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少女の夢
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大舞台で、拍手に包まれた輝く人。
そしてその隣で花のように微笑む人。
私が描いた夢は、私と同じ‥
魔術師と言う者が、存在し、
2人の盾となり、私の夢を打ち砕いた‥。
「ライリー嬢、少しは休まれましたか?」
数ヶ月前、ポリセイオ王国に辿り着いた。
ライリー・ヘイドン侯爵令嬢は、ポリセイオの公爵邸で、
朝を迎えた。
従者に連れられ、訳も分からず丁重に扱われた。
侯爵令嬢であれば、なんの感情も持たない扱いだった。
ここは、生まれ育ったアレキサンドライト帝国ではない。
メイドに支度され、綺麗に着飾った姿で朝食を食べる事ができた。
ここに着くまでの間が嘘のようだった。
ダイニングテーブルの向かい席には、
優しげなこの、ライカンス・モンターリュ公爵が微笑んでいる。
「モンターリュ公爵様‥‥そろそろお話を‥‥。
私を何故‥‥いや‥‥父とはどう言ったご縁があったのでしょう‥ここは、帝国から離れたポリセイオ王国‥
何故私にこのような扱いを‥‥‥。」
食事の手を止めて、聞きたかった事を話した。
するとモンターリュ公爵は、目を細めて微笑んだ。
「ヘイドン侯爵は、古くからの友人です。
まぁ、この通り帝国とは距離がありますので、不思議に思うのも無理はありませんが‥‥。」
「友人‥‥?」
「ただの偶然、私は幼い頃、帝国にいた事があります。
それはただの旅行で、私は母と従者を連れて、帝国に旅行に行きました。
そこで、彼と出会い、友人となりました。」
取ってつけた様な話にライリーは眉を顰めた。
「きっかけは、私が街中で迷子になった所を、侯爵家のロバートが助けてくださったのが縁で、私達は数日間侯爵邸でお世話になったのですよ。彼とはとても仲良くなった。
手紙をやり取りする程の仲です。本当に知らなかったのですね。」
「ええ‥‥まったく‥‥。」
「それもそうですね。彼は侯爵家の人間。言わば帝国の重鎮だ。それが同盟国でもない国の公爵家の人間と関わりがあるのだから、変な誤解を生みかねない。
まあ、だからこうして、貴方を私は受け入れたのですが。
私は幼い頃助けてくれた恩返しですよ。」
「それは‥‥ありがとうございます‥‥‥。
けれど、あなたはどこまで‥‥。」
チラリと公爵を見た。何故自分がここに逃げてくる羽目になったのか。それが重要だ。
「ああ、もちろん、私は情報には敏感でね‥‥。
帝国の皇太子‥‥テオドール殿下が、婚約なさった‥。
私は君が、婚約者候補になるんだとばかり思っていたよ?
ロバートもよく言っていた。帝国で皇太子妃になるのは、
娘しか居ないのだと。常々聞いていた。
だが、皇太子は聞けば聞くほど風変わりな男だったね。
君の様な子を見初めないでいるなんてね。」
「‥‥‥。」
その言葉を聞いた時、ライリーはゾクリとした。
考えてみれば父の友人と言うだけで、知らない男。
父程の歳だが、まるで上から下まで見られる様な事があったなら抵抗する術はない。
「そんなに警戒しなくてもいいですよ?私はその手の趣味はありませんから。」
「そんな事は‥‥。」
モンターリュ公爵はニヤリと口角を上げた。
「姿絵を新聞で拝見致しました。実に‥‥お似合いの2人でしたね。」
「っ‥‥‥。」
「おや、失礼‥‥。」
ライリーの顔を見て、モンターリュ公爵は察した。
「ロバートと政治的な婚姻の計画なのだと思っていたのですが‥‥‥。これは‥失言でしたね。」
「‥‥‥ロバートの死は非常に残念です。」
公爵は急に悲しげな雰囲気で告げた。
ライリーの瞳には、涙が溜まった。
「あなた方侯爵家は、皇帝陛下に尽力されたはずなのに‥‥。」
「っあなたはっ‥‥どこまで知って‥‥‥!!」
「知らないはずはないでしょう?あなたが泥だらけで我が屋敷に来た。それはロバートがある事に関わった瞬間から、
何かあれば、私の元へ送ると文を出していたのだから‥。」
「お父様がっ‥‥?」
「ええ、帝国ブリントン公爵家の思惑に片足を入れた瞬間から‥‥暴かれれば逃れられない定めだったのです‥。
正確には‥‥セシリア・アレキサンドライトの思惑に、ですかね?」
「っ‥‥‥。」
ライリーはまたも背筋が凍る思いだった。
帝国の情報が父からポリセイオの公爵家に漏れている。
それだけでも、最早重罪だ。
「安心してください。あなたの身柄を引き渡す事はないですから。貴方はここで‥‥過ごされればよろしい。
せっかく命拾いをしたのですから‥‥。
皇太子の事は忘れて‥‥‥。どうせ、来年には既婚者になる。
皇太子は、それはそれは婚約者を溺愛していて、片時も離れずいる話は有名でしょう。なんせ、あの目見麗しい皇太子だ。どの国でもその容姿は有名だ。剣術にも優れ、頭もよく‥‥次代の皇帝として申し分ない‥‥。
まったく‥‥あの若さで罪なお方だ。
容姿であの令嬢を選ばれたのだとしたら、残酷ですね。
けれど、帝国予算の2年分の女性でしたっけ?
宝石の様な女性ですね。
高貴な男は、高貴なものに惹かれるのでしょう。
まぁ、辛い恋は忘れてしまえばいい。
ポリセイオにも目見麗しい男がおりますよ?
まぁ、平民。ですがね‥‥。」
「!!!なんですって‥‥?」
「当然でしょ?あなたは亡命してきたのですから、貴族と結ばれられるとでも?私は身柄は引き受けても、
私の養女にするとは言っていませんよ?
ただのその場しのぎ、隠れ家です。
そのうち平民の男にでも見初められて、2人で仲良く田畑を耕せばいい。愛があれば幸せでしょう。」
あれから何時間過ぎたのか‥
まともな食事を久しぶりに食べたのに、味は何も感じなかった。
ライリーは、ゲストルームのベッドの端に座り過ごした。
モンターリュ公爵の言った言葉が、頭から離れない。
侯爵令嬢、ライリーはもう死んだ。
侯爵家は没落し、本当ならば死ぬはずだった。
だが、生き延びた私は‥‥知らぬ世界の平民になる‥‥。
これまで不自由なく生きてきた。
平民達など、視界に入れた事もない。
私はあの王子と出会った瞬間に未来が決まっていたと信じていた。
私の手を取るのは、高貴な王子。
それに相応しい淑女としての教育。社交活動。
すべて、あの王子のため‥
嫌いになれたら‥‥‥。
時が、彼を消してくれるだろうか‥‥。
彼の様な輝かしく人間に出会えるなんて、
もう有り得ない‥‥
そんな事を思うほど、まだこの心は縛られている。
「もう無理よ・・・・。あきらめなさいよっ・・・・・。」
ぎゅっと目を瞑って、頭を振った。
私の中の幻の王子は、いつも氷のようだったじゃない・・・。
それなのに・・・リリィベルと出会ってからの皇太子を一目見てから・・・・
その目で私を見てほしい。そう思うようになってしまった・・・。
私が皇太子妃にならなかったら・・・私は政略結婚をいずれさせられる・・・・。
身分など関係なく愛せる人なんて・・・・現れない・・・・。
私の上にいるのは、皇太子・・・。
それなのに・・・・。
彼は・・・一度も、私を見て下さらなかった・・・・・。
だから・・・・
「・・・・・・・。」
いつの間にか、日が暮れた空に、満月が浮かんだ。
何色にも染まらなかった彼の銀髪は、あの満月のような黄金の・・・・
あの女のような色に染まった・・・。
「・・・・っ・・・殿下・・・・・。」
恋の涙を・・・流してしまう・・・。
亡くなった親よりも・・・頭に浮かぶ彼の顔・・・。
冷え切った目をしててもいい・・・・。
一度だけでいいから、見てほしかった・・・。
ダンスを踊ってほしかった・・・。
愛してくれなくてもいいから・・・一度だけでもその笑みを私にも見せてほしかった。
こんな思いをこのまま引きずってしまうくらいなら・・・。
あのまま、彼の前で・・・・
死んでしまえば良かった・・・。
生きていれば、耳に入る。彼と女の未来・・・。
見たくないわ・・・・聞きたくないわ・・・・。
本気で・・・あの女を・・・・殺してやりたかったのよ・・・・。
そしてその隣で花のように微笑む人。
私が描いた夢は、私と同じ‥
魔術師と言う者が、存在し、
2人の盾となり、私の夢を打ち砕いた‥。
「ライリー嬢、少しは休まれましたか?」
数ヶ月前、ポリセイオ王国に辿り着いた。
ライリー・ヘイドン侯爵令嬢は、ポリセイオの公爵邸で、
朝を迎えた。
従者に連れられ、訳も分からず丁重に扱われた。
侯爵令嬢であれば、なんの感情も持たない扱いだった。
ここは、生まれ育ったアレキサンドライト帝国ではない。
メイドに支度され、綺麗に着飾った姿で朝食を食べる事ができた。
ここに着くまでの間が嘘のようだった。
ダイニングテーブルの向かい席には、
優しげなこの、ライカンス・モンターリュ公爵が微笑んでいる。
「モンターリュ公爵様‥‥そろそろお話を‥‥。
私を何故‥‥いや‥‥父とはどう言ったご縁があったのでしょう‥ここは、帝国から離れたポリセイオ王国‥
何故私にこのような扱いを‥‥‥。」
食事の手を止めて、聞きたかった事を話した。
するとモンターリュ公爵は、目を細めて微笑んだ。
「ヘイドン侯爵は、古くからの友人です。
まぁ、この通り帝国とは距離がありますので、不思議に思うのも無理はありませんが‥‥。」
「友人‥‥?」
「ただの偶然、私は幼い頃、帝国にいた事があります。
それはただの旅行で、私は母と従者を連れて、帝国に旅行に行きました。
そこで、彼と出会い、友人となりました。」
取ってつけた様な話にライリーは眉を顰めた。
「きっかけは、私が街中で迷子になった所を、侯爵家のロバートが助けてくださったのが縁で、私達は数日間侯爵邸でお世話になったのですよ。彼とはとても仲良くなった。
手紙をやり取りする程の仲です。本当に知らなかったのですね。」
「ええ‥‥まったく‥‥。」
「それもそうですね。彼は侯爵家の人間。言わば帝国の重鎮だ。それが同盟国でもない国の公爵家の人間と関わりがあるのだから、変な誤解を生みかねない。
まあ、だからこうして、貴方を私は受け入れたのですが。
私は幼い頃助けてくれた恩返しですよ。」
「それは‥‥ありがとうございます‥‥‥。
けれど、あなたはどこまで‥‥。」
チラリと公爵を見た。何故自分がここに逃げてくる羽目になったのか。それが重要だ。
「ああ、もちろん、私は情報には敏感でね‥‥。
帝国の皇太子‥‥テオドール殿下が、婚約なさった‥。
私は君が、婚約者候補になるんだとばかり思っていたよ?
ロバートもよく言っていた。帝国で皇太子妃になるのは、
娘しか居ないのだと。常々聞いていた。
だが、皇太子は聞けば聞くほど風変わりな男だったね。
君の様な子を見初めないでいるなんてね。」
「‥‥‥。」
その言葉を聞いた時、ライリーはゾクリとした。
考えてみれば父の友人と言うだけで、知らない男。
父程の歳だが、まるで上から下まで見られる様な事があったなら抵抗する術はない。
「そんなに警戒しなくてもいいですよ?私はその手の趣味はありませんから。」
「そんな事は‥‥。」
モンターリュ公爵はニヤリと口角を上げた。
「姿絵を新聞で拝見致しました。実に‥‥お似合いの2人でしたね。」
「っ‥‥‥。」
「おや、失礼‥‥。」
ライリーの顔を見て、モンターリュ公爵は察した。
「ロバートと政治的な婚姻の計画なのだと思っていたのですが‥‥‥。これは‥失言でしたね。」
「‥‥‥ロバートの死は非常に残念です。」
公爵は急に悲しげな雰囲気で告げた。
ライリーの瞳には、涙が溜まった。
「あなた方侯爵家は、皇帝陛下に尽力されたはずなのに‥‥。」
「っあなたはっ‥‥どこまで知って‥‥‥!!」
「知らないはずはないでしょう?あなたが泥だらけで我が屋敷に来た。それはロバートがある事に関わった瞬間から、
何かあれば、私の元へ送ると文を出していたのだから‥。」
「お父様がっ‥‥?」
「ええ、帝国ブリントン公爵家の思惑に片足を入れた瞬間から‥‥暴かれれば逃れられない定めだったのです‥。
正確には‥‥セシリア・アレキサンドライトの思惑に、ですかね?」
「っ‥‥‥。」
ライリーはまたも背筋が凍る思いだった。
帝国の情報が父からポリセイオの公爵家に漏れている。
それだけでも、最早重罪だ。
「安心してください。あなたの身柄を引き渡す事はないですから。貴方はここで‥‥過ごされればよろしい。
せっかく命拾いをしたのですから‥‥。
皇太子の事は忘れて‥‥‥。どうせ、来年には既婚者になる。
皇太子は、それはそれは婚約者を溺愛していて、片時も離れずいる話は有名でしょう。なんせ、あの目見麗しい皇太子だ。どの国でもその容姿は有名だ。剣術にも優れ、頭もよく‥‥次代の皇帝として申し分ない‥‥。
まったく‥‥あの若さで罪なお方だ。
容姿であの令嬢を選ばれたのだとしたら、残酷ですね。
けれど、帝国予算の2年分の女性でしたっけ?
宝石の様な女性ですね。
高貴な男は、高貴なものに惹かれるのでしょう。
まぁ、辛い恋は忘れてしまえばいい。
ポリセイオにも目見麗しい男がおりますよ?
まぁ、平民。ですがね‥‥。」
「!!!なんですって‥‥?」
「当然でしょ?あなたは亡命してきたのですから、貴族と結ばれられるとでも?私は身柄は引き受けても、
私の養女にするとは言っていませんよ?
ただのその場しのぎ、隠れ家です。
そのうち平民の男にでも見初められて、2人で仲良く田畑を耕せばいい。愛があれば幸せでしょう。」
あれから何時間過ぎたのか‥
まともな食事を久しぶりに食べたのに、味は何も感じなかった。
ライリーは、ゲストルームのベッドの端に座り過ごした。
モンターリュ公爵の言った言葉が、頭から離れない。
侯爵令嬢、ライリーはもう死んだ。
侯爵家は没落し、本当ならば死ぬはずだった。
だが、生き延びた私は‥‥知らぬ世界の平民になる‥‥。
これまで不自由なく生きてきた。
平民達など、視界に入れた事もない。
私はあの王子と出会った瞬間に未来が決まっていたと信じていた。
私の手を取るのは、高貴な王子。
それに相応しい淑女としての教育。社交活動。
すべて、あの王子のため‥
嫌いになれたら‥‥‥。
時が、彼を消してくれるだろうか‥‥。
彼の様な輝かしく人間に出会えるなんて、
もう有り得ない‥‥
そんな事を思うほど、まだこの心は縛られている。
「もう無理よ・・・・。あきらめなさいよっ・・・・・。」
ぎゅっと目を瞑って、頭を振った。
私の中の幻の王子は、いつも氷のようだったじゃない・・・。
それなのに・・・リリィベルと出会ってからの皇太子を一目見てから・・・・
その目で私を見てほしい。そう思うようになってしまった・・・。
私が皇太子妃にならなかったら・・・私は政略結婚をいずれさせられる・・・・。
身分など関係なく愛せる人なんて・・・・現れない・・・・。
私の上にいるのは、皇太子・・・。
それなのに・・・・。
彼は・・・一度も、私を見て下さらなかった・・・・・。
だから・・・・
「・・・・・・・。」
いつの間にか、日が暮れた空に、満月が浮かんだ。
何色にも染まらなかった彼の銀髪は、あの満月のような黄金の・・・・
あの女のような色に染まった・・・。
「・・・・っ・・・殿下・・・・・。」
恋の涙を・・・流してしまう・・・。
亡くなった親よりも・・・頭に浮かぶ彼の顔・・・。
冷え切った目をしててもいい・・・・。
一度だけでいいから、見てほしかった・・・。
ダンスを踊ってほしかった・・・。
愛してくれなくてもいいから・・・一度だけでもその笑みを私にも見せてほしかった。
こんな思いをこのまま引きずってしまうくらいなら・・・。
あのまま、彼の前で・・・・
死んでしまえば良かった・・・。
生きていれば、耳に入る。彼と女の未来・・・。
見たくないわ・・・・聞きたくないわ・・・・。
本気で・・・あの女を・・・・殺してやりたかったのよ・・・・。
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※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
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