ガーベラの栞で挟んで

月代 斑

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叶わない

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   俺と颯悟は幼馴染だ。俺たちは今、高校一年生。それまで颯悟とは、学校も部活も、いつも同じだった。だから、颯悟のことは俺が一番よく知ってるし、颯悟も俺のことは何でも解ってる。正に最強のコンビってやつだ。

「おい。」

 でも、そんな颯悟も知らない俺の一面がある。それは―

「おい。璃人。」

「えっ?」

「えっ?じゃねえよ。何ボーっとしてんだ。次の授業移動教室だろ?早く行くぞ。」

「あ、うん。ごめん。」

「なんか最近元気ないぞ。どうしたんだ?」

「何でもないよ。」

「そうか?何か悩みがあるなら俺に頼って―」

「いや、ホントに何でもないから!ほら、移動教室なんでしょ?遅れるよ!」

「おい待てよ!そんなに走らなくてもまだ間に合うって。」

(言えるわけないだろ!ってか原因はお前だっての。)

 俺は颯悟が好きだ。もちろん幼馴染としての友情!…って訳じゃなく、付き合いたいとか、そういう意味。颯悟の知らない俺の一面。



「やっと授業終わったぜ~!んー」

「ほとんど寝てたくせに。」

「体育と音楽は起きてたぞ!」

「当たり前だ!何でそんなに自慢げなんだ全く。次のテストで痛い目見ても知らないからな。」

「大丈夫だ。また璃人に教えて貰うから。」

「またかよ。そうやっていつまでも俺に頼って、社会に出た時に一人でやっていけないぞ。」

「社会人になっても居るだろ?一緒に。」

「えっ?」

「俺らは最強のコンビだからな!」

「あぁ、そうだね。当たり前だろ。」

(うわぁぁ焦った~!一瞬勘違いするところだった。)

「颯悟~、残ってんならちょっと日直手伝って欲しいんだけど。」

「おう!ちょっと行ってくるわ。すぐ戻るからここで待ってろ。」

「そんなの断ればいいのに。日直の仕事じゃん。」

「でもまぁ、すぐ終わらせるから。あいつも困ってんだろ。」

(このお人好しめ。)

 颯悟はイカつい見た目でオラオラな喋り方の癖に、世話好きでほっとけない性格だ。

(あと、喧嘩の時とか見栄張って前出るけど、本当は怖がりなんだよな~。したくないならやらなきゃいいのに。まぁ、そういうところが好きなんだけどね。)

「何ニヤニヤしてんだ?んじゃ行ってくる。言っておくが、黙って一人で帰んなよ。」

「へいへい。」

(ってか、なんだあの日直。偉そうに颯悟に指図しやがって。イライラする。)

名前誰だっけ?興味は無いけど、颯悟と仲がいいなら話は別だ。俺は颯悟を横取りしたやつのことを睨んだ。次第に女子のヒソヒソ声が聞こえてくる。

「水瀬くんいつも怒ってるよね。怖~い。でも、高橋くんといつも一緒にいるよね?何で?」

「幼馴染なんだって。」

「あ、だからか。高橋くんがつるむタイプじゃないと思った!」

理不尽にも程がある。

「なんか、高橋くんってモテモテなのに、誰とも付き合ったことないって噂だよね。この前、クラス一かわいいって男子から言われてた子が告白して、振られたって泣いてたし。」

わざと聞こえるように言いやがって。高橋高橋うるせぇ。

「水瀬くんってさ、頭いいけど暗いし目つき悪いし…。不良みたいな噂も流れてるよね?」

「脅されてるんじゃないの?」

「高橋くん可哀想~笑。」

「そんなわけ…!」

「ヤダ、聞こえてた?怖~い笑。」

(しまった。つい口を出してしまった。)

「チッ。」

俺は教室を出て、門の前で待つことにした。



 颯悟は皆に好かれている。友達だけならまだいいが(本当は嫌だけど)問題は颯悟の周りにうじゃうじゃ集ってくるやつらだ。さっきの話だって…。幸い、颯悟はそういうの興味無いみたいだし、そういう話もあまりしないみたいだから良かったが、噂を聞く度に、もし颯悟がその気になったらと気が気じゃない。

 そして、もう一つ問題がある。それは颯悟が〝恋愛に興味を示さない〟ということだ。それは勿論、俺も対象になる。いや、その対象にすら入れていない圏外かもしれない。俺だって最初は颯悟のことを憧れの存在だと思っていた。それが恋心だと気づいたのは最近で、最初は戸惑った。距離を置こうとも考えたが―



「どうした?璃人、元気がないぞ?何かあったのか?どこか具合でも…。」

「大丈夫だって!ほっとけよ!」

「俺何かしたか?なら謝るすまん。だが、何が悪いのか全く心当たりがない。すまん。」

「何それ笑。もういいよ。一緒に帰れば良いんだろ?全く、颯悟は俺のこと大好きだな。」

「おう!大好きだぞ!」

「…っ。わかったから!」


無理だった。もう自爆はしたくないし。

(あいつド直球過ぎだろ。あの脳筋が。少しは恥じらいを持て。…どうせ皆に思ってることなんだろうな。)

 幼馴染だから分かる。あいつはそういうやつだ。皆のことが大好きで、みんなのことが大切。それは颯悟のいいところであり、酷いところだと思う。

「おーい。璃人~!終わったぞ。教室に居なかったから探したぞ!」

「あんまり遅かったから、外で待ってようと思って。」

「そうか?悪かった。」

「早く帰ろ。」

「そうだな。もう暗くなっちまう。」

 この想いは墓場まで持っていこう。俺とは腐れ縁だから、人気者のお前が俺なんかを選んで、一緒に帰ってくれる。一番近いところで話して、俺に向けて笑ってくれる。これ以上ないくらいの特等席を、自分から手放すようなバカな真似はしない。

 颯悟は今俺のことを一番の友達だと思ってくれている。一番になれているんだ。それ以上を求めるなんて、傲慢だと思う。


でももし、俺より大切な存在が現れたその時は…。
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