異世界に転生したので裏社会から支配する

Jaja

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第3章 勢力増強

第51話 その頃の他勢力

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 ☆★☆★☆★

 「騒がしかったわねぇ」

 「おはようございます」

 スラムの賭場にて。
 従業員スペースから欠伸をしながら出てきた妙齢の美人女性。
 女性は周りを見渡して、もう一度欠伸。
 寝ていた間の事について報告を受ける。

 「領主軍を壊滅させた後、ラブジーの奴らが攻めて来ましたが、これも撤退させました」

 「ふーん? ラブジーはうちが弱ってると思って攻めて来たんだろうけど、領主はなんでまた攻めてきたのかしらねぇ? 前回で痛い目を見たの忘れたのかしら? 領主は頭が弱いと思ってたけど、予想以上ねぇ」

 「それと大きな報告としては、ラブジーがうちに襲撃した後、別組織に攻められて壊滅したそうです」

 グラスにお酒を注いでいた手がピタッと止まる。
 女性はキョトンとした顔をして驚いていた。

 「あら? あらあら? ここまで予想通りだと怖くなってくるわね?」

 「そうですね」

 妙齢の女性は近々ラブジーが潰れる事を予想していた。情報から推察した訳ではなく、ただの勘で。

 「私の勘は良く当たるわねぇ。という事は、勘に従って今回表に出なかったのは良い事だったはずよねぇ」

 この女性は昔から勘が凄まじかった。
 傭兵時代から何度もこの勘に助けられている。
 だから勘に従う事に抵抗はないし、古くから彼女に付き合っている他の面々も、彼女が勘と言えば疑う事はない。

 「それでどこに潰されたのかしら? あそこはうちでも私が出ないと苦戦する組織だったでしょう?」

 「クトゥルフっていう組織ですね。最近一気に台頭してきたみたいで、ラブジーの縄張りも丸々手に入れたみたいなんで、縄張りの広さはうちよりも上です」

 「クトゥルフ? 聞いた事ないけど…。なんだか嫌な感じだわねぇ。何か分かってる情報はないのかしら?」

 「ボス、幹部の素性は一切分かりません。唯一アハムの姿を見かけた奴は居たので、アハムは生きててそのままクトゥルフに従ってるのかと。今も情報は集めていますが、確度のある情報は皆無です」

 「謎だわねぇ。こんなに一気にスラムの人間が従うなんておかしい事じゃないかしら? 負けても従わない人間が多いのに。クトゥルフはある程度間引きしてるけど生かして使ってるんでしょ? 相当カリスマがあるのか…それとも…。分からないわねぇ。アハム君が素直に従ってるのもおかしいし。あの子なんだかんだラブジーのボスの事大好きだったでしょ? 違和感だらけなのよねぇ」

 「もう少し深入りして情報を探りましょうか? 今はうちも結構やられたんで、立て直しをしてる最中ですが、軽くちょっかいをかけて反応を見るぐらいなら出来ますよ」

 女性はソファに深く腰掛けて目を瞑る。
 今すぐ手を出して方が良い気がするのに、手を出すと痛いしっぺ返しを受けそうな気もする。
 こういう感覚は傭兵時代にもあった。大抵は行動すると状況は後転するのだが、いつもかなりひどい被害を出していた。
 現在組織は領主、ラブジーが攻められて立て直しをしてる真っ最中。
 行動を起こして被害を出すのは避けたい所だ。

 「様子見ねぇ。無理しない範囲で情報を集めてちょうだい。向こうから手を出してくるまではこっちからも手を出さないようにして」

 「いいんですか?」

 時間を与えるのも悪手の様な気がする。
 しかし、今は怪我した人員の治療を優先させたい。自分が勘に従って引きこもったせいで、結構な被害が出てるのだ。

 女性は部下の問いに曖昧に微笑み、従業員スペースへと戻って行った。


 ☆★☆★☆★


 「お館様。エルフを攫う依頼を出していた組織が壊滅したようです」

 「知らん! スラムの人間になぞ、もう関わりたくない!!」

 領主の屋敷の一室で。
 やつれた表情の領主、ベルリンが報告を受けて叫び声を上げていた。

 「では、スラムに逃げ込んだと思われるエルフは諦めるという事でよろしいですか?」

 「それはならん!! エルフは必ず私の元に連れてこい!!」

 支離滅裂な領主に執事はため息を吐きたくなるのを堪えて部屋を出る。
 そして応接室で待たせていた商人に会う。

 「状況は?」

 「どうやら落ち着いたみたいですな。ラブジーが潰れて新たにクトゥルフという組織が台頭。レーヴァンは様子見といった感じでしょうか」

 「クトゥルフか…。何かその組織について情報は?」

 「申し訳ありません。情報は集めているのですか、欺瞞情報の様なものが多く…。精査するのにかなり時間がかかりそうです」

 「そうか…」

 執事は我慢出来ずにため息を吐いた。
 何故自分がスラムの闇組織の情報なんて集めないといけないのか。
 そろそろ馬鹿領主に付き合うのも疲れてきた。
 本気で暇をもらおうか考える。

 「クトゥルフについて何か分かったら教えてくれ。それと例の脱出ルートの確保も頼む」

 「承知しました」

 金貨が入った袋を情報料として商人に渡して退室させる。
 一人応接室に残った執事は姿勢を崩して、もう一度ため息を吐く。

 (万が一の時に逃げるルートは確保出来た。こうなったらギリギリまでお館様から金を搾り取ってさっさと逃げよう。貯金はかなりある事だし、どこか田舎でゆっくりしよう。もう疲れた)

 先代に恩があるとはいえ限度がある。
 執事はベルリンに見切りをつけて、ペテス辺境伯領から逃げ出す準備を始めた。
 
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