未冠の大器のやり直し

Jaja

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第4章 秋の戦い

第87話 VS関東一高1

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 「ふんふんふーん」

 「テンション高いね」

 そりゃもう。
 久々の先発マウンドですから。
 龍宮は後攻だからまっさらなマウンドだぜ。

 「出会い頭のホームランとか求めてないからね」

 「嫌な事を思い出させるなよ。今日は前回よりも調子良いから大丈夫だって。出力ギリギリの力加減も分かってきたし」

 「前回も似た様な事言って打たれてるんだよ? 信用出来る訳ないじゃん」

 辛辣~。
 でも俺のせいなので言い返せない。

 「まあ、とりあえず今日はストレート中心で頼むよ。隙を見て、最近試してる変化球も投げるけど。ストレートをもっと磨きたいんだよね」

 「関東一高相手に舐めプする気?」

 「舐めプは言い方が悪い。実験だよ。ストレートの平均回転数を上げたいんだよね。ギアを上げたストレートは打たれる気がしないから、それをいつでも投げれるレベルに持っていきたい」

 「あれ、手首に負担がかかるんじゃないの?」

 「だから色んな投げ方を試そうかと。実戦での経験は得難いものがあるしな」

 「まぁいいけど。点取られそうになったらリード変えるからね」

 それはそう。
 負けたら元も子もないしな。
 チームの勝利と俺のレベルアップ。
 両方取りの欲張りセットを狙います。

 一回表の関東一高の攻撃。
 俺はストレートとチェンジアップのみで、三振二つと内野ゴロで三者凡退に抑えた。

 「うーん、イマイチ? ストレートが毎回無茶苦茶だから相手が戸惑ってる感じ」

 「仰る通りでございます」

 手首の角度を調整したり、指先の切る感覚を微調整したりしてるんだけど。
 どれもこれもしっくりこない。

 「球速自体はそれなりに出てるから抑えられてるけど、この調子じゃそのうち捉えられるよ」

 「すみません。精進します」

 タイガさんは辛口評価でありますな。
 期待の裏返しとポジティブに考えてますが。
 

 裏の龍宮の攻撃。
 先頭はお馴染みのウルから。
 最近は内野安打を量産して打率を上げてきている。
 本人もパワー不足と割り切って、このスタイルにしたらしく、ファールで粘って球数を投げさせたりと嫌らしいバッターになっている。
 これでパワーがもうちょっとついて、強い打球が打てる様になってきたらどうなることやら。

 しかし、この打席は7球目を見逃して三振。
 ウルは確信を持って見逃してたっぽいけど。

 「あの審判。外のゾーンがかなり広いよ。くさい所はカットしないとダメだね」

 「えー。俺が投げてた時はそんな事無かったけどな。むしろちょっと狭く感じたけど」

 帰って来たウルが納得いかなそうに話してくるけど、俺が初回投げた感じでは狭くてめんどくさい心配だなーって思ったんだけど。

 「そう? 僕の勘違いかな?」

 「うーん。どうだろ。俺も次の回はちょっとチェックしてみるけど」

 そう言いながらタイガの打席を見てると、外のボール球を引っ掛けて内野ゴロに倒れていた。

 「ウルが外のゾーンが広いって言ってるけどどうだった?」

 「広い。広すぎる。ボール一個は絶対に広い。あれはダメだよ」

 タイガがプンプンしながら感想を言ってくる。
 タイガもそう感じるなら、ウルの勘違いって事はなさそうだなー。

 「俺の時は狭く感じたんだけど?」

 「うん。ちょっとおかしいよね。次の回はちょっと球数使って確かめてみよう」

 「あいあい」

 そして、3番のレオンも見逃し三振。
 無表情で特に気にしてなさそうだけど、レオンが見逃し三振なんておかしいだろうよ。
 こいつの選球眼はチームでも随一だぞ。

 もしかしたら今日は審判との戦いになるかもしれんな。
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