異世界に転生したので裏社会から支配する

Jaja

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第2章 抗争

第28話 依頼主

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 「商会さんいらっしゃーい」

 「ほんとに潰してきたんですね」

 ラブジーが一番取引している商会を潰してきました。それなりに大きな商会で説得に手間取ったけど。

 「色々考えたんだけどさ。戦況は膠着しちゃってるし、何かアクションを起こさないと泥沼になるかなと思って」

 「結構な人数ですね。連れてくるのに苦労したのでは?」

 「下っ端達は拉致に慣れてきたね。俺達の縄張りが比較的表通りに近い事もあって、多分バレずに連行出来たと思う」

 「もう契約済みですか?」

 「うん。鑑定もしてある」

 俺も契約からの鑑定の流れに慣れてきたよ。
 人数が多くて魔力が足りるかが心配だったけど、ギリギリなんとかなったな。

 「ほう。ヒューマンにしては中々」

 俺が渡した資料を見て、独り言の様に呟くカタリーナさん。
 ほんと、無意識レベルで他種族を下に見てるよね。エルフの教育のせいかしらん?

 「今回攫ってきたお陰で五十人近く人員が増えたな。戦闘職の奴も居るけど、今まで商会で働いてたからズブの素人だけど」

 「戦闘職は訓練に混ぜて、その他は教育者の方に回ってもらいましょう。読み書きが出来るだけでも、現状では即戦力です」

 そうするか。カタリーナの下にも何人か付けて、資料を纏めるのを手伝ってもらうか。
 クトゥルフも大きくなってきたけど、書類処理とかは、未だに俺とカタリーナでしてきたからな。
 これで少しは楽になってくれると思う。

 「商会長はホルトの指導をしてもらうか。商人のイロハを叩き込んでもらおう」

 「あの子は賢いですからね。すぐに吸収してくれる筈です」

 都合の良いことに、商会長の職業も商人だったんだよね。将来的な能力値はホルトの方が上だし、恩恵持ちでもないけど、それなりに大きな商会を経営してたんだ。
 ホルトにとっては良い教師になるだろう。

 「ふむん。これで人員不足もかなり解消されたな。最初からこうしておけば良かった」

 「いえ、今回増えたのは主に内務関係ですからね。裏組織でのし上がろうと思うなら、やっぱり最終的には暴力が必要です。戦闘員も補充しませんと」

 そうだね。おっしゃる通り。
 レーヴァンをまとめて取り込みたいなぁ。
 俺ももっと強くならないと。ボスがへっぽこでは部下に示しがつかないしね。
 最近は配下育成の為に控えめにしてたけど、ちょっと経験値を分けてもらおうかな。

 でもなぁ。それ以上に考えないといけない方があるんだよねぇ。

 「カタリーナを探してるのは領主なのか」

 はぁ。めんどくさ。

 ☆★☆★☆★


 「ボス! やべぇっす!」

 「なんだぁ?」

 ラブジーの本拠地の屋敷にて。
 豪華だった部屋は見る影もなく、閑散とした部屋でボスとNo.2のアハムが話し合っていた。

 「脅してた商会が消えちまいました!」

 「あぁ? 一体どういうこった?」

 お金やら装飾品やら武器やらをまとめて盗まれた為、いつも取引をしていた商会に後払いで物資を脅して補給していた。
 勿論、今の抗争が終わればきちんと払う気で居たのだが、無い袖は振れない。
 戦況が落ち着くまでは脅して無理矢理補給しようとしていたのだが。

 「朝、商会に行ったらもぬけのからになってたんすよ! 人もいねぇし商品も丸々無くなってたみたいっす」

 「なんだとぉ!?」

 ここ最近のラブジーはかなり厳しい立場に立たされている。
 レーヴァンとは相変わらず小競り合いを繰り返しているし、屋敷を襲ったと考えている中堅組織も中々に粘っている。
 どちらかを早くて終わらせて集中したいのだが、他の組織が虎視眈々と介入する隙を見計らっているという情報もある。
 大きく動きたくても動けない状況に、ボスはかなりイライラしていた。
 そんな時にこの報告である。
 ボスは誰かに操られてる気がしてならなかった。

 「どこかが襲ったのか?」

 「いえ、戦闘の跡はほとんど見当たりませんでした。夜逃げした可能性もありますね。ちょっと脅しすぎましたか」

 「お前、衛兵に何人か知り合いがいるだろ。情報を聞いてこい」

 「うっす」

 部屋から出て行ったアハムを見送り、ボスは一人で考える。
 どのようにして、この状況を脱するか。

 (レーヴァンを疎んでる奴らを纏めて連合を作るか…。それか、多少の犠牲を覚悟して中堅組織の方を集中して叩いてから、レーヴァンに当たるか)

 武器や薬の補充もままならないので、最近はかなり死者が出ている。
 スラム最大数を誇るラブジーでも、看過できる数字ではなかった。

 「ちっ。依頼人もうるせぇしよ。今はエルフなんて探してる場合じゃねぇんだよ」

 連日の様に商会経由で依頼人からエルフはまだかとせっつかれている。
 しかし、地下水道を粗方探しても見つからなかったし、スラムでもまったく目撃情報がない。
 ボスは既にこの街から出ていると考えていた。

 「次の報告の時にもうこの街にはいねぇって報告するか」

 しかし、その日からラブジーの元に連絡員が来る事は無かった。
 どこぞのちんちくりんが、連絡員を務めていた商会を潰してしまったからだ。
 この影響が今後どうなるか。
 それはまだ誰にも分からない。
 
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