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第一章
6.思いがけない出会い
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然程時間をかけることなく、破落戸共を倒したレイモンドは、息の乱れも、服装の乱れもなく、本当にいままで剣を振るっていたのか?
と、疑わしくさえ感じさせるが、レイモンドの強さを知っている従者はともかく、護衛騎士たちは複雑な思いでレイモンドへ視線を向ける。
本来ならば、破落戸共に対峙すべきは、護衛騎士たる自分たちの役目なのに、こうもあっさりと勝たれては立つ瀬がない。
そんな男たちの胸中に気付くことなく、僅かに乱れた前髪を手で掻き上げながら、退避させていた女性達の元へと足を向けた。
みれば、お嬢様と呼ばれていた女性の方は、いまだ剣を握ったままだ。
その握り方をみれば、剣を扱いなれていることがわかったけれど、もし、普段から剣を握っているとすれば……銀青色の髪を見たときにもしや? と思ったが、こうして、真正面から対峙してみれば、絵姿に良く似ている。
やはり、彼女はマリーベル・オルドリッチ侯爵令嬢なのだろう。
銀青色の髪と銀灰色の瞳はオルドリッチ家の特徴でもある――
そういえば、ここはオルドリッチ領内だったか……
オルドリッチ侯爵家は、今はルーベンス公国に併合された西方のフィガロ公国と接する領地を古くから治めていたせいで、常に領土拡張を目論むフィガロ公国の軍と国境付近での小競り合いを繰り返していたせいか、おんな子供を問わず、武に秀でたものを多く輩出していた。
危険な国境付近に居を構えるのだ――決して足手まといになることがないよう、自分の身は自分で守れるようにと、子供達はみな何らかの武器が使いこなせるように、訓練を受けさせられていたという。
アスラン王が周辺諸国を統合した折も、一番の武功は当時のオルドリッチ侯爵だった。
そんな家系なので、ルーベンス公国となった後も、オルドリッチ侯爵家の人間は、いまだに幼い頃から教え込まれているそうだから、目の前の令嬢は剣技の手ほどきを受けていたのだろう。
「……手助けの必要はなかったかな?」
「いえ、そんなことは……助けていただきありがとうございました」
そう言いながらも、しっかりとレイモンドに視線を向ける彼女の銀灰色の瞳には、横から獲物を奪われた悔しさみたいなものを感じさせる。
元来、勝ち気な性格なのかもしれないが、絵姿はそこまで写し取れなかったようだ。
周りを見れば、御者らしき男と護衛騎士と侍女が一人づつしか見当たらず、いくら自領とはいえ、こんな国境近くの場所にやってくるには危なっかしいというより無謀だったのでは?と、思うのだが、それだけ、彼女が腕に自信があったということか……とはいえ、御者も護衛騎士も少なからず手傷を負っていた。
「すまないな、どうなら貴女の獲物を横取りしてしまったようだ」
レイモンドが苦笑まじりに話かけると、彼女ははっとしたように握りしめていた剣を背後に隠すようにしてから、頭を下げて礼をとる。
「いいえ、そんなことはございませんわ。いきなり襲って来られたので、助けていただきありがとうございました」
耳に優しく響く声音であったけれど、どこか、よそよそしいような気不味さを感じ、名乗らなくともレイモンドが誰だか判っているのだろうことを察してしまう。
それはそうだろう――銀青色の髪と銀灰色の瞳がオルドリッチ家の特徴であるように、赤みが強い赤褐色の髪と黄金の瞳は、王族の証だと言われているのだから。
いずれにしても、正式な紹介もなく出会ってしまったことが知れては、花嫁選びの儀式に支障がでることは間違いなく、二人は暗黙の了解のうちにお互いの思いを読み取り、早々にその場を立ち去ることに決めた。
と、疑わしくさえ感じさせるが、レイモンドの強さを知っている従者はともかく、護衛騎士たちは複雑な思いでレイモンドへ視線を向ける。
本来ならば、破落戸共に対峙すべきは、護衛騎士たる自分たちの役目なのに、こうもあっさりと勝たれては立つ瀬がない。
そんな男たちの胸中に気付くことなく、僅かに乱れた前髪を手で掻き上げながら、退避させていた女性達の元へと足を向けた。
みれば、お嬢様と呼ばれていた女性の方は、いまだ剣を握ったままだ。
その握り方をみれば、剣を扱いなれていることがわかったけれど、もし、普段から剣を握っているとすれば……銀青色の髪を見たときにもしや? と思ったが、こうして、真正面から対峙してみれば、絵姿に良く似ている。
やはり、彼女はマリーベル・オルドリッチ侯爵令嬢なのだろう。
銀青色の髪と銀灰色の瞳はオルドリッチ家の特徴でもある――
そういえば、ここはオルドリッチ領内だったか……
オルドリッチ侯爵家は、今はルーベンス公国に併合された西方のフィガロ公国と接する領地を古くから治めていたせいで、常に領土拡張を目論むフィガロ公国の軍と国境付近での小競り合いを繰り返していたせいか、おんな子供を問わず、武に秀でたものを多く輩出していた。
危険な国境付近に居を構えるのだ――決して足手まといになることがないよう、自分の身は自分で守れるようにと、子供達はみな何らかの武器が使いこなせるように、訓練を受けさせられていたという。
アスラン王が周辺諸国を統合した折も、一番の武功は当時のオルドリッチ侯爵だった。
そんな家系なので、ルーベンス公国となった後も、オルドリッチ侯爵家の人間は、いまだに幼い頃から教え込まれているそうだから、目の前の令嬢は剣技の手ほどきを受けていたのだろう。
「……手助けの必要はなかったかな?」
「いえ、そんなことは……助けていただきありがとうございました」
そう言いながらも、しっかりとレイモンドに視線を向ける彼女の銀灰色の瞳には、横から獲物を奪われた悔しさみたいなものを感じさせる。
元来、勝ち気な性格なのかもしれないが、絵姿はそこまで写し取れなかったようだ。
周りを見れば、御者らしき男と護衛騎士と侍女が一人づつしか見当たらず、いくら自領とはいえ、こんな国境近くの場所にやってくるには危なっかしいというより無謀だったのでは?と、思うのだが、それだけ、彼女が腕に自信があったということか……とはいえ、御者も護衛騎士も少なからず手傷を負っていた。
「すまないな、どうなら貴女の獲物を横取りしてしまったようだ」
レイモンドが苦笑まじりに話かけると、彼女ははっとしたように握りしめていた剣を背後に隠すようにしてから、頭を下げて礼をとる。
「いいえ、そんなことはございませんわ。いきなり襲って来られたので、助けていただきありがとうございました」
耳に優しく響く声音であったけれど、どこか、よそよそしいような気不味さを感じ、名乗らなくともレイモンドが誰だか判っているのだろうことを察してしまう。
それはそうだろう――銀青色の髪と銀灰色の瞳がオルドリッチ家の特徴であるように、赤みが強い赤褐色の髪と黄金の瞳は、王族の証だと言われているのだから。
いずれにしても、正式な紹介もなく出会ってしまったことが知れては、花嫁選びの儀式に支障がでることは間違いなく、二人は暗黙の了解のうちにお互いの思いを読み取り、早々にその場を立ち去ることに決めた。
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