよ。俺は指をOKマークにして投げてますけど、鷲掴みでも親指と小指だけで投げてもいいと思います」
「なるほど。とりあえず色々試して投げてみるか」
「はい。もう一度言いますけど、重要なのはストレートと投げ方が変わらない事。それでいて速度が落ちる事。後は自由って感じです」
「わかった。ありがとう」
「いえいえ! なんでも聞いて下さい!」
そしてその後、ピッチャー陣で変化球談話で盛り上がり初日の活動を終えた。
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