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第2章 抗争
第34話 進軍
しおりを挟む「凄い人数だな」
「それだけ本気という事なんでしょう」
領主がスラムへの進軍を開始した。
煌びやかな鎧をつけた騎士達が我が物顔でスラムに押し入ってくる。
「手を出してきそうな雰囲気はないか」
「流石に建物に押し入ってまではこないでしょう」
俺達は進軍を開始したと同時に全員縄張りの建物内に避難している。
一応戦う準備もしていたけど、杞憂に終わりそうだ。
縄張りの宿屋の木窓から進軍してる様子を眺める。騎士や衛兵は気合い充分といった感じで、かなり張り詰めた空気を醸し出している。
「見た感じ極端に強いって奴は見当たらないな。カタリーナより強いのはチラホラいるけど」
「私はここ最近引きこもってますからね」
なんかちょっと張り合ってきた。
人間より下ってのが許せないんだろうか。
「レーヴァンに勝てるのかねぇ」
「これだけの数を投入するのです。勝たないと不味いでしょう」
動員された数は500を超えている。
今のラブジーよりも多い。以前はそれぐらい居たらしいけど、ここ最近の抗争で人数を減らしてるらしいからな。
「さてさて。俺もそろそろ動くかな」
「お気をつけて」
領主軍がレーヴァンに勝ちそうだけど、勝ってもらっては困る。
良い感じに弱った所でラブジーに襲われてくれないと。
「そっちも頼んだぞ」
「万事お任せを」
俺達クトゥルフは領主軍とレーヴァンの戦いが終わりそうになる頃に一つの組織に襲撃をかける。
ラブジーとの緩衝地帯として残しておいたけど、奇襲するのに邪魔になりそうだから。
人員は確保出来たらって事で、基本的には皆殺し方針。
俺が不在で心配だけど、今回はカタリーナも出るから。回復出来るしね。
一応正体はバレないように変装してもらうけど。
戦いが始まった。
レーヴァンも情報は持っていたんだろう。攻め入った領主軍に当然反抗している。
俺と少数の護衛達は少し離れた酒場兼宿屋を制圧して、そこから戦況を眺めている。
ここはレーヴァンの縄張りだが、今はこっちに構ってる暇はないだろう。
「レーヴァンつえー」
「いや、領主軍が弱いんじゃないですかい?」
そうとも言う。数が多いからなんとか有利っぽいけど質が全然違う。
流石武闘派組織と言われてるだけあるね。
「おっ。魔法使ってる奴もチラホラいるな」
「領主軍は貴族の次男三男が多数所属してるでしょうしね」
辺境伯は軍を持つ事を許されてるらしいからな。
人気な就職先なんじゃなかろうか。国軍には劣るだろうけど。
「これならドサクサに紛れて魔法使っても大丈夫そうだな」
「一応確認なんすけどバレたら即逃げっすよね?」
「うん。ラブジーの縄張り方面に逃げる感じで」
今の俺達はラブジーの格好をしている。
黄色いスカーフを口に巻いて、一昔前の日本で流行っていたカラーギャングみたいな格好だ。
「とりあえずレーヴァンの数を少し減らしてみよう」
今は領主軍が数で押してるっぽいけど、まだボスの姿が見えないんだよね。
幹部っぽいのはチラホラいるけど、指揮を取ってるだけで積極的な戦闘参加はしていない。
まだまだ余裕がありそうに見えるんだよ。
「レーザー×5」
チュンという小さい音と共に俺の指先から光の光線が放たれる。
日々の練習のお陰と職業を魔法使いにしてるお陰で、かなりの速度になっている。
しかも魔力操作に慣れてきたからか、極細のレーザーになっていて、判別するのも難しい。
これが足とかを貫いても致命傷にはならないが、急所なら話は別だ。
五本の光線はレーヴァンの下っ端を三人捉える。
そして、頭を貫かれた二人は死亡した。
一人は当たりどころが良かったのか、まだ生きているけど、領主の兵にやられそうだ。
「よしよし。バレてなさそう。この調子で戦況をコントロールしていこう。お前達は周囲の警戒を怠らないようにな」
「了解っす」
俺はそれから隙を見てバレないように、両者の数を減らしていく。
レーヴァン陣営も数の多さだけはどうしようもないのか、幹部達な戦闘に参加し始めた。
「うーん。強い。レベルも能力値も今まで見た中でもダントツだ」
Bになってる能力もあるし、職業がマッチしてる人も多い。レベルも60超えがチラホラと。
「それにしてもボスが出てこないな」
「アンジーという名前しか分かってないんすよね」
「そう。だからお偉いさんっぽいのは逐一鑑定してるんだけど。それっぽい名前の奴もいなし」
アンジーが本名なのかも分からないけど。
まぁ、それはさておき。
戦況もあったまってきたのに、未だにボスは見えない。武闘派組織のボスなら喜んで突っ込んで行きそうなもんなのにね。
「アンジーって男なの? 女なの?」
「知らないっす」
どっちでも取れそうな名前なんだよね。
性別すら不明とは。やっぱり情報機関の設立が急がれる。
良い感じの職業の奴はいないかな。
「レーザー×5」 「レーザー×5」
両手の指十本から光線を撃つ。
ボスが居ない事に気を取られてたけど、領主軍が押し始めてる。
やはり数は偉大だな。戦いは数だよ兄貴。
って事で少し減らします。
「なんかボスの魔法はあれっすね。指一本から出すとカッコいいのに、全部から出すとダサいっすよね」
「ぶっ飛ばすぞ」
急に馬鹿にされたので、護衛の下っ端をしばく。
いつもの騎士の男は、今はカタリーナの側にいる。あっちも襲撃するからね。
こっちだけに人員を割く訳にはいかない。
「こっちはなんとかなりそうだな。あっちも上手い事いけばいいけど」
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