98 / 240
再会のとき
しおりを挟む9日目の朝、テオドールは第二騎士団とイシニスの王族ら、罪人達を連れ王都へ戻ってきた。
城門をくぐった所で、玄関ホールからリリィベルがテオドールに向かって走ってやってくる。
それを見つけたテオドールは愛馬アースから飛び降り、
両手を広げた。
目一杯走ってきたリリィベルを受け止めるテオドール。
「テオっ‥‥‥」
「リリィ‥‥‥‥」
ぎゅっと抱きしめ合う2人は何年離れていたのだろうか。
「‥‥‥‥‥‥」
と言う目でロスウェル含め第二騎士団らまでもが見ていた。
ロスウェルは、2人の再会を冷めた目で見ながらも、
こっそり魔術で花びらを咲かせてあげたのだった。
騎士団達は、その花びらは2人から出ていると信じて疑いもしなかった。それ程、2人は感動の再会だったのだから。
「リリィ‥‥会いたかったぁ‥‥‥」
その華奢な肩に顔を埋めてその髪の感触、抱きしめて伝わる体温を存分に確かめた。
「私もっ‥‥‥ずっと‥‥お帰りを待っていましたっ‥」
リリィベルの瞳からはハラハラと涙が落ちる。
その可愛らしいリリィベルの姿に、騎士団は微笑ましく見た。可愛いものは可愛いのだ。
「ちょっとちょっと!!そんな目で見てたら殿下に斬られますよ!」
ロスウェルが小声でカールに話した。
カールまで微笑んでいる。
「あぁ、これはもう、兄の境地ですよ?ロスウェル殿。
みんな殿下の溺愛ぶりを嫌と言う程知っていますので、
そう、兄の様な、親戚の様な境地です。
見てください?泣いて喜んでます。可愛いですね。」
そう言ってみんなが朗らかに微笑んでいる。
さっきまではドン引きしてたけれど、
可愛いリリィベルの存在は、第二騎士団の中では、
姪っ子を見る様な境地となっていた。
「へぇ~‥第二騎士団は骨の髄まで殿下の部下ですね。」
ロスウェルの言葉にカールは笑って告げる。
「でなければ‥‥‥あの体力お化けの殿下の訓練にはついていけないんですよ。体力バカです。もーバカです。
今は愛に溺れるバカです。ははっ!もうすっごいバカ!」
そう言って4本の指でピシッとテオドールを指した。
「‥‥‥いいんですか?そんなに言って‥‥」
ロスウェルはテオドールの方をドキドキしながら見た。
だが、カールはテオドールを見ながら続ける。
「見てください?聞こえてると思いますか?
愛にズブズブで聞こえるわけないでしょ?
それに私達は殿下を敬愛しておりますっ‥‥
はぁ‥‥‥ほんと‥‥体力もバカで、愛もバカ。
もう愛すべきバカですっ。!
また1日でカドマンから戻るなんて‥‥‥
本当、頭イカれてんすよ‥‥」
最後はもう愚痴だった。
また1日で城まで駆け抜けさせられた。
ロスウェルは目を点にして聞き流そうとした。
今も変わらず、恋人の再会は続いている。
その間立ちっぱなしの刑の彼ら。リリィベルの可愛さが支えだった。可愛い姪っ子の眼差しで見てないとつらい。
テオドールはリリィベルを片腕に抱き上げて見上げる。
「また羽を減らしたな?リリィ?ちゃんと食べてたのか?」
「食べていましたっ‥お義母様と一緒にっ!信じてくださいっ‥」
「そうかぁ?抱き上げる度に軽いんだがな‥‥」
そう言ってリリィベルを抱き上げたまま城に向かって道を歩き出した。
やっと【待て】から解放され、皆が歩き始める。
「9日も離れていたのですっ‥私もお忘れになったのでは?」
ぷくっと頬を膨らませてリリィベルは意地を張った。
「忘れるわけねぇだろ。俺が軽いったら軽いんだよ。」
「今日の服のせいですっ‥着ている服が違うからっ‥」
「まー、昼間は忙しくて一緒に居られないが、
飯の時に確かめるからな?お前の食いっぷりが変わってないか。」
「テオっ‥テオこそ痩せたのではっ?」
「俺はいーんだよ。」
「ずるいですっずるい!」
「あんまり可愛い顔ばっかしてると食っちまうぞ!」
「っ‥‥‥人前ですっ‥‥。」
「ほら!だから早く一旦部屋に行くぞ。
あ、そうだ!おいカール!」
テオドールは振り向いた。
「あっ、はい殿下!」
「イシニスの奴ら厳重に放り込んでおけよ?」
「もちろんです!」
「あとお前、今から城門の外50周してこい」
「えっ?」
カールの目が点になる。
テオドールの目がギロリと光った。
「誰が愛にズブズブのバカだ聞こえてんだ馬鹿野郎がぁ‥‥‥」
そして、カール以外も睨み回した。
「お前らも、俺は地獄耳だからな‥‥‥。
下手な事口にしない方がいいぞ?
カールの二の舞になりたくなかったらなぁー?
わかってるなー?」
語尾の声のトーンをあげて聞いた。
「はい!!!皇太子殿下!!!!」
皆が拳を胸に当てて良い声で返事を返す。
「殿下ぁ!!!!50は嫌!!!!それは嫌!!!」
カールが必死に懇願した。
「るせぇー!!!じゃあ30!!」
「えっ!!ほんと?!」
「じゃあ150!!!!!!」
「死ぬ!!!」
テオドールはふっと吹き出した。
「嘘だよ!バーカ!!!」
この日、久しぶりに幸せで‥‥‥
嬉しそうなテオドールの笑顔がその場に咲いた。
2
あなたにおすすめの小説
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる