悪役令嬢は訳あり執事に溺愛される

さらさ

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⑤ジェフリー公爵

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ヘンリー王子との面会が早く終わったのは良いけれど、この後どうしようかしら。
お父様はお仕事中だし、ミカもお父様の仕事をしていると思うので邪魔をしちゃダメよね。わたくしはアフタヌーンティーを頂いたあとの退室予定だったのでお迎えもまだ来ないはず。どうしましょう。

とりあえず部屋を出てお父様の執務室の方へ向かって歩いていると、後ろから声をかけられた。

「レイラ嬢?」

どなたかしら?
振り返ると、そこにはジェフリー・ルシフェル・イルザンド公爵様が立っていた。
ジェフリー様は現国王陛下の末の弟君で、乙ゲーの五人いる攻略対象の一人です。

わたくしは主人公では無いので関係ないけれど、レイラとジェフリー様は仲が良く、主人公が嫉妬するシーンがあったと思います。

「ジェフリー様、ごきげんよう。」

「こんにちは、なにかお困りのように見えましたが?」

ジェフリー様は確か御歳二十七歳で王族らしい金髪の髪を背中まで伸ばして一つに束ねている。瞳の色は灰色で大人の物腰を携えた美形紳士です。
ゲームの中ではレイラとジェフリー様のお話は出てこなかったので、どのような仲なのかはよく分からないけれど、仲良くするのは問題ないわよね。
でも、さすがジェフリー様、困ってるのがよく分かりましたわね!
 
「ええ、少し時間が出来てしまって、とりあえず父の元へ行こうかと思っておりましたの。」

「そうでしたか、では私に少しお時間を頂いてもよろしいですか?」

ジェフリー様は物腰柔らかに私に尋ねる。

「時間・・・ですか?空いていますけれど・・・」

なにか御用かしら? 

「では、あちらでお茶などいかがでしょう?」

「はい、ご一緒させていただきますわ。」

にっこり笑って返すとジェフリー様はクスリと笑ったけれど、レイラは気が付かなかった。

ジェフリー様に連れられてやって来たのは城の西側の庭園にある東屋のひとつだった。普段目につかない奥地ににあるその場所は緑豊かな場所で、周りに色とりどりの花が咲き乱れ幻想的な空間になっている。

「まぁ・・・ここは素敵なところですわね。」

「私の秘密の場所なんです。」

「こんな素敵な場所があったなんて、知りませんでしたわ、さすがジェフリー様ですわね!」

今まで見たことの無い景色にわくわくする。

「気に入って頂けたようで良かったです。お茶とお菓子を用意させましたのでゆっくりしていきましょう。」

レイラのはしゃぎ様にくすくすと笑いながらお茶を進めるジェフリー様。

「まぁ、まぁ、とても可愛らしいお菓子ばかりですわね!食べるのが勿体無いですわ。」

レイラは色とりどりのお菓子にキラキラとした瞳で眺める。

「まだありますので遠慮なくどうぞ。」

ジェフリー様に促されて一つお皿に取って食べ始める。
甘さが控えめでとても美味しい。

わたくしはしばらく目の前のお菓子に夢中になっていたけれど、ハタと我に返る。

「ジェフリー様、わたくしに何か御用でした?」

ジェフリー様を見るとほおづえを付きながらにこにことわたくしを見ていた。

「あの、なにか?」

わたくしの顔になにかついているのかしら、ホイップクリームがついているの?
慌てて口元をナプキンで拭う。

「くくっ、なにか付いているわけではございませんよ、ただ、レイラ嬢があまりにもお可愛らしくいらっしゃるので、つい見つめてしまいました。申し訳ございません。」

くすくすと笑いながら答えるジェフリー様。
なんだかわたくし失態を犯してしまったようです。
思わず顔に熱が出るのがわかって下を向く。

「先日とは随分違いますね。」

唐突に先日と言われてなんのことか戸惑う。

「先日?と言いますと?」

なんの事かしら。

「先日の私のパーティでの貴方とは別人だなと思いまして。」

ジェフリー様の言葉を聞いて背筋がスーッと寒くなる。
リサ様をいじめた時だわ。ジェフリー様、見ていらっしゃったのかしら。

「な、なんのことですか?わたくしはいつも同じですけれど?」

「私もレイラ嬢の十五歳のデビュタントまでは、可愛らしいご令嬢だという認識で、さほど気にしていなかったのですが、公の場ではなんだか無理して大人ぶってる樣に見えましてね、大人びた振りをしたいお年頃かとは思いますが、無理をしておいでのようで気になりまして。」

ジェフリー様はテーブルに両肘をつき、組んだ手の甲に顎を乗せてわたくしをじっと観察するように見つめる。

「ぜんぜんそんな事ございませんわよ、わたくし、いつも通りですわ。」

「そうですか?転んだリサ嬢に手を伸ばしそうになっていましたが、何故引っ込められたのですか?私の気のせいでしたか?」

思いっきり見ていらっしゃったのね!

「わたくしも気分が優れなくなってしまって・・・お先に失礼したのですわ。」

「そうでしたね、すみません、変な事を聞いてしまって。」

「いえ、お気にかけて頂いて光栄ですわ。」

私はにっこり笑ったけれど、ジェフリー様はなんだかまだ伺うような表情です。

ゔ、素晴らしいお菓子達の味がしませんわ・・・

しばらく気まずい空気でわたくしの事を観察していたジェフリー様が、わたくしがお茶を飲み終わったのと同時に話し出す。

「ちょうどお迎えが来たみたいだね。」

そう言って歩いてきた小道を見る。
私もつられて小道を見ると、そこにはミカが頭を下げて立っていた。

「え?どうしてミカが?」

わたくしまだ呼んでいないわ。

「迎えをよこすように頼んでおいたのです。」

ジェフリー様がにっこり笑う。
ジェフリー様凄い!どうして分かったのかしら。

「今日はご一緒出来て楽しかったです。またお誘いしても良いでしょうか?」

「わたくしこそ、困っている事全てお見通しでしたのね、助けていただいてありがとうございます。ぜひまたご一緒させて下さいませ。」

そう言って素敵な東屋を後にした。











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