メダカのキモチ

clumsy uncle

文字の大きさ
3 / 17

はじめまして

しおりを挟む
SNS「mottogram」に登録している恭介のアカウントには、メダカたちの写真がたくさん載っている。
メダカの写真を通しメッセージの交換を始めたアカウント「guppy-ansumble」に、メダカの写真を見てほしい、という一心で、いろいろな角度からメダカの写真を撮り、アップしていた。
恭介とguppyがメッセージ交換を始めて、はや1週間。

今日も仕事帰り、早速mottogramにアクセスすると、guppyからのメッセージが送られてきた。

『kyodreamさんちのパンダちゃん、みんな餌を食べちゃったんだね。私が飼ってるメダカのメリーは、餌を見せるとすぐ水面に上がって来ちゃうんです。で、あっという間に全部食べてしまうの。だから、同じ水槽にいるメダカのジョリーが食べる餌が無くって、見ていてかわいそうになっちゃうの』

メッセージとともに、2匹のメダカの写真が添付されていた。
恭介はguppyのメッセージに微笑ましさをかんじつつも、すぐさま返事を送った。

『すごくかわいいね。メリーちゃん。ウチにいるヒメダカと同じような色や形だし。でも、すごく食いしん坊なんだね。ジョリーちゃん、なんとか餌にありつけるといいけど、大丈夫?』

メッセージを送ると、10分くらいしてguppyからのメッセージが来た。

『大丈夫よ。メリーは一通り食べると底に行って寝ちゃうの。そのスキに、ジョリーの真上辺りに餌を撒くと、うれしそうにジョリーが食べてるの。それがまた、すごく可愛いんだ♪』

恭介は、guppyの送ってくるメッセージに、微笑ましさと温かみを感じた。
水槽では、餌を食べ終えたメダカたちが追いかけっこしている。
ヒレ吉がパンダにちょっかいを出し、パンダがほかのメダカを追い回すという展開がお決まりのパターン。パンダも大きな体に似合わず勢いをつけてほかのメダカたちを追い回す。ただ、たえ子だけは、何があろうと、底で相変わらずじっとしている。彼女は、相当気持ちが据わっているのかもいるのかもしれない。
恭介は、そんなシーンを写真に収め、再びguppyに送った。

週末、仕事が休みの恭介は、起きるやいなや、スマートフォンを立ち上げ、メッセージをチェックした。
メッセージを送って寝た後も、guppyからの返事が来ているかどうか、そればかりが気になってあまり眠れなかった。
SNSにアクセスすると、スマートフォンの画面上部にあるメッセージアイコンが点滅しているのを発見し、ほっと胸をなでおろした。
早速メッセージを開くと、そこには恭介も目を疑ってしまうようなことが書いてあった。

『可愛い写真、ありがとう。メダカたちの追いかけっこ、見ていてすごく面白そうだね。私のところのメダカはおだやかだから、あまりケンカも追いかけっこもしないかな?ところでkyodreamさんってどちらに住んでるんですか?私は千葉に住んでます。もし近くだったら、kyodreamさんちのメダカ、見てみたいかも』

え?み、見てみたいかも??
これってまさか、会ってみたいかもって、ことかも??
恭介は、思わずガッツポーズしてしまった。
そして、スマートフォンから、guppyのメッセージへの返事を送った。

「感想ありがとう。僕は東京の練馬区の隣、西東京市に住んでます。千葉だったら途中乗り換えがあるけど、そんなに遠くはないかな?と、僕的には思いますが(汗)。差し支えがなければ、ぜひいらしてください。近くまで迎えに行きますよ」

しばらくすると、再びメッセージアイコンが点滅した。

「早速のお返事ありがとう。ぜひいらしてください、とのことで、嬉しいです。
私は千葉市なんで、ちょっと遠いかもしれませんが、kyodreamさんのメダカちゃんに会いたいので、がんばって電車を乗り継いで行ってみようと思います。kyodreamさんは週末休みなんですか?」

千葉市…少し距離はあるかもしれないけど、この町にすぐ行けない場所でもない。
恭介は再度mottogramでメッセージを送信した。

『僕は週末土日とも休みです。guppyさんもそうなのかな?僕は西東京市の西武柳沢という所にいます。そちらからだと、総武線か中央線で新宿まで行って、山手線乗り換えで高田馬場まで行って、さらに西武新宿線乗り換えで行くと良いです。会えるのを楽しみにしてます』

恭介の気分は高揚してきた。大学生になって一人暮らしを始めて以来、女性が自分の部屋に遊びに来たことなんて殆ど無い。あったとしても、酔いつぶれたサークルの後輩を泊めたくらい。え?その時は何も無かったのかって?その後輩、その晩ずっと大きな鼾をかいて爆睡し、翌朝恭介が目覚めた時には「昨晩はお世話になりました。バイトがあるから帰りますね。」とだけ書き置きして、さっさと帰ってしまったのだから。

そしてguppyと会う約束の日、恭介はいつものようにメダカ達の水槽の水換えをして、餌を与えてから、きちんと身なりを整えて、家を出発した。
恭介の家は、最寄りの西武柳沢駅まで徒歩12分。少し遠いけど、スーパーやコンビニも近く、野菜畑や栗の木、柿の木、雑木林など昔ながらの武蔵野の面影の残る、落ち着いた環境の中にある。
駅の改札口で、時計を眺めながらguppyの到着を待つ恭介。
すでに待ち合わせの時間を少し過ぎている。恭介の高揚した気持ちは徐々にイライラに変わってきつつあった。そして更に時間がすぎると、徐々に不安と落胆に変わりつつあった。

『どうせmottogramだけのやりとりだし。本名も顔も知らないし。相手は僕を冷やかしたかったんだろう』

そう思って、帰ろうとした時、下り電車が到着し、何十人かの乗客が改札に入ってきた。その中で、髪の長い、清楚な雰囲気の女性が、恭介に近づいてきた。

「kyodreamさん……ですか?」
「はい……そうですけど。」
「私、guppyです。mottogramでkyodreamさんのメダカ見てみたいってお話した、guppyです」
「え?guppyさん?」

guppyは、胸のあたりまで伸ばした茶色の長い髪、色白でぱっちり開いた大きな瞳、
そしてファーの付いたピンクのロングコートを着込んだ、全体的に可愛らしいふんわりした雰囲気の女性だった。
ブーツを穿いているからかもしれないが、割と長身で、恭介とあまり身長が変わらないように感じた。

「今日は遠くから来てくれてありがとう。疲れてるところすみませんが、僕の家までここからちょっと歩きますけど、良いですか?」
「良いですよ。私、ちょっと歩くのは苦にならないです。すごく歩くのは苦手ですけど」と、guppyはにっこり笑いながら答えた。
「あははは……」

本気で答えたのか、わざと言ったのかは分からないけど・・恭介は、guppyとともに、駅の階段を下り、商店街を抜けて自宅へと向かった。

その途中、恭介がメダカを買ったアクアショップ「コーラル」もあった。

「あ、僕、ここでメダカ達をみつけたんですよ」
「わあ~~そうなんだ。あれ?今日はお休みなんですね」

怪しげな外装の入り口のドアには、『本日休業』の札が掛かっていた。

「いろんな種類の魚が居たけど、僕の気持ちを惹いたのは、今飼ってるヒメダカたちだったんですよ」
「そうなんだあ。店、開いていれば、見てみたかったかも」
「今度来た時、開いてたら案内しますよ。中は結構薄暗くて最初は怖いと思ったけど、狭い店内に、メダカだけじゃなく、いろんな種類の熱帯魚がいるんですよ」
「うん…あれ?このお店、私、ひょっとしたら、家の近くで見たことあるかな?」
「え?見たことあるって?」

恭介はguppyの言葉に一瞬、耳を疑った。

「ううん、気のせいかも。なんとなく似てるって感じ。私の勘違いかな」

二人で色々なことを話しながら、恭介とguppyは、駅から恭介の家まで歩いた。

「あ、そうそう、僕の本名、言っても良いですか?僕は、恭介っていうんです。ハンドルネームのkyoは、ズバリ本名そのままです」
「あはは、本名から取ってたんですね。私のguppy-amsumbleは、本名とは全然関係ないけど……本名は「魚住さより」っていうんです。全然guppyじゃないですけど、自分の名前が魚っぽいから、ハンドルネームも魚っぽいものにしたんですよ。単純でしょ?」

guppy…いや、さよりは、くすっと笑いながら話した。
そんな話をしているうちに、2人は恭介の部屋にたどり着いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

地味男はイケメン元総長

緋村燐
青春
高校一年になったばかりの灯里は、メイクオタクである事を秘密にしながら地味子として過ごしていた。 GW前に、校外学習の班の親交を深めようという事で遊園地に行くことになった灯里達。 お化け屋敷に地味男の陸斗と入るとハプニングが! 「なぁ、オレの秘密知っちゃった?」 「誰にも言わないからっ! だから代わりに……」 ヒミツの関係はじめよう? *野いちごに掲載しているものを改稿した作品です。 野いちご様 ベリーズカフェ様 エブリスタ様 カクヨム様 にも掲載しています。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...