ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

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気が知れない者達

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「ふんっ・・・・帝国の皇帝からの書信か・・・・・」

 イシニス王国の玉座には、王太子が座っていた。

 アレキサンドライトからの書信を床に放り捨てた。

「王太子殿下・・・アレキサンドライトの国境には、テオドール皇太子が常駐しています。」
 側近がそう告げる。それをギロリと睨んだライディン王太子だった。

 ライディン・イシニス
 赤髪に、金色の瞳を持つ王太子。目つきは鋭く、アレキサンドライトの皇太子よりも年上だ。
 性格は残忍で、まさにテオドールとは相反する人物だった。

 テオドール・アレキサンドライトは帝国の皇太子として他国にとても有名だった。
 皇帝だけではなく、テオドール皇太子は優秀で剣術にも長けていてそして見目麗しく王国でも有名だ。

 その顔を思い浮かべてライディンは機嫌の悪い顔をした。

「ふっ・・・男のくせに女みたいな顔をしやがって、オリバンダーからの情報もあまり役に立たないな・・・。
 あんなに金をやったのにな。

 ・・・そういや、婚約者が暗殺者を向ける金だと言ったな。

 こちらがお膳立てしてやってるんだから、早く婚約者を奪ってしまえばいいものを・・・
 何をやってるんだか、せっかく引き離しているってのに。」


 ライディン王太子は、イシニス王国の国王を差し置いてその政権を握っていた。
 側には、王女のレベッカ・イシニスがいた。
 ライディン王太子はレベッカに憎らしく目を向けた。

「・・・はぁ・・・・レベッカ、お前が皇太子妃になれば事は簡単なんだがな。
 友好を示すと見せかけて、皇帝と皇太子の首を撥ねてやるのに・・・。」

 そんな王太子を冷ややかな瞳で見ていたレベッカ。

 レベッカ・イシニス
 ライディン王太子と同じ赤髪の王女。その目つきはライディンと同様吊り上がった目つきの
 冷ややかな美女だった。


「・・・では早くそうなさってくださいませ。私はテオドール皇太子の見目を気に入っておりますわよ?

 オリバンダーが皇太子妃にしてくれると言うから金を出してやったのに。

 一向に婚約者は始末出来ておりませんね?オリバンダーのような怪しい者に手を貸したのが
 間違いだったのではありませんか?」

「俺に意見するのか?レベッカ。誰のおかげで生きて居られると思っている?
 父上と一緒に地下室で眠って居たいか?」

 その性悪な顔のライディンにレベッカは、眉を吊り上げた。

「お兄様こそ、私の助けがあってその座についているのですよ?早く私を皇太子妃にしてくださいな。
 敵兵を送っている時点で、最早その道も途絶えるのでは?」

「お前を友好の証として妃にやると知らせを送る手筈だ。
 オリバンダーにも警告せねばな。さっさと片付けないとお前も始末すると・・・。」
 そう言って玉座から立ち上がると、アレキサンドライトの書信を踏みつけた。

「さっさと婚約者とその親を殺してしまえってーの」



 オリバンダー侯爵邸では、オリバンダーが悔しそうにリリィベルの姿絵を握りしめていた。

 すでにイシニスの兵士達をカドマンに送って貰って4日目となる。
 捨て駒の兵士は皇太子の手によって制圧され、しかも、身柄をカドマンで拘束されている。

 リリィベルに何度も暗殺者を向けても一向に捕らえられない。皇太子が居ない間に事が運ぶはずだった。
 また、北部のブラックウォールもレナードを含め腕利きの暗殺者を送っているのに、忍び込む事すら出来ないようだ。

「くそっ!!!なにもうまくいかないじゃないか!!!」

 たくさんあるリリィベルの姿絵をばら撒いた。

「‥‥早くリリィベルを捕まえたいのに‥」

 息子達は身代わりの女を抱く事でその欲を満たしている。
 けれどオリバンダーはそれで気が済まない。

 あの夜見た皇太子の強さを見て、それを奪い取るのが
 目標になっていた。

「ブリントンの陰だって‥役に立たない‥‥」


 あの夜やってきたレナードからの提案。初めこそ、殺される恐怖や皇太后がこちら側に着くとこに勝算を確信したが、父の知らせを送ってもリリィベルは外にも出ない。ダニエル・ブラックウォールも始末できない。何もかもが失敗の連続だった。


「・・・・くそっ・・・・」
 ギリっと歯を鳴らした。城にいるとは言え、何故こうもリリィベルに接触できる者がいないのか。

「・・・・皇太子と第二騎士団は不在だ・・・・絶対に隙があるはずだ・・・・・。」

 慎重に事を運ばねばならない・・・。でも、そろそろ我慢の限界だ。


「・・・・・・・。」
 深夜、ヘイドン侯爵家にオリバンダーが直接訪れた。
 応接間で、2人が向き合う。オリバンダーの目は怒りで満ちていた。

「レナードとかいう、ブリントン公爵家の使いの者と連絡を取りたいのですが?」

「私に言われても困る。」

「ブリントン公爵家には連絡するなと言われております。どうか取次をしてください。
 私はイシニスの件もあって、重要な役割を果たしているのですよ?
 これが知れ渡ればどうなるか、ヘイドン侯爵もおわかりですよね?」

 更にオリバンダーは続けた。
「ダニエル・ブラックウォールの悲報も全く聞けませんなぁ・・・。
 おかげで、婚約者は城から出る気配もありません。暗殺者も全く歯が立ちません。

 ・・・ヘイドン侯爵、何か知っている事はありませんか?」

 ヘイドン侯爵は険しい顔でオリバンダーを見た。

「そなたこそ、私にそんな口を聞いていいと思っているのか?お前がイシニスと繋がっているのは、
 先日の貴族会議でも知れ渡っている。お前がレベッカ王女を推薦した事で、皇帝陛下たちはさぞ今の現状をお前に問いただしたいと思っている事だろう。言い訳は考えているのか?」

「私は、国の発展の為に提案したまでであります。イシニスの襲撃について私が知る事など
 誰に分かるというのですか。あくまで、国の為だと申したではありませんか。」

「しかし、現に今カドマンで皇太子が自らイシニスの襲撃を防いでいるんだぞ!」

「それもすべて皇太后陛下のご指示です。イシニスの奇襲とブラックウォールを奇襲し、
 それに生じて婚約者を城の外から出すのだと。私はその命に従っただけで御座います。
 さすれば、お宅のお嬢様か、イシニスの王女、どちらかが皇太子妃の候補となるでしょう。

 襲撃もイシニスとの友好の為、皇太子が婚約すればすべてが丸く収まります。」

「・・・・そもそも・・・・イシニスに奇襲させた事が問題なのだ・・・・。」

 ヘイドン侯爵は、皇太后の企てにも疑念を持っていた。

 なぜ、リリィベルを外に出さねばいけないのか、その理由が分からないから余計に事が進まない。

 一体なぜ?あれだけ暗殺者が向けられているのに、無傷で今まで過ごしている。

 皇太子がいない間ですら、まったく成功した試しがない・・・・。


 城には何度も足を運んでいるが、絶対に何かあるはずだ。

 皇太后は決して口を割らないが、何か・・・・・。


「とにかく、リリィベルを外に連れ出せばよいのだろう・・・・。」
 ヘイドン侯爵はオリバンダーを睨みつけた。

「レナードとかいう男が、ダニエルブラックウォールを撃てるかどうかは知りませんが、

 リリィベルが外に出れば、私が始末を・・・・。後は、お嬢様と王女で皇太子の取り合いでもすればよろしい。そのためにイシニスの奇襲を受けているのですから。」

 オリバンダーは怪しく笑みを浮かべた。
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