未冠の大器のやり直し

Jaja

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第3章 秋までの道程

第58話 来訪

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 合宿最終日。
 練習試合は龍宮高校で行われる。

 「来やがったなー。厨二病イケメンめ」

 朝早くから専用バスでやって来た松美林一行。
 バスから降りて来た一際輝いているイケメンに視線を向ける。

 「久しぶりって程、日が経ってないけど久しぶり、豹馬君」

 「お久しぶりです。今日はありがとうございます」

 離れた所では、監督同士挨拶をしている。

 「怪我は大丈夫なの? 三井君もだけど」

 「俺はもう8割完治ってとこですね。キャプテンはまだギプスも取れないです」

 この季節だ。さぞかし蒸れてる事だろう。
 俺は毎日固定バンドを外してたからマシだったけどそれでもきつかったからね。

 「そうなんだ。僕達も試合見てたけど、残念だったね。もう少しだった」

 「勝ちたかったですね、三高には特に」

 霊山がいる所には負けたくなかったね。

 「それで…僕はなんでそんなに睨まれてるのかな?」

 「えぇ、なんでも? 夏の大会が終わってから? 彼女が出来たって? 聞きましたけど?」

 「え、うん。出来たその日に豹馬君に連絡したと思うけど…」

 えぇえぇ。連絡来ましたとも。
 最初はマウント取って来たのかと思ったけど、厨二病を除けば欠点の無いこの男に彼女が居ない事の方がおかしいよねと、自分を持ち直したんだ。
 でも彼女と一緒に写ってる写真を見せてもらってからはどうしても許せなかった。
 なぜなら、白馬君の彼女俺の好みど真ん中だったからだ。
 めちゃくちゃ美人。
 死ぬほど羨ましい。
 だって付き合った経緯は俺達の試合見て惚れたらしいぜ?
 そこは試合に勝った俺達に惚れる所じゃないの?
 あー妬ましい。

 「嫉妬ですよ! 嫉妬! 言わせんな、恥ずかしい」

 「いや、豹馬君もモテると思うけど」

 うるせー!! なんか一方的な被害妄想で申し訳ないけど寝取られた気分だわ。

 「とにかく! 今日も負けませんよ! 合宿の成果をみせてやりますよ!」

 チームメイトがね!
 俺が投げてけちょんけちょんにしてやる事が出来たらどれだけ良かったか。
 今日程投げたいと思った事はないかもしれん。

 「僕達も大会が終わってからきつい練習してきたからね。そう簡単には負けないよ」

 くっそ、聖属性め。
 俺がどれだけ呪詛を吐こうとも浄化してきやがる。
 なんかもうキラキラしてる。
 これがモテる男とモテない男の差なのか。

 「じゃあ軽くアップしてから始めましょうか。1時間後ぐらいからスタートでいいです?」

 「そうだね、そんな感じで伝えとくよ」

 俺は白馬君と別れ、みんなの元に向かう。

 「金子、大浦! 今日は絶対負けられないぞ! お前達が白馬君を抑えれるかどうかにかかってるんだ! 頼んだぞ!」

 「いや、きついんじゃないかな…」

 「即席ピッチャーで抑えれるほど甘くないと思うっす」

 そこはなんとかしてくれ。
 この迸る熱いパトスを抑えるには白馬君が無様に三振する所を見るしかないんだ。

 
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