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【224話】 狂騎士の斧作戦16日目になり少し野営に飽きてきているリリア
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狂騎士の斧作戦16日目
リリア達が“チャト団”の見張りを始めて六日経った。
「早く温かいお風呂に入りたい、ホッカホカのスープ飲みたい、あたし街に帰ったら一番初めにベッドに飛び込んで昼寝するの」
リリアは最近こんなことばっかり口にしている。
「雨は大変だけど、自然の中での生活も悪くないよ」
ダーゴが答え、リリアが「ゴブリンって我慢強いのねぇ、人間よりよっぽど優秀な種族かもね」と付け加える。こんな会話をカモフラージュの中で繰り返している。
昨日ビケットがリリア達の見張りまで確認に来た。
リリア達の報告と自ら周辺を確認してチャト団への踏み込みは今夜決行と決まった。
「作戦の内容だが、ここに関して言えば賞金首の暗殺というよりもっと根絶やしに近い作戦となる。ここはこの山中にあるアジトでも大きい方だ。滝つぼと沢に囲まれ地形的にも天然の要塞と言っても良い。しかし、その地形効果の良さが逆に外に騒ぎを漏れ難くもしている。別の班の人数も集める手はずだ。それでは具体的に…」ビケットが説明をする。
作戦:ブドウの収穫
チャト団からバーンズ、チャビィをはじめとする数名の賞金首を確保する。
撒き餌に使った資材を可能な限り回収、囚われている女性達の解放。
チャト団の戦力を可能な限り殲滅
積み荷強奪の一件以来、チャト団の戦力は半減されている。見張りも疎か、風紀も乱れているがなまじ今まで力を誇示していたことと地の利が良かったことによりかなりの隙があるようだ。
リリア達の観察したところ夜は交代の見張りを沢の入り口に置いただけで残りの者は酒を飲んで泥酔する傾向にあるようだ。
数日前は裏切った手下を見せしめに処刑が行われている。
かなり結束が乱れ始めている。ここが狙い目のようだ。
ビケットの段取りで夕方に葡萄酒の荷物を撒き餌で戦利させる手はずになっているようだ。
「葡萄酒には特に眠り薬が入れてある。それからブリザとネネが囚われる」ビケットがサラリと説明する。
「ヴェ!ブリザとネネが囮?」リリアはびっくり。
「声がでかいぞ、リリア。ブリザとネネは行商の娘という設定だ。ブリザなら心配ない。ネネもブリザと一緒なら大丈夫だ。もし何か不都合があったらその場で逃げろと指示はだしてある。虜となってアジトに入り作戦開始と共に内側からも行動を開始する」ビケットが言う。
「うーん… 大丈夫かなぁ…二人とも魔力が強いから、まぁ、アジトには魔力を感知できるような賊はいないようだけど…」リリアが心配する。
ネネはともかくブリザは全然商人風情ではない。違和感が爆発…
あんな不愛想で媚びない商人等いるだろうか…
「あんなに冷静沈着な商人いないよ、それにあんなマジックワンド持っていたらすぐばれるような気がする」リリア。
「彼女達なら素手でもある程度魔力は発揮できる。手ぶらで捕まってもらう、危機に陥る前に自力でなんとかする」ビケットは信頼しているようだ。
「ビケットがそう言うのだから任せろ」デューイが言う。
「あたし、女性冒険者潜入捜査って物語を読んだことあって、冒険物かと思って何気なく読みはじめたら女冒険者が盗賊のアジトに囚われの身を装って潜入して、そしたら身元がバレて男達にすごいことされて、最初は抵抗していたけど、まんざらでもなくなって、最終的にはアへ顔でピースで… タイトルからは想像もしていなかった内容だからびっくりして最後まで読めなかったよ」リリアが心配する。
「何だかほぼ最後まで読んでるよな… 物語だろ?そんな物信用するなよ」デューイ。
「うーん、まぁ、あのブリザに限ってアへ顔にはならないと思うけど、ってか冒険者の中でアへ顔が似合わない女性ナンバーワン的な人だよね… そうだねブリザならアへらないよね、ちょっと安心した」リリアは何だか納得してしまったようだ。
「… おまえ一体何の心配してるんだ?」デューイが呆れる。
とにかく作戦では奪取された葡萄酒の樽とブリザ達の到着、賊が酒盛りして泥酔状態になったらリリアとミスニスで賞金首のトップ2を狙撃する事から始まる。
その合図とともに配置についた者達がアジトを一網打尽にする手はずになった。
リリア達は夕方までに急ぎ必要な物を準備する。
まずはリリア達のいる崖から素早く沢まで下りるためのロープを作る。
長いロープに一定間隔に結び目が入れられ素早く崖を伝って下りれるように準備。
「ダーゴはあれくらいの足場ならロープ使わず下りれるんじゃない?」リリアがカモフラージュの中で作業をしながら聞く。
「下りれなくはないけど、ロープ使った方が安全で早いかな、どうかな?」ダーゴは沢を見下ろしながら答える。
「勢いで駆け下れそうだぜ。俺は下の配置だけどな。人間が一番能力低いのになんでこんなに世の中人間が繁栄してるだろうな」デューイが呟く。
「… 確かに… 本当だよね。魔力が強い者が生まれてくるから?… エルフも魔力強いね。力ならオーガ、オーク… ゴブリンシャーマンも魔力あるね… なんでだろうね… 人間が一番強欲なんだよ、人間が一番おそろしいんだよ、きっと」リリアが作業しながら答える。
「今夜は藪の中に放置されなくて良いみたいだな。俺はリリアといればよいのか?俺は活躍してるぞ、ビケットにちゃんと報告して二人分の分け前をもらうべきだ」ひさびさ手元にいるダカットが呟く。
「ちゃんとダカットの活躍は報告してるよ。でも本当に給料出てもおかしくない働きだよね。もらっても使えないけどね。ちゃんとリリアが預かってリリアが使わせてもらうよ」リリアはえっへっへと笑いっている。
「こんな安上がりなパートナーいないけどな…」ダカットは不満そうだ。
「今日、一区切りしたら街でコーンスープとクラムチャウダー食べる予定だよ」リリアが言う。
「どっちもスープじゃねぇか」デューイ。
リリアはロープ作りの作業を続けている。
リリア達が“チャト団”の見張りを始めて六日経った。
「早く温かいお風呂に入りたい、ホッカホカのスープ飲みたい、あたし街に帰ったら一番初めにベッドに飛び込んで昼寝するの」
リリアは最近こんなことばっかり口にしている。
「雨は大変だけど、自然の中での生活も悪くないよ」
ダーゴが答え、リリアが「ゴブリンって我慢強いのねぇ、人間よりよっぽど優秀な種族かもね」と付け加える。こんな会話をカモフラージュの中で繰り返している。
昨日ビケットがリリア達の見張りまで確認に来た。
リリア達の報告と自ら周辺を確認してチャト団への踏み込みは今夜決行と決まった。
「作戦の内容だが、ここに関して言えば賞金首の暗殺というよりもっと根絶やしに近い作戦となる。ここはこの山中にあるアジトでも大きい方だ。滝つぼと沢に囲まれ地形的にも天然の要塞と言っても良い。しかし、その地形効果の良さが逆に外に騒ぎを漏れ難くもしている。別の班の人数も集める手はずだ。それでは具体的に…」ビケットが説明をする。
作戦:ブドウの収穫
チャト団からバーンズ、チャビィをはじめとする数名の賞金首を確保する。
撒き餌に使った資材を可能な限り回収、囚われている女性達の解放。
チャト団の戦力を可能な限り殲滅
積み荷強奪の一件以来、チャト団の戦力は半減されている。見張りも疎か、風紀も乱れているがなまじ今まで力を誇示していたことと地の利が良かったことによりかなりの隙があるようだ。
リリア達の観察したところ夜は交代の見張りを沢の入り口に置いただけで残りの者は酒を飲んで泥酔する傾向にあるようだ。
数日前は裏切った手下を見せしめに処刑が行われている。
かなり結束が乱れ始めている。ここが狙い目のようだ。
ビケットの段取りで夕方に葡萄酒の荷物を撒き餌で戦利させる手はずになっているようだ。
