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第2章 抗争
第35話 カタリーナの初陣
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「ラブジーが動きそうっす」
「では私達も始めましょうか」
ボス、レイモンド様が居ない中での戦い。
大半の戦力はこちらに残してくれましたので、恐らく何とかなるでしょう。
私がレイモンド様に拾われてから、初めての戦いです。実戦は久しぶりですが、しっかりと勝ちをもぎ取らなければなりません。
「私達を信用して出来ると仰って下さったボスに応えますよ」
「うっす」
私達の仕事は、ラブジーとの緩衝地帯として残しておいた二十人程の組織の襲撃。
万が一ラブジーが攻めてきた時の、時間稼ぎの盾として置いてましたが、スラムの戦況は刻一刻と変わっていきます。
レーヴァンが領主軍に攻められてるという事で、ラブジーは弱った所を叩こうと出陣準備をしているみたいです。
このチャンスは逃せないとばかりに、ほとんどの人員を招集してるらしく、こちらの事は気にもかけてない様子。
襲撃するには良いタイミングでしょう。
「全員配置につきやした」
「ラブジーが出て行ったらすぐに始めますよ」
縄張りを警備する人員を除き、殆どの人間が小さい組織のアジトを囲みます。
その数は50人以上。過剰戦力かもしれませんが、万が一にも失敗する訳にはいきません。
「ボスからいつも言われてる通り、油断せずに複数人で囲んで叩きなさい。どんな弱者でも必ずです。徹底しておくように」
「了解っす」
私達の組織クトゥルフは急激に大きくなった弊害で数も質も足りてません。
こんな小さな組織で人的資源を失うなどあってはならない事。
出来ればこの組織もまとめて契約したいところですが、果たして抗戦してくるのか。
戦わずに白旗を上げてくれれば楽なのですが。
「姉御」
「開戦です」
それから約2時間。
ラブジーが動いたのを見計らって、抗争開始です。襲撃されている組織は、囲まれてるのが分かってたのか、アジトに立て篭もり徹底抗戦の構え。
「風の精霊よ」
入り口に建ててあったバリケードを私は吹き飛ばす。精霊に魔力を渡すだけでこれだけの戦果が得られるのはエルフならではでしょう。
「罠に気を付けて突撃です。なるべく生かして捕えるように」
「了解!!」
私の周りに数人の護衛を残して、戦闘員がアジトの中に流れ込む。
悲鳴やら命乞いが聞こえますね。これならそう時間も掛からずに落ちるでしょう。
「さて。ではそろそろ私達も入りますよ」
戦闘員がアジトに入ってから、一呼吸置き私達も中に入ります。
アジトの中は敵と味方で入り乱れていますが、こちらが押していますね。
「光の精霊よ」
怪我をしてる戦闘員を回復させる。
レイモンド様の近くで楽しそうにしていた精霊ですが、常に私が一緒に居たからか、私にも力を貸してくれます。
「姉御は万能っすね」
「寄られると弱いですが。近付いてきたらお願いしますよ」
「お任せあれ」
そうこうしてるうちに相手ボスが生け捕りにされて、戦闘が終わりました。
待機してる時間の方が長かったですね。
「さて、では契約をしていきましょうか」
レイモンド様の様に鑑定は出来ませんが、何体かの闇精霊はついてきてくれてるので、契約は出来ます。
とりあえず逆らえないようにはしておかないと、レイモンド様には御目通りさせられません。
「エ、エルフだと!?」
「何か問題が?」
私はフード付きローブを被っていますが、流石に近くまで行くとバレます。
契約する為に相手ボスに近寄ると、向こうは驚いた顔をしていました。
「ラブジーが探してる奴だろ!? なんでこんなとこにいやがる!!」
「それはあなたが知る必要はありません。早く契約に同意しなさい」
「くっ…」
中々往生際が悪い人ですね。
ここからはどうする事も出来ないでしょうに。
私は護衛の男に視線を向けます。
男は心得たとばかりに、懐から短剣を取り出して、太ももを貫きました。
「ぎゃぁーっ!!」
「面倒ですね。殺してしまいましょうか。しかし、ボスに鑑定してもらうまでは、早まった事をするべきではありませんし…」
中々承諾してくれないので、少しイライラしてしまいます。レイモンド様は毎回こんな作業をしていたんですね。これは苦行です。
面倒なので一人ぐらい殺してしまってもいいかなと考えましたが、もしかしたら恩恵持ちかもしれません。良い職業持ちかもしれません。良い能力値を持ってるかもしれません。
そう思うと中々手を出せないんですよね。
「わ、わかった! し、承諾する!」
護衛の男がもう一本の短剣を刺そうとした所で、ようやく了承してくれました。
そこからは流れ作業です。ボスが軽い拷問をされるのを見ていた下っ端達は簡単に契約してくれます。
「とりあえずは怪我してる人を集めて下さい。回復させましょう。他の手が空いてる人は死体処理の方をお願いします」
本当ならこのまま縄張りに連れて行って、職業選別をした後に仕事に就かせるのですが、生憎ボスが不在です。
とりあえずは現状維持で、あちらの戦況が動くのを待つべきでしょう。
「ボスは無事でしょうか」
優秀な人とはいえまだ子供。
無茶をしていないか心配です。
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