466 / 519
【224.5話】 リリアとニイ ※作戦開始前の話し※
しおりを挟む
「おはようございます。今日もあなたに神のご加護がありますように」
リリアが装備を整え宿のカウンターに出るとニイがすでに出発の準備を整えて待っていた。
ここはルーダ港のリリアがちょこちょこ宿泊する宿屋である。
リリアは仕事のためビケットに呼ばれているが観光と下見を兼ねて数日早めにやってきている。
「アンナおばさん、リリアがニイさんを馬車停まで連れていくから安心して、いってきます」リリアが宿主に声をかける。
「悪いわねぇ、ちょっとよろしくね、リリアちゃん」アンナが笑顔で答える。
「国民のため、勇者の務めよ。さ、ニイさん、行きましょう」
リリアとニイは連れ立って宿を出て行った。
昨晩外食を済ませて宿に戻ってきたリリアはカウンターでアンナに呼び止められた。
「リリアちゃん、もう部屋に戻って休むのかい?それならマッサージでもどうだい?必要ない?… 実は、ここに泊まる旅のお客さんなんだけどね、バイトしながらの旅のお客さんがいて、仕事を紹介してあげたくてねぇ… リリアちゃんちょっとマッサージしてもらっておくれよ。そんないかがわしい仕事じゃないんだ、雇ってやってくれよ」アンナがリリアに声をかける。
「なんだか怪しくないか?」ダカットが呟く。
「アンナさんの知り合いなら信用はするけど… マッサージなんて別に…」
リリアが答えを渋っているとアンナがカウンターから出てきてリリアに耳打ちをする。
「実はね全盲のお客さんなんだよ。けっこうなお年で悪い人ではないみたいだよ。事情があって旅をしているんだよ、マッサージ頼んでおくれよ」
「全盲?あぁ、目が全然見えないのね。それでマッサージ… わかった、ちょっとしたら部屋に呼んでくれたらいいよ」リリアは承諾した。
事情を聞いたら承諾せざるを得ないといったところか…
リリアが部屋でゴロゴロしながら本を読んでいるとドアにノックがあり、ニイがやってきた。
「あっしはニイと申します。どうも失礼仕ります」ボソボソと挨拶しながら部屋に入ってきた。
“ニイ?変わった名前ね。外見からしても異国文化の人かな?“リリアの初見感想。
ニイは初老の人間男性、白髪頭、はやり目が見えていないのであろう、ぎこちなく瞬きをしては時折白目を見せている。
最近では貿易が盛んになり色んな文化の人をみるが、東の方の人だろうか?
この大陸の文化とは違った軽装備、杖で足元を探りながら部屋に入ってきた。
「………」
「…… えっと… じゃ、じゃあ、とりあえず寝っころがって… ってか、もう寝っ転がっているからマッサージお願いね」リリア。
寡黙な男性のようだ。リリアの方からお願いする。
ニイのマッサージは上手な方なのだろう、リリアも心地よくなる。
「冒険者?旅行者?珍しいお話聞かせてよ」リリアが土産話をせがむ。
ニイはボソボソと喋る男だが、リップサービスは悪くなかった。旅行等当たり障りのない話題はリリアに色々聞かせてくれた。なかなか面白い話を聞かせてくれた。
「お客さんはまだ若い、あっし見たてじゃ年は18,19,二十歳にはいってませんな。それに… この体つき、弓… お客さん弓を使いだ」ニイが言う。
「へぇ、わかるんだね、やっぱり目が見えない分手先が鋭いのかな?」リリアが答える。
熟練マッサージャーと言ったところだろうか。ニイは時々リリアが「目が見えているのかな?」と思わせるほど鋭い感をしているようだった。
まぁ、色んな能力の人がいるものだ、リリアもあまり気にもしない。
ニイは特に目的のある旅のようではなさそうだ。
はっきりとは答えないが、かいつまんで言うと一ヶ所に長くいる性分では無く、一ヶ所に長くいれる性分でもなく、足の向くままに旅をして回っていて、この港にたどり着いた、こんなところらしい。
「面白いねぇ。ニイさん、マッサージはもういいからちょっと外でお酒でも飲んで旅の話しをいっぱい聞かせてよ」
リリアが声をかけて二人は飲みに出かけた。
「このジィさん胡散臭いよ、目が見えるんじゃないか?」ダカットは不満そう。
おしゃべりリリアとボソボソニイは結構気が合うようだった。
ボソボソ話が逆に効果を高めるのかニイの旅行話は面白いものだった。
