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⑲ラルフ様のお誘い

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「今日は邪魔が入っちゃったね、姉上が帰るまでしばらくお預けだね。」

ラルフ様はにっこり笑って残念そうに言った後、しばらく考える。

「・・・ねぇ、やっぱり今晩リリアーナの部屋に行ってもいい?」

「え?今晩ですか?」

突然言われて焦る。
今はお姉様がこのお屋敷にいらっしゃるのよ?何考えてるの?
今晩来るって言うのはそういう意味よね?他に何かあるのかしら?

「今はお姉様がいらっしゃっいますわ・・・」

「大丈夫、防音結界を張るから外には漏れないよ。」

それって、やっぱりそういう意味よね?

「声が漏れると思うと出せないだろ?リリアーナの可愛い声いっぱい聞きたいからちゃんと邪魔されないようにするよ。」

ラルフ様はウインクしながらお茶目に話されるけど、それ、どう受け取ればいいの?めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。

お姉様がお屋敷の中に居ると思うだけで緊張するのに・・・

「お姉様がお帰りになってからではダメですか?」

「やっぱり、いきなりはハードル高いか、・・・うん、そうだよね。」

にっこり笑ってあきらめの早いラルフ様。急にそんなこと言うなんて、何かあったのかしら?

「ラルフ様、何か思うところがありました?」

「いや、俺の考え過ぎだと思うから気にしないで、リリアーナとの初めては大切にしたいよね。」

ラルフ様、さっきからそんなにはっきり言われると照れます。
またどうしていいかわからなくなって私は無言のままそっぽを向いてしまう。

その様子を見てラルフ様は優しく私の頭を撫でてくださる。

「ごめんね、リリアーナに変に意識させちゃったね、今のは忘れてね。」

ラルフ様の考えている事は分からないけど、私の事を想って下さっているのだということは分かる。

お受けした方が良かったのかしら・・・

「リリアーナ、もう考えなくていいからね、俺が悪かった。」

私の考えている事をまた読んだのか、ラルフ様が少し照れながら話す。
どうしてラルフ様に分かってしまうのかしら・・・

「とにかく、一度着替えてくる?夕食までそのままで居る?」

そう言われて、着物ドレスを着たままだった事を思い出す。

「あ、そう言えば、着たままでしたわね。」

全然違和感がなかったので忘れてたわ。

そんな私の様子を見てラルフ様がくすくすと笑う。

「そんなに違和感ないほど馴染んで着てくれてたなんて嬉しいな。」

「本当に私に合わせて頂いただけあってすごく着心地がいいんです。・・・そんなに笑わないでください。」

ラルフ様の笑顔は本当に天使のようで羨ましいわね。

「ごめん、それじゃぁそのままでいる?」

「いえ、汚すといけないので着替えてきます。」

「分かった、じゃあ、後でね。」




その日の夕食はセリーヌ様もご一緒になりました。

「エリオット様ったら、また新しい女性に声を掛けていたのよ?許せないと思わない?」

セリーヌ様はお酒をいい感じに召し上がって旦那様の愚痴をこぼしていらっしゃいます。

「別に、話してただけだろう?侯爵はそんなに女性にだらしないようには見えないけど?」

「ラルフレッド!あなた、エリオット様の肩を持つつもり?」

ラルフ様の言葉に、セリーヌ様が突っかかる。

「本当のことじゃん・・・実際浮気してるわけじゃないのに、姉上が騒いでるだけでしょ?」

「そんなことないわ!絶対浮気してるのよ!」 

逆上するセリーヌ様に比べてラルフ様は至って冷静、面倒くさそうに答えている。

「姉上、姉上程の美人で、しかも国王の娘を妻にして、これ以上何か不満があると思いますか?」

「あ、ラルフレッド、私の事美人だと思う?ラルフレッドに言われるのが一番嬉しいわ。」

セリーヌ様が嬉しそうにラルフ様を見る。

「あー、うん、そうですね、美人だと思いますよ。」

ラルフ様、棒読みですわよ。
お姉様に対して失礼じゃないかしら。
セリーヌ様はとても美しい方なのに、ラルフ様にはそう見えていないのかしら?

「ラルフレッドにそう言って貰えると、エリオット様から受けた心の傷も癒えるわ。」

セリーヌ様がとりあえず嬉しそうなのでいいのかしら・・・

「それで?あなた達はいつ結婚したの?私聞いてなかったわよ。それに、リリアーナさんは確か最近婚約破棄された所じゃなくて?」

セリーヌ様が私をちらりと見てからラルフ様を見る。

「一ヶ月半ほど前だよ。俺が前からリリアーナに惚れてたんだ。リリアーナが婚約破棄されたって聞いてすぐに結婚を申し込みに行った。父上も了解してくれてるよ。」

「そうなの?ラルフレッドに好きな子なんていたの?」

セリーヌ様は知らなかったようでとても驚いている。

「姉上には言ってないからね。」

ラルフ様は冷めた答えを返す。

「どうして言ってくれなかったの?」

「姉上に言ったら嫉妬するか、俺の為にって無理やりリリアーナを奪うかどっちかでしょ。」

「そうね、確かに・・・嫉妬してるわね。」

セリーヌ様はご自分の心に正直に答える。

「だから言わなかったんだよ。」

ラルフ様、セリーヌ様の事もお見通しなのね、やっぱり凄いわ。




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