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⑪やっぱりラルフ様は変わってる?
しおりを挟む「お屋敷の何処をご覧になりますか?」
サーシスが私に確認を促す。
さっきのお話、サーシスはラルフ様の事をとても愛していらっしゃるのね。あ、変な意味ではなくてね。
だからラルフ様も信頼していらっしゃるんだわ。
「この前案内していただいた時に、1階に不思議なお部屋があった気がするのだけど・・・あれは何かしら?」
「ああ、和室ですね、初めてご覧になるでしょう?分かります。」
サーシスが苦笑を浮かべる。
「あれはなんなのですか?またラルフ様の案ですか?」
「ええ、ここに屋敷を作る時にどうしても作りたいから空けといてくれって言われた場所にラルフ様が作られました。あれも、着物同様、異国の地の部屋だそうです。」
「ラルフ様はあの空間魔法で遠い異国を体験なさったのでしょうか?」
あの空間魔法があれば異国を旅するのも夢ではないわよね。
「いえ、それは無いと思います。」
私の考えをすぐにサーシスが否定する。
「あの魔法は繋げる地のことをよく分かってないと危険ですし、繋げた場所に誰がいるか分からないと、ラルフ様の能力を知られてしまう可能性もあります。なので、基本あまり使われません。今回は国内だと言うことと、人の多くない僻地、しかもアレクシス様も同行されてますので使われたのでしょう。城に行く時も内密な訪問以外の公式なものは基本馬車で移動されます。ラルフ様は極力疑われる行動は取られません。」
そうだったのね、とても便利なのに、ラルフ様も目立たないためとはいえ、窮屈じゃないのかしら・・・
「じゃあ、本か何かで勉強されたのかしら?」
「それも無いです。ラルフ様が仰るようなものはどの書物にも出てきません。私にも不思議なのです。まるで観てきたかのように再現なされる。それがラルフ様の頭の中での想像なのか、本当にどこかで見たものなのか・・・後者はありえないのですがね。」
サーシスの困ったような顔に、ラルフ様の聡明さがさらに際立ってしまうのが分かる。
ラルフ様が想像で作られているのなら、ラルフ様は本当の天才ではないかしら。
「着きましたよ。こちらです。」
話してるうちに和室と言う部屋に到着した。
入口は普通の部屋のドアなんだけど、入るともう一度壁があって、横に空けるドアがある。
この前はここまでしか見ていないのよね。
ドアの中にドア?なんでって思ったのだけど・・・
「入口のドアはカモフラージュです。」
サーシスが答えてくれる。
横に開けるドアを開けると中は不思議な空間になっていた。
変わったカーペット。
一枚のカーペットではなくて、何枚かに区切られている。窓には不思議なブラインドが掛けられていて、ソファーも何も無い質素なお部屋で、部屋全体がとても変わった香りのするお部屋。
「ここは靴を脱いでお入りください。」
「え?そうなの?」
「ラルフ様はこの上に直にお座りになったり、寝転ばれたりしています。」
「そうなの?」
床に寝転がるなんて・・・本当に変わってるわ・・・
「入りますか?」
「いえ、ラルフ様とご一緒の時の方が良さそうね。」
この部屋をどう使っていいのか私には分からないもの。
「かしこまりました。この部屋、ラルフ様は落ち着くと仰るのですが、私にはよく分からないのです。」
確かに、その気持ちはよく分からないわね。
私も頷いて同意する。
「他になにか気になるところは?」
「あ、気になるといえば、お風呂!シャワーと言うの?とても便利なものがあったのだけど、あれもラルフ様が?」
「ええ、あれはラルフ様が魔法で作られたのでよく分かっていないのですが、この屋敷のみのものなので外ではお話されませんように。」
「ええ、わかったわ。ラルフ様は本当に多方面で博識なのね。」
なんだかラルフ様の事がとても頼もしくて、誇らしくなる。
「ええ、そうですね。私も傍使えとして誇らしくあります。」
なんだかサーシスと心が通じあってしまったみたい。
おかしくなってくすくすと笑う。
そんな様子をサーシスはニッコリ笑って眺めていた。
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