107 / 129
第4章 雌伏の時
閑話 ローザ日記3
しおりを挟む「カタ姉ー」
「どうしましたか?」
訓練場で一人練習していたカタリーナに近付く。カタリーナには精霊さんが見えるらしく、コミュニケーションを取りながら、多種多様な魔法を使っていた。
「剣に魔法を纏わせるのが上手くいかないのー」
いっぱい魔法を使ってるし、魔法は得意なんでしょ? ローザは単純にそう考えていた。しかし。
「ふむ。私も精霊にお願いしてるだけですからね。ヒューマンと魔法の使い方が違うのです」
珍しく頼られたカタリーナはなんとか力になってやりたいと思う。しかし、根本的に魔法の使い方が違うため、どう教えていいか分からないのだ。
「ローザは身体強化は上手に使えてるのに、魔法を体外に放出するとダメなんですね」
それでもとりあえず魔法を使ってもらって、カタリーナに分かる範囲でアドバイスしようとする。
「髪とか服を乾かすぐらいなら出来るんだよ! でもずっとはしんどいの!」
「身体強化は出来てるのにですか」
ローザは体内で魔力を循環させるのが得意みたいだが、それが体外に出ると途端にコントロールが効かなくなる。であれば解決策は一つだ。
「剣も身体の一部と思う事にしましょう。ローザがそう思い込めば、いつの間にか成功してるのでは?」
「なるほど!!」
カタリーナ、意外に脳筋だった。そしてその提案に頭が良いとは言えないローザは目から鱗が落ちる思いで納得していた。なんて簡単な事なんだと。
カタリーナもきちんとアドバイス出来て満足、ローザは突破口を教えてもらえて満足。Win-Win。
そしてお互い気分良く訓練を再開した。
翌日。ローザは出来るようになっていた。
カタリーナにアドバイスを貰った後、確かな手応えに満足しながら今日のやる事は全て終了。
「おっふっろっー!」
そして本日二度目のお風呂である。
訓練終わりのお風呂。これがたまらなく気持ち良いのだ。余程の事がない限りこれは外せない。
しかし残念な事が一つ。朝の訓練が終わった後のお風呂はいつもほぼ貸し切りなのだが、夕方はそうじゃない。
色々な仕事や訓練終わりのクトゥルフメンバーが押し寄せる。
「あら。ローザちゃん。元気にしてたかしら?」
「元気だよー!!」
お姉さん方とお喋りしつつ、綺麗に体を洗っていく。特に尻尾は念入りに。フワフワだと気持ち良いし。
「なんでも最近エリザベスちゃんが、髪を洗う専用の液体を開発中だって」
「私も聞いたわよ。なんでもシャンプーとリンスって言うらしいわ」
ローザの耳がピコっと反応する。聞き捨てならない事が聞こえてきたゆえに。
「この温泉にも置いてくれるのかしら?」
「石鹸があるだけでも贅沢なのにねー」
ローザは今日部屋に帰って来たら、エリーちゃんに聞いてみよう。
そんな事を思いつつ、湯船に浸かった。
お風呂を出たローザは情報部の部屋が集まる場所にやって来た。そういえば、何かあったらレイモンドが連絡すると言ってたのを思い出したのだ。
「やっほー!」
「ローザちゃん…。ここは立ち入り禁止っすよ?」
やって来たのは転送箱が置いてある部屋。クトゥルフ一番の機密を扱う場所になる予定であり、クトゥルフの人員ですら立ち入りを制限していた。
アハムは呆れた顔をしながら、そして申し訳なさそうに追い出そうとしたが。
「レイモンドに入って良いよーって言われてるもん! ほら!」
ローザはポケットをゴソゴソして、一つのメダルを取り出す。これはクトゥルフの階級章みたいなものだ。このメダルの階級によって、入って良い場所や、仕事を割り振られる。そしてローザがレイモンドから渡されたメダルは、一番高位のモノでこれにはアハムは何も言えない。
「まぁまぁ。アハム君。ローザちゃんなら大丈夫でしょう」
「いや、分かってるっすよ。でも一応規則としてっすね--」
執事服のジェイクとアハムが何かを言ってるが、それをローザは無視して他のメンバーに声を掛ける。
「レイモンドから何か来たー?」
「いえ。今日は何も来てないです」
「そっかー」
ローザはしゅんと残念に思いながらも、情報部の部屋を後にする。未だにアハムとジェイクがやいやい言い合っているが、それはいつもの事。
ローザは仲良しだなーと思いながらも、生産部の部屋に向かう。
「エリーちゃーん。今日は帰るよー」
生産部の部屋に来たのは、昨日部屋に帰ってこなかったエリザベスを回収するためである。
流石に二日連続はよろしくない。カタリーナに怒られてしまう。カタリーナの雷はとても怖いのだ。
「今は良いところ」
「だめだよー。また明日ね」
ローザは実験を中断させて、エリザベスの手を引っ張る。昼間と逆の立場になってるみたいだ。
そのまま温泉に連れて行き、中に入ってる人にエリザベスのお世話を頼む。
あの子は自分で何もやらないので。ローザも一緒に入ろうかと思ったが、ついさっき入ったばかりなのである。流石に自重した。
「ねぇ、エリーちゃん。髪専用の液体を開発中だって聞いたんだけど」
「もう出来てる。今は量産出来るかどうか、配合で効能を上げれないかを検証中。匂いもたくさん選べるようになると思う」
お風呂から出て来たエリザベスを背中に背負いつつ部屋に向かう。この子は楽出来るなら平気で姉貴分をアシにする。
「そうなんだー! 楽しみー!」
「サンプルも用意してある。明日から試してほしい」
部屋に着いてエリザベスをベッドに座らせると、ゴソゴソと魔法鞄からいくつかの瓶を取り出す。
これがサンプルらしい。
「わー! ありがとー! 早速明日から使わせてもらうね!」
「出来れば使用感を聞きたい」
「任せてよ!」
ローザは瓶を大事に鞄にしまい、そしてベッドの中に入る。
「おやすみー」
「おやすみ」
10
あなたにおすすめの小説
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる