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繋いで、心 5
しおりを挟む「‥‥‥よし、正面からモンターリュ公爵邸へ行こう。」
「あの殿下、朝から?」
「おう、昼には城に乗り込んで国王の首を取り解決、帝国に帰る。」
「あの‥公爵家にもおりますよ?騎士団が。」
「だからどうした。」
テオドールはキョトンとした顔ではて?という顔だ。
ロスウェルはさすがに苦笑いした。
「殿下、私もおりますが、さすがに公爵家となれば騎士団がたくさんおりますでしょ?我々二人ですよ?」
「なんの為の俺とお前だよ。お前は魔術、俺は刀。
それで十分だろ。」
「いやいやいや、皇室騎士団くらいの量はいますよ?」
「だからなんだ。どうせこの公爵家をぶっ潰すんだ。
遠慮する必要があるか?騎士と名の付くやつはやられたって文句はないだろ。俺は無差別にやろうと言ってるわけじゃない。だがまぁ‥‥そもそも王妃を拘束した家だ。そんな事したから潰れるんだ。その後のことは王妃に判断させる。
誰を生かして、誰をおさらばさせるかは。」
「‥‥まぁ、では‥拘束しておくという事でよろしいですかね。」
「探しもんに邪魔になる奴は切り捨てる。
レティーシャ王妃が見せくれた公爵邸の見取り図だが‥‥。」
「私の魔術で辿れるといいのですが‥‥。」
ロスウェルはうーんと考え込んだ。
しかしテオドールはニッと笑った。
「なぁ、ロスウェル、お前は大事で見られたくない代物は何処に隠す?」
「え?‥‥私なら辿れない隠し倉庫とか‥‥。」
「あぁー、それじゃあ魔術使える奴にしか出来ねぇ技だなぁ。まぁその発想も仕方ねぇよなぁ‥‥。」
「殿下は何処です?」
「そうだなぁ‥‥‥誰にも見えないようになっているとしたら、何処に隠しても一緒だろ?要は、その辺に転がしておいても分からないって事だよな。まぁ、それでも隠しておくだろう‥‥‥。悪趣味野郎は、何処に隠すか‥‥楽しみだな。」
テオドールは幾つかの候補を胸の中で思い描いた。
「殿下!見当があるならちゃんと教えてくださいね!」
「お前が辿ってみるのが1番なんだがな。」
「そりゃやりますよ!魔術師の名にかけて!!」
パンと胸を叩いて強い意志を見せるロスウェル。
そんなロスウェルを見てニヤッと笑うテオドール。
「行く前に飯食って行こうぜ!あ、俺の髪黒髪にしてくれよ。変身しねぇとな街中は。」
ロスウェルの魔術で、2人はポリセイオ王都の路地裏に一瞬で転移した。黒髪になったテオドール、同じく黒髪にしたロスウェル。元々身なりはどこかの平民だ。だが、シャツに皺一つないのが少々気になるところだ。
そんな事はお構いなしにテオドールは堂々と王都を歩いた。
出店の美味しそうなパンの匂いに釣られてパンを買って頬張る姿は平民だった。妙に様になっていたのをロスウェルは横目に見ていた。
ポリセイオ王都は街中を流れる透き通った水路や噴水、水車が点々とあり涼しげで綺麗な街並みだった。冬なのに水が凍ることが無いほど、暖かい気候で、外套一つで済んでしまう。
キョロキョロ見渡してはテオドールはふむふむと感心している様子だ。
「殿下‥」
「それはやめろ。」
「失礼‥‥なんとお呼びしましょうか‥。」
そう言うと少し考えてテオドールはニッと笑った。
「テオでいいだろ。」
「あ‥よろしいので?」
「いいんじゃん?」
「ではその様に‥‥。」
「ま、テオドールなんて珍しいか?バレないぞ?」
「お忍びには付き物でしょ?」
「形から入るのは嫌いじゃねぇけどな。しっかし、あったけーなポリセイオ‥俺動いたら外套もいらねー気がする。」
最後の一口のパンを口に放り込んで、パンパンと手を叩いた。
「さて、腹ごしらえもしたし、いつでもいーぞ俺は。」
「せっかちですねぇ、相変わらず‥‥。」
ロスウェルはもしゃもしゃとまだパンを食べていた。
その隣で身体を伸ばしテオドールは生き生きしていた。
どうも戦い間近になるとテオドールの気分は上がりに上がる。
要するにすでに出来上がっている。
柔軟体操を始めて、今か今かと心待ちにしている。
そんな様子にロスウェルもふと笑った。
最後の一口を飲み込んだ所で、ロスウェルもパンクズを払いテオドールに笑みを見せた。
「では、行きましょっか?」
「おう、行こうぜ。宝探し。」
気合十分の2人、人の居ない場に出ると、
パチンと指を鳴らした。
「じゃじゃん!!!」
転移した直後、テオドールは堂々と効果音をつけた。
「ははっ、楽しそうですね。人の気も知らないで。」
「へっ、これは悪党退治だろ?」
テオドールが目の前に右手を出すと、ロスウェルは黙って隠しておいた刀を出した。それをテオドールが握る。
「よし、門番からぶっ飛ばそうぜ。」
刀を肩に引っ掛けて、テオドールはさっさと歩き始めた。
モンターリュ公爵邸の立派な門に、兵士が2人両端に立っている。
前方からやってくる不審者2人に気付くと、兵士はその様子を不審に思い身構えた。
「何者だ!」
1人がそう言うとテオドールはニヤリと笑う。
「曲者だ。」
「なっ‥‥なにぃっ?」
自分から曲者などと言って堂々とやってくる。
ゾクりとするその気迫に、兵士達は剣を抜いた。
「これ以上近寄るな!!ここを何処だと思っている!」
「へへっ、もちろん知ってるさ‥‥‥
俺達を止めてみな‥‥モンターリュ公爵の兵士達。」
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