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第2章 抗争
第29話 ベルリン
しおりを挟む「スパンダ帝国辺境伯ベルリン・ペテスねぇ」
「会った記憶が無いのですが…」
街中で一目惚れしたとかじゃね?
カタリーナ美人だもん。ムネタイラ国務長官だけど美人だもん。
「エルフという種族なのでこの胸は私の発育が悪い訳ではありません」
「俺、何も言ってないよね?」
誰もまな板なんて言ってない。
だからそんなに睨まないで。ナチュラルに心を読むのはやめなさい。
「てい! てい! ていやー!」
「痛い痛い痛い」
今、俺の部屋には、俺とカタリーナとローザがいる。
ホルトとエリザベスは別の場所にて勉強中だ。
ホルトは商会長だった奴に直々に教えてもらっていて、エリザベスはまずは文字の読み書きから。
それが終われば錬金術の基礎を教える。
俺が一旦錬金術師になれば、情報を叩き込んでもらえるからな。
それである程度はなんとかなるだろう。
後は、独学でなんとかしてもらわないとだけど。
で、問題はローザ。
一応、文字の読み書きの勉強もしてるんだけど、とにかく落ち着きがない。
今も、部屋の中で木剣を振り回している。
戦闘職の訓練が余程楽しいらしい。
「レイモンドも一緒に訓練するー?」
「落ち着いたらね」
今は魔法だけで充分。
組織作りに忙しくてまだ訓練する時間が取れないんだよな。
「ローザは筋が良いなっておっちゃんに褒めて貰ったんだよー!」
「将来は最強の剣士になるかもな」
「うっきゃきゃ!」
雑に頭を撫でてやると、子犬の様に喜ぶローザ。
本当に狼なんですかね? プードルとかじゃないよな?
「でも部屋の中では危ないから、木剣は振り回さないようにな」
「はーい!」
返事をしながら素振りを始めた。
全然分かってないじゃん。…まぁ、いいや。
「領主が狙ってるとなると、この街にいる限りは狙われるよなぁ」
話を戻して、領主が依頼人だった事について。
「恐らくそうですね」
なんだよ。平民を見下してるんだろ?
それなのに、平民に懸想してるんじゃないよ。
面倒臭いったらありゃしねぇ。
「うーん。これはクトゥルフの長期目標は領主の殺害って事になるなぁ」
参った参った。
とりあえずこのスラムで成り上がろうと思ってたのに、急に難易度が爆上がりしちゃったぜ。
「どうせなら領主も上手い事巻き込んでやろうかなぁ。うーん」
「てーい!」
「あいた」
部屋の中でやるのはいいけど、俺にぶつけるのはやめてくれ。
契約さん仕事してますか? レイモンド君が害されてますよ?
「よし。決めた」
領主の問題に頭を悩ませながら数日。
馬鹿な頭を使って必死に考えました。
「領主とレーヴァンをぶつけよう」
「出来るんですか?」
それはやってみないと分かりませんな。
領主が馬鹿だったら引っ掛かってくれると思うんだけど、どうなんだろ。
平民エルフに必死になってる所をみると、決して賢い奴だとは思わないんだよね。
「問題は領主がどれだけカタリーナに固執してるかだよね。こればっかりはカタリーナの美人さに懸かってる」
「? 私が何かするんですか?」
「いや、噂を流すだけだけど」
闇組織レーヴァンがエルフの美女を裏オークションに出そうとしてるとでも流そうか。
「それだけで領主が動きますかね?」
「一番だるいのは、それでオークションに参加しようとする動きだな」
俺の理想では怒って兵でも差し向けてくれたら嬉しい。
領主軍がどれだけ強いのか知らないけど、辺境の魔物からの守護を任されてるんだ。
そんなに弱いって事もないだろう。
「ふむ。ラブジーがエルフを確保してたのに、お金目当てでレーヴァンが奪った事にするか」
「すぐにバレるんじゃありませんか?」
いやー、俺の予想だと領主ってスラムの情報とか集めてるとは思わないんだよね。
平民は見下してるらしいし、スラムの人間なんて人と思ってなさそう。
連絡員を務めてた奴に報告に行かせれば、それなりに信じるんじゃないかなと思うんだよね。
「まぁ、そこまで上手くいかないか。少しでもレーヴァンの動きが鈍って、その隙にラブジーが盛り返してくれれば」
それだけでもやる価値はあるだろう。
こっちは噂を流すだけで、そんなに労力がかかる訳じゃないし。
「サギ男に働いてもらうか。今回はちょっと過酷なミッションになるけど」
もう少ししっかりと作戦を練るか。
ラブジーとレーヴァンがお互い再起不能になるぐらいまで弱ってくれたらそれで良いんだ。
俺達はそこを上手い事利用して、一気に成り上がってやる。
「やっぱり戦闘力が欲しいな。うちはぶつかり合いになったら大抵不利だし」
「まだまだ寄せ集めですからね」
「下っ端戦闘員に魔法が使える様にするか?」
「難しいところですね…」
すぐにモノになるんだろうか。
俺は前世の記憶のお陰でイメージでなんとかなってるけど、この世界の住人はどうなのか。
「何人かに教えて実験してみるしかないな」
「魔法に頼り切りにならないといいのですが…。ようやく武術の基礎が身に付いてきたところですし」
それな。だから俺も教えないようにしてたんだけど。でも、背に腹はかえられない。俺が噂を流し始めると、どこの組織も大きく動く可能性がある。
少しでも戦闘力を上げとかないと、俺達が飲み込まれてしまう。
自分達が流した噂のせいでやられるとか笑い話にもならんぜよ。
「まぁ、魔法に頼り切りは俺が言えた事じゃないな」
武術なんて全くのノータッチだし。
仕方ないんや。忙しいんやで。
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