「葡萄酒には特に眠り薬が入れてある。それからブリザとネネが囚われる」ビケットがサラリと説明する。
「ヴェ!ブリザとネネが囮?」リリアはびっくり。
「声がでかいぞ、リリア。ブリザとネネは行商の娘という設定だ。ブリザなら心配ない。ネネもブリザと一緒なら大丈夫だ。もし何か不都合があったらその場で逃げろと指示はだしてある。虜となってアジトに入り作戦開始と共に内側からも行動を開始する」ビケットが言う。
「うーん… 大丈夫かなぁ…二人とも魔力が強いから、まぁ、アジトには魔力を感知できるような賊はいないようだけど…」リリアが心配する。
ネネはともかくブリザは全然商人風情ではない。違和感が爆発…
あんな不愛想で媚びない商人等いるだろうか…
「あんなに冷静沈着な商人いないよ、それにあんなマジックワンド持っていたらすぐばれるような気がする」リリア。
「彼女達なら素手でもある程度魔力は発揮できる。手ぶらで捕まってもらう、危機に陥る前に自力でなんとかする」ビケットは信頼しているようだ。
「ビケットがそう言うのだから任せろ」デューイが言う。
「あたし、女性冒険者潜入捜査って物語を読んだことあって、冒険物かと思って何気なく読みはじめたら女冒険者が盗賊のアジトに囚われの身を装って潜入して、そしたら身元がバレて男達にすごいことされて、最初は抵抗していたけど、まんざらでもなくなって、最終的にはアへ顔でピースで… タイトルからは想像もしていなかった内容だからびっくりして最後まで読めなかったよ」リリアが心配する。
「何だかほぼ最後まで読んでるよな… 物語だろ?そんな物信用するなよ」デューイ。
「うーん、まぁ、あのブリザに限ってアへ顔にはならないと思うけど、ってか冒険者の中でアへ顔が似合わない女性ナンバーワン的な人だよね… そうだねブリザならアへらないよね、ちょっと安心した」リリアは何だか納得してしまったようだ。
「… おまえ一体何の心配してるんだ?」デューイが呆れる。
とにかく作戦では奪取された葡萄酒の樽とブリザ達の到着、賊が酒盛りして泥酔状態になったらリリアとミスニスで賞金首のトップ2を狙撃する事から始まる。
その合図とともに配置についた者達がアジトを一網打尽にする手はずになった。
リリア達は夕方までに急ぎ必要な物を準備する。
まずはリリア達のいる崖から素早く沢まで下りるためのロープを作る。
長いロープに一定間隔に結び目が入れられ素早く崖を伝って下りれるように準備。
「ダーゴはあれくらいの足場ならロープ使わず下りれるんじゃない?」リリアがカモフラージュの中で作業をしながら聞く。
「下りれなくはないけど、ロープ使った方が安全で早いかな、どうかな?」ダーゴは沢を見下ろしながら答える。
「勢いで駆け下れそうだぜ。俺は下の配置だけどな。人間が一番能力低いのになんでこんなに世の中人間が繁栄してるだろうな」デューイが呟く。
「… 確かに… 本当だよね。魔力が強い者が生まれてくるから?… エルフも魔力強いね。力ならオーガ、オーク… ゴブリンシャーマンも魔力あるね… なんでだろうね… 人間が一番強欲なんだよ、人間が一番おそろしいんだよ、きっと」リリアが作業しながら答える。
「今夜は藪の中に放置されなくて良いみたいだな。俺はリリアといればよいのか?俺は活躍してるぞ、ビケットにちゃんと報告して二人分の分け前をもらうべきだ」ひさびさ手元にいるダカットが呟く。
「ちゃんとダカットの活躍は報告してるよ。でも本当に給料出てもおかしくない働きだよね。もらっても使えないけどね。ちゃんとリリアが預かってリリアが使わせてもらうよ」リリアはえっへっへと笑いっている。
「こんな安上がりなパートナーいないけどな…」ダカットは不満そうだ。
「今日、一区切りしたら街でコーンスープとクラムチャウダー食べる予定だよ」リリアが言う。
「どっちもスープじゃねぇか」デューイ。
リリアはロープ作りの作業を続けている。
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