「もうそろそろこの港街を離れる?そっかぁ、まぁここは景気が良いけど治安が良くないものね、ニイさんならもっと落ち着いた街が良いかもね。ルーダリアの城下街とか周辺の村とかがいいのかな?えぇ!城下街まで歩く?いや、やめた方がいいよ、盗賊や人さらいが多いよ。大丈夫?…いやいや、ルーダリアの賊をなめちゃいけない!魔物も強いよ。リリアはこの国の勇者だからなんとかなるけど、目の見えないヨボヨボ老人なんて十歩くらい歩いたらスライムに消化されて食べられちゃうよ。こう見えてもリリアは凄腕だよ!… あ、そっか見えないのか… えっと…こう聞こえても弓は凄いのよ。だから今日まで生きてこれたけど、きっとニイさんはあっという間にトードに飲まれてる。あっという間劇場だよ。リリアが付き添えればいいけど、あたしも仕事できていて付き添えないよ。十日、いや二週間待てれば付き添うけど… そんなにここに居る気はない?うーん…じゃ、リリアが馬車賃だすからせめて城下までは馬車でいきなよ」
盲目のニイに歩かせるわけにはいかない、リリアは馬車停まで送る約束をした。
そして今朝、リリアとニイは落ち合って馬車停にむかった。
「良いわよね、気ままな一人旅も憧れるわね。城下街を目指すのね?あたしはルーダ・コートの街に住んでるの。ルーダの風ってバーが…酒場があるからいつでも寄ってね。仲間がいるよ、リリアは勇者だし冒険者としてウチのギルメン3人分の働きを…」リリアはニコニコとおしゃべりしながらニイと並んで歩いていく。
「あれぇ?ルーダリア城下街行き、ルーダ・コート、パウロ・コート、どこの駅馬車も満席だって。前はこの城門が始発だったけど、客が増えて港の方から始発が出るから確実に乗りたいならそっちがおすすめだって… 大した距離でもないし、そっち行こうか」
リリアが駅馬車のチケットを買おうとしたら既に満席のようだ。列が出来ている。
午前中に確実に席を確保するには船着き場付近の始発から乗るのが良いと言う、仕方が無いのでリリアはニイと移動。
「ニイさん、ちょっと坂道と階段が多いけど、船着き場の馬車停まで連れて行くよ」
リリアはニイの手を引くと活気に賑わう街中に戻り始めた。
ルーダ港の街の午前中は活気に満ち溢れている。
リリアが装備を整え宿のカウンターに出るとニイがすでに出発の準備を整えて待っていた。
ここはルーダ港のリリアがちょこちょこ宿泊する宿屋である。
リリアは仕事のためビケットに呼ばれているが観光と下見を兼ねて数日早めにやってきている。
「アンナおばさん、リリアがニイさんを馬車停まで連れていくから安心して、いってきます」リリアが宿主に声をかける。
「悪いわねぇ、ちょっとよろしくね、リリアちゃん」アンナが笑顔で答える。
「国民のため、勇者の務めよ。さ、ニイさん、行きましょう」
リリアとニイは連れ立って宿を出て行った。
昨晩外食を済ませて宿に戻ってきたリリアはカウンターでアンナに呼び止められた。
「リリアちゃん、もう部屋に戻って休むのかい?それならマッサージでもどうだい?必要ない?… 実は、ここに泊まる旅のお客さんなんだけどね、バイトしながらの旅のお客さんがいて、仕事を紹介してあげたくてねぇ… リリアちゃんちょっとマッサージしてもらっておくれよ。そんないかがわしい仕事じゃないんだ、雇ってやってくれよ」アンナがリリアに声をかける。
「なんだか怪しくないか?」ダカットが呟く。
「アンナさんの知り合いなら信用はするけど… マッサージなんて別に…」
リリアが答えを渋っているとアンナがカウンターから出てきてリリアに耳打ちをする。
「実はね全盲のお客さんなんだよ。けっこうなお年で悪い人ではないみたいだよ。事情があって旅をしているんだよ、マッサージ頼んでおくれよ」
「全盲?あぁ、目が全然見えないのね。それでマッサージ… わかった、ちょっとしたら部屋に呼んでくれたらいいよ」リリアは承諾した。
事情を聞いたら承諾せざるを得ないといったところか…
リリアが部屋でゴロゴロしながら本を読んでいるとドアにノックがあり、ニイがやってきた。
「あっしはニイと申します。どうも失礼仕ります」ボソボソと挨拶しながら部屋に入ってきた。
“ニイ?変わった名前ね。外見からしても異国文化の人かな?“リリアの初見感想。
ニイは初老の人間男性、白髪頭、はやり目が見えていないのであろう、ぎこちなく瞬きをしては時折白目を見せている。
最近では貿易が盛んになり色んな文化の人をみるが、東の方の人だろうか?
この大陸の文化とは違った軽装備、杖で足元を探りながら部屋に入ってきた。
「………」
「…… えっと… じゃ、じゃあ、とりあえず寝っころがって… ってか、もう寝っ転がっているからマッサージお願いね」リリア。
寡黙な男性のようだ。リリアの方からお願いする。
ニイのマッサージは上手な方なのだろう、リリアも心地よくなる。
「冒険者?旅行者?珍しいお話聞かせてよ」リリアが土産話をせがむ。
ニイはボソボソと喋る男だが、リップサービスは悪くなかった。旅行等当たり障りのない話題はリリアに色々聞かせてくれた。なかなか面白い話を聞かせてくれた。
「お客さんはまだ若い、あっし見たてじゃ年は18,19,二十歳にはいってませんな。それに… この体つき、弓… お客さん弓を使いだ」ニイが言う。
「へぇ、わかるんだね、やっぱり目が見えない分手先が鋭いのかな?」リリアが答える。
熟練マッサージャーと言ったところだろうか。ニイは時々リリアが「目が見えているのかな?」と思わせるほど鋭い感をしているようだった。
まぁ、色んな能力の人がいるものだ、リリアもあまり気にもしない。
ニイは特に目的のある旅のようではなさそうだ。
はっきりとは答えないが、かいつまんで言うと一ヶ所に長くいる性分では無く、一ヶ所に長くいれる性分でもなく、足の向くままに旅をして回っていて、この港にたどり着いた、こんなところらしい。
「面白いねぇ。ニイさん、マッサージはもういいからちょっと外でお酒でも飲んで旅の話しをいっぱい聞かせてよ」
リリアが声をかけて二人は飲みに出かけた。
「このジィさん胡散臭いよ、目が見えるんじゃないか?」ダカットは不満そう。
おしゃべりリリアとボソボソニイは結構気が合うようだった。
ボソボソ話が逆に効果を高めるのかニイの旅行話は面白いものだった。
「もうそろそろこの港街を離れる?そっかぁ、まぁここは景気が良いけど治安が良くないものね、ニイさんならもっと落ち着いた街が良いかもね。ルーダリアの城下街とか周辺の村とかがいいのかな?えぇ!城下街まで歩く?いや、やめた方がいいよ、盗賊や人さらいが多いよ。大丈夫?…いやいや、ルーダリアの賊をなめちゃいけない!魔物も強いよ。リリアはこの国の勇者だからなんとかなるけど、目の見えないヨボヨボ老人なんて十歩くらい歩いたらスライムに消化されて食べられちゃうよ。こう見えてもリリアは凄腕だよ!… あ、そっか見えないのか… えっと…こう聞こえても弓は凄いのよ。だから今日まで生きてこれたけど、きっとニイさんはあっという間にトードに飲まれてる。あっという間劇場だよ。リリアが付き添えればいいけど、あたしも仕事できていて付き添えないよ。十日、いや二週間待てれば付き添うけど… そんなにここに居る気はない?うーん…じゃ、リリアが馬車賃だすからせめて城下までは馬車でいきなよ」
盲目のニイに歩かせるわけにはいかない、リリアは馬車停まで送る約束をした。
そして今朝、リリアとニイは落ち合って馬車停にむかった。
「良いわよね、気ままな一人旅も憧れるわね。城下街を目指すのね?あたしはルーダ・コートの街に住んでるの。ルーダの風ってバーが…酒場があるからいつでも寄ってね。仲間がいるよ、リリアは勇者だし冒険者としてウチのギルメン3人分の働きを…」リリアはニコニコとおしゃべりしながらニイと並んで歩いていく。
「あれぇ?ルーダリア城下街行き、ルーダ・コート、パウロ・コート、どこの駅馬車も満席だって。前はこの城門が始発だったけど、客が増えて港の方から始発が出るから確実に乗りたいならそっちがおすすめだって… 大した距離でもないし、そっち行こうか」
リリアが駅馬車のチケットを買おうとしたら既に満席のようだ。列が出来ている。
午前中に確実に席を確保するには船着き場付近の始発から乗るのが良いと言う、仕方が無いのでリリアはニイと移動。
「ニイさん、ちょっと坂道と階段が多いけど、船着き場の馬車停まで連れて行くよ」
リリアはニイの手を引くと活気に賑わう街中に戻り始めた。
ルーダ港の街の午前中は活気に満ち溢れている。
0
あなたにおすすめの小説
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
4人の勇者とЯΔMЦDΛ
無鳴-ヴィオ-
ファンタジー
5人の少年少女が勇者に選ばれ世界を救う話。
それぞれが主人公的存在。始まりの時代。そして、彼女達の物語。
炎の勇者、焔-ほむら- 女 13歳
水の勇者、萃-すい- 女 14歳
雷の勇者、空-そら- 女 13歳
土の勇者、楓-ふう- 女 13歳
木の勇者、来-らい- 男 12歳
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる