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第二話
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部屋をカーテンで二つに分けて、それぞれ正装に着替える。
白のワンピースドレスに袖を通して、コルセットを自分で蒔く。
紐で苦しくない様に調節する。細いほど美しいとされているが、私にとってはどうでもいい。
わざわざ、辛い思いをして美しくなんてなりたくない。
コルセットの下部にはレースの布があり、スカートを二重で履いているように見える。
次は化粧をしないといけない。
鏡が置かれたテーブルに向かって座り、化粧を始める。
「お嬢、カーテン開けますよ?」
カーテンの端から手を出して掴み、反対側に移動させてまとめる。
深緑の軍服を着て、左肩から黄色で太い紐緒をつけていた。
右胸にはイエルハート家の旗印である、剣と槍を交差させて中央に羽ばたいた鷲が彫られた金メッキのブローチをつけている。
「あら、似合ってるじゃない。普段は堅苦しいと文句言うのにね」
クロウは着づらそうに、襟に指を入れて小刻み動かしていた。
「皮肉ですか?お嬢こそ、ドレス似合ってますよ?」
完全にバカにされている。
左手薬指で薄紅の口紅をつけて、上唇を塗って一度手を止めた。
私はとっさにテーブルの上にメモ帳の上に置かれていた万年筆を右手で握り、クロウに向かって思いっ切り投げ付ける。
空を切る音を立てて、彼の顔に迫る。
けれど、彼の顔に当たる前にその音は止まってしまう。
クロウは握り潰すようにして万年筆を受け止めていた。
「お嬢、物は投げてはいけないって」
私がきつく睨みつけると、彼はへらへらした笑みを浮かべて万年筆をきれいに握り直して、テーブルの元合った位置に置き直した。
今度は子供扱いされた。本当に腹が立つ。
「当たりなさいよ。その薄ら笑みは見てるだけで気に障る」
「俺も痛いのは勘弁ですよ」
クロウがテーブルから離れると同時に、扉を3回ノックされた。時間だ。
下唇にも口紅を付けると、指についている口紅を水で洗う。
手を付けると赤い線が溶けて、透明な水の中へと消えた。
ストールを上から着て、いつものサファイアのペンダントを首からぶら下げる。
「クロウ、帯刀しなさい。私の剣も持つ事、いいね?」
彼はいつものベルトを軍服の腰に巻き付けて、右腰に差して私のバスタードは右手にしっかりと握られていた。
私は、ハイヒールを履いてから、扉を3回ノックする。
白髪でやせ型の老人がタキシードを着て立っていた。
「フィオラ・ライト・イエルハート様。時間になりましたのでご案内させていただきます」
私は二つ返事で答えると彼の先導の元、後ろを着いていく。
クロウは私の右後ろでを着いてきた。私よりも身長が高い彼はいつもよりも小さい歩幅で、歩く速度を調節している。
廊下を進んでいる最中は誰とも会わなかった。
執事たちが鉢合わせしない様に調節しているのだろう。
貴族同士でも全員が仲がいいわけではないのだから。
廊下を抜けてから、入口の大広間の階段を上り、豪華な二枚扉を開けた先の最上階、謁見の間へと通された。
中央の赤い絨毯を挟んで、2つの椅子と天板が小さいテーブルが合計30組近く用意されていた。
テーブルの上にはガラス製のコップが二つとウォーターポットが置かれている。
最奥には2つの金で出来た椅子を中心に左に3つ、右に2つの銀で出来た椅子が置かれている。
金の椅子は国王と妃が座り、銀の椅子にはその子息が座る。
既に5名ほど座っていた。それぞれの後ろには騎士が腰に手を当てて立っている者もいれば、用意されている椅子に座っている者もいた。
私達が通されたのは、左側の奥から2番目の椅子だった。私達が座ると執事がコップ二つに水を注いでから立ち去る。
「お嬢、ここわくわくしますよ。強そうなのがいる」
私の左側に座っている彼が、小声で話しかけられた。
「止めなさい。ここはそういう所じゃないから、大人しくしなさい」
この男は戦いの事しか頭にないのだろうか。この人斬りバカめ。
私が答えると彼は大人しくなる。
しかし、次々に貴族や地方の騎士団元帥が入ると落ち着きが無さそうに、両手を小刻みに動かしていた。
この癖だけは、どうしても直す事が出来なかった。
席がすべて埋まると静まり返って、天井からそれぞれの紋章が描かれた天幕が降ろされた。
「それでは、これよりエヴァン・イシュタール15世による会談を始めさせて頂きます」
左右からまずは銀の椅子にご子息が座る。その後ろには彼らの騎士が鞘に納められた儀礼用の剣を両手で持って自分の足元に差した。
一番右端に赤髪のあの子がいた。
ヴァイオレット・エヴァン・イシュタール。次女で末っ子である。
子供の頃に5年ほど、イエルハート家の領地で共に過ごした。
離れても手紙や王城へ行く機会があればたまに会う事にしていた。
「あの男、一番強い」
そう呟いて、クロウの目つきが鋭くなる。
後ろに立っていた白の鎧に銀の装飾が施された彼をジッと見つめていた。
国王が入ると謁見の間に座っていた私も含めて全員が一斉に立ち上がる。
しかし、妃の席は空席だった。既にこの世にいないのだから。
マクバーン・エヴァン・イシュタール。ロイレシア法主王国の王。
手を挙げてから静かに手を降ろすと同時に全員が座った。
「皆の者。はるか遠い地から呼び寄せてすまない」
最初の言葉は謝罪から始まった。一通りの話が終わると私と視線が合った。
「ロイが座る席に知らぬ女がいる。名乗れ」
私はゆっくりと立ち上がり、王の方を向いた。
スカートのすそを少しだけつまんで、片足を下げてから頭を下げる。
クロウが持っていたバスタードを手に取ってから、青く分厚い刀身を抜いた。
「ロイ・ライト・イエルハートが娘。フィオラ・ライト・イエルハートでございます」
貴族に取って紋章と同じぐらいに、自身が持つ武器は身分を示す大きな役割を持つ。
「父は不治の病を患っており、動けない為、私めが代理としてこの会談に参加させていただきました」
不治の病という単語を聞いて、一同が少しざわついた。
私のお父様はかつては、マクバーン様の騎士として戦友として共に戦っていたと聞いている。魔人と恐れられ尊敬される騎士でもあった。
そして、国内が安定すると騎士の座を離れて元の貴族として領土で過ごすことになる。
「そうか、ロイの娘か。失礼した下がりたまえ」
バスタードをクロウに渡してから鞘に納めさせて、両手を前で重ねて、深くお辞儀をしてから元の席に戻る。
他の貴族たちの視線が、気になったが無視した。クロウの睨むような目つきでやがて視線は届かなくなった。
「ヴァイオレット、前へ」
マクバーン様が声を掛けると右端に座っていた彼女は立ち上がってから、前へと移動した。
懐にしまっていた丸くなっている紙を広げた。
一度咳払いをしてから、大きく息を吸う。
「ヴァイオレット・エヴァン・イシュタール。かつてのわが領土で北方の大防衛要塞であるガルバード大要塞の攻略と周辺領土の奪還を命じる!」
謁見の間で動揺とざわつきに小言が一気に広がる。
ロイレシア法主王国の北に存在する軍事国家のライトランス帝国に占領されている大要塞だ。
幾度も奪還を目指して出兵を繰り返して、20年間領土の奪い合いを繰り返している。
その結果、泥沼化した戦場の現在は、国王直属の第一騎士団が戦線の維持していが、春になると侵攻が再開されるだろう。
「父上、その命令承りました。ヴァイオレットは素晴らしき戦果を持って戻ってまいります」
手紙を受け取ると歓声が沸いた。この戦いに武勲を立てる事が出来ればこの国の歴史に名を遺す事が出来る。
けれど、私は彼女よりも一人だけ、気になったが人がいた。
左最奥に座っている三男のレイウス様が拍手をせずに、自身の騎士に耳打ちをしている。
友好国である東の隣国、フェンリア共和国に出した遠征軍で指揮をして、戦果から現時点でもっとも王座に近いとされている。
「きっと、最後は……」
「お嬢?」
同じように無表情で見ていたクロウが、小さく呟いていた私に声を掛けた。
「ううん。なんでもない」
私は誰が王になっても平和な時代が続けばいいと思っている。
けれど、この国の王族は親族の欲望にまみれた血が確実に流れるのだから。
白のワンピースドレスに袖を通して、コルセットを自分で蒔く。
紐で苦しくない様に調節する。細いほど美しいとされているが、私にとってはどうでもいい。
わざわざ、辛い思いをして美しくなんてなりたくない。
コルセットの下部にはレースの布があり、スカートを二重で履いているように見える。
次は化粧をしないといけない。
鏡が置かれたテーブルに向かって座り、化粧を始める。
「お嬢、カーテン開けますよ?」
カーテンの端から手を出して掴み、反対側に移動させてまとめる。
深緑の軍服を着て、左肩から黄色で太い紐緒をつけていた。
右胸にはイエルハート家の旗印である、剣と槍を交差させて中央に羽ばたいた鷲が彫られた金メッキのブローチをつけている。
「あら、似合ってるじゃない。普段は堅苦しいと文句言うのにね」
クロウは着づらそうに、襟に指を入れて小刻み動かしていた。
「皮肉ですか?お嬢こそ、ドレス似合ってますよ?」
完全にバカにされている。
左手薬指で薄紅の口紅をつけて、上唇を塗って一度手を止めた。
私はとっさにテーブルの上にメモ帳の上に置かれていた万年筆を右手で握り、クロウに向かって思いっ切り投げ付ける。
空を切る音を立てて、彼の顔に迫る。
けれど、彼の顔に当たる前にその音は止まってしまう。
クロウは握り潰すようにして万年筆を受け止めていた。
「お嬢、物は投げてはいけないって」
私がきつく睨みつけると、彼はへらへらした笑みを浮かべて万年筆をきれいに握り直して、テーブルの元合った位置に置き直した。
今度は子供扱いされた。本当に腹が立つ。
「当たりなさいよ。その薄ら笑みは見てるだけで気に障る」
「俺も痛いのは勘弁ですよ」
クロウがテーブルから離れると同時に、扉を3回ノックされた。時間だ。
下唇にも口紅を付けると、指についている口紅を水で洗う。
手を付けると赤い線が溶けて、透明な水の中へと消えた。
ストールを上から着て、いつものサファイアのペンダントを首からぶら下げる。
「クロウ、帯刀しなさい。私の剣も持つ事、いいね?」
彼はいつものベルトを軍服の腰に巻き付けて、右腰に差して私のバスタードは右手にしっかりと握られていた。
私は、ハイヒールを履いてから、扉を3回ノックする。
白髪でやせ型の老人がタキシードを着て立っていた。
「フィオラ・ライト・イエルハート様。時間になりましたのでご案内させていただきます」
私は二つ返事で答えると彼の先導の元、後ろを着いていく。
クロウは私の右後ろでを着いてきた。私よりも身長が高い彼はいつもよりも小さい歩幅で、歩く速度を調節している。
廊下を進んでいる最中は誰とも会わなかった。
執事たちが鉢合わせしない様に調節しているのだろう。
貴族同士でも全員が仲がいいわけではないのだから。
廊下を抜けてから、入口の大広間の階段を上り、豪華な二枚扉を開けた先の最上階、謁見の間へと通された。
中央の赤い絨毯を挟んで、2つの椅子と天板が小さいテーブルが合計30組近く用意されていた。
テーブルの上にはガラス製のコップが二つとウォーターポットが置かれている。
最奥には2つの金で出来た椅子を中心に左に3つ、右に2つの銀で出来た椅子が置かれている。
金の椅子は国王と妃が座り、銀の椅子にはその子息が座る。
既に5名ほど座っていた。それぞれの後ろには騎士が腰に手を当てて立っている者もいれば、用意されている椅子に座っている者もいた。
私達が通されたのは、左側の奥から2番目の椅子だった。私達が座ると執事がコップ二つに水を注いでから立ち去る。
「お嬢、ここわくわくしますよ。強そうなのがいる」
私の左側に座っている彼が、小声で話しかけられた。
「止めなさい。ここはそういう所じゃないから、大人しくしなさい」
この男は戦いの事しか頭にないのだろうか。この人斬りバカめ。
私が答えると彼は大人しくなる。
しかし、次々に貴族や地方の騎士団元帥が入ると落ち着きが無さそうに、両手を小刻みに動かしていた。
この癖だけは、どうしても直す事が出来なかった。
席がすべて埋まると静まり返って、天井からそれぞれの紋章が描かれた天幕が降ろされた。
「それでは、これよりエヴァン・イシュタール15世による会談を始めさせて頂きます」
左右からまずは銀の椅子にご子息が座る。その後ろには彼らの騎士が鞘に納められた儀礼用の剣を両手で持って自分の足元に差した。
一番右端に赤髪のあの子がいた。
ヴァイオレット・エヴァン・イシュタール。次女で末っ子である。
子供の頃に5年ほど、イエルハート家の領地で共に過ごした。
離れても手紙や王城へ行く機会があればたまに会う事にしていた。
「あの男、一番強い」
そう呟いて、クロウの目つきが鋭くなる。
後ろに立っていた白の鎧に銀の装飾が施された彼をジッと見つめていた。
国王が入ると謁見の間に座っていた私も含めて全員が一斉に立ち上がる。
しかし、妃の席は空席だった。既にこの世にいないのだから。
マクバーン・エヴァン・イシュタール。ロイレシア法主王国の王。
手を挙げてから静かに手を降ろすと同時に全員が座った。
「皆の者。はるか遠い地から呼び寄せてすまない」
最初の言葉は謝罪から始まった。一通りの話が終わると私と視線が合った。
「ロイが座る席に知らぬ女がいる。名乗れ」
私はゆっくりと立ち上がり、王の方を向いた。
スカートのすそを少しだけつまんで、片足を下げてから頭を下げる。
クロウが持っていたバスタードを手に取ってから、青く分厚い刀身を抜いた。
「ロイ・ライト・イエルハートが娘。フィオラ・ライト・イエルハートでございます」
貴族に取って紋章と同じぐらいに、自身が持つ武器は身分を示す大きな役割を持つ。
「父は不治の病を患っており、動けない為、私めが代理としてこの会談に参加させていただきました」
不治の病という単語を聞いて、一同が少しざわついた。
私のお父様はかつては、マクバーン様の騎士として戦友として共に戦っていたと聞いている。魔人と恐れられ尊敬される騎士でもあった。
そして、国内が安定すると騎士の座を離れて元の貴族として領土で過ごすことになる。
「そうか、ロイの娘か。失礼した下がりたまえ」
バスタードをクロウに渡してから鞘に納めさせて、両手を前で重ねて、深くお辞儀をしてから元の席に戻る。
他の貴族たちの視線が、気になったが無視した。クロウの睨むような目つきでやがて視線は届かなくなった。
「ヴァイオレット、前へ」
マクバーン様が声を掛けると右端に座っていた彼女は立ち上がってから、前へと移動した。
懐にしまっていた丸くなっている紙を広げた。
一度咳払いをしてから、大きく息を吸う。
「ヴァイオレット・エヴァン・イシュタール。かつてのわが領土で北方の大防衛要塞であるガルバード大要塞の攻略と周辺領土の奪還を命じる!」
謁見の間で動揺とざわつきに小言が一気に広がる。
ロイレシア法主王国の北に存在する軍事国家のライトランス帝国に占領されている大要塞だ。
幾度も奪還を目指して出兵を繰り返して、20年間領土の奪い合いを繰り返している。
その結果、泥沼化した戦場の現在は、国王直属の第一騎士団が戦線の維持していが、春になると侵攻が再開されるだろう。
「父上、その命令承りました。ヴァイオレットは素晴らしき戦果を持って戻ってまいります」
手紙を受け取ると歓声が沸いた。この戦いに武勲を立てる事が出来ればこの国の歴史に名を遺す事が出来る。
けれど、私は彼女よりも一人だけ、気になったが人がいた。
左最奥に座っている三男のレイウス様が拍手をせずに、自身の騎士に耳打ちをしている。
友好国である東の隣国、フェンリア共和国に出した遠征軍で指揮をして、戦果から現時点でもっとも王座に近いとされている。
「きっと、最後は……」
「お嬢?」
同じように無表情で見ていたクロウが、小さく呟いていた私に声を掛けた。
「ううん。なんでもない」
私は誰が王になっても平和な時代が続けばいいと思っている。
けれど、この国の王族は親族の欲望にまみれた血が確実に流れるのだから。
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