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⑳グレンという人
しおりを挟む昨日も思ったけど、ここの食事は美味しい。
なんかよく分からない料理だし、食材も分からないけど、あえてなんなのか聞く気は無い。聞いてグロいものだったら嫌だし・・・とりあえず美味しいからそれでいいや。
「美味しいねー。」
俺はもぐもぐ食べながらユリアンさんを見る。
「そうですね、ここの食事が美味しくてよかったですね。」
「まだあるからいくらでも食べろ。」
グレンも一緒に食べてるんだけど、グレンは少しも食べない。見てるだけ。そういえば、昨夜もそうだった気がする。
「グレン、食べないの?」
「ん?食べてるぞ。」
そう言って見せてくれたのはワインの入ったグラス。
「グレン、それは食べ物じゃないよ。」
ボケてるのかな?
「昨日も食べてなかったでしょ?食べないと元気でないよ?」
「俺は大丈夫だ。少し食欲がなくてな。気にしないでくれ。」
そう言うグレンはまた元気がないように見える。
気にしないでって言うなら気にしないけどさ、ご飯食べないなら俺貰っちゃうよ?
「俺の分も食べていいぞ。」
おお、俺の心読まれた?
「シンラは顔に出るからわかりやすいな。」
そう言われて、顔に出てたのか・・・と反省。
「ふくれた顔も可愛いけど、もっと笑った顔を見せてくれ。」
グレンが方肘を肘掛についてその手に顎を乗せて俺を見る。
「笑えって言われて笑えるもんじゃないでしょ。」
「それもそうだな。だがもっと笑ってくれないと、お前を抱くぞ。」
淡々と話すグレン。
!何その脅迫!怖いんだけど!
「それはやだ!」
「じゃ、笑え。」
そう言ってニヤリと笑う。
うう・・・遊ばれてる・・・。
笑えって言われても、可笑しくもないのに笑えないよぉ・・・
「シンラ、ここに来るまでの道中の話を魔王陛下にして差しあげてはどうでしょう?」
ユリアンさんが提案してくれる。
「うん、そうだねー。」
俺は道中の話、ジョシュアさんってエロい兄ちゃんの話、初めて魔法で戦った話なんかをしてあげた。
グレンはその話をにこにこと、時には相槌をうったり、質問したりしながら聞いてくれた。
グレンって意外と聞き上手?
俺、そんなに話し上手じゃないのに、なんか上手く乗せられた感じ。
でも、全然嫌じゃなくて、気持ちよく話をさせてもらった感じだ。
「グレンって聞き上手だね。」
俺は思ったことを素直に口に出す。
「そうか?シンラがにこにこ笑って楽しそうに話してくれるから、聞いていて楽しかったぞ。」
そう言われて気がつく。話してる間、俺、にこにこしてた。だって楽しかったもん。
そう思うと、ユリアンさんってさすが!
俺が話してる時ににこにこ笑顔になるの分かってて話すように言ってくれたんだ!
俺はユリアンさんを尊敬の眼差しで見ると、ユリアンさんはにっこり微笑んで俺を見ていた。
「ユリアンさん、ありがとう。」
俺はまたにっこり笑っていた。
「シンラの笑顔も沢山見れたし、少し楽になった。ありがとう。今日はゆっくり過ごすといい。」
グレンはそう言った後、部屋を出て行った。
「魔王陛下は悪い人では無さそうですね。」
グレンが居なくなった後、ユリアンさんが言う。
「そうだね。」
そうなんだ。女の子を自分の快楽のためだけに物として扱う酷いやつかと思ってたのに、何か違った。
まだ会ったばかりだから本当のところは分からないけど、今の所、最初に無理矢理俺を抱こうとして以来、無理に抱こうとはしない。俺が笑顔で浄化出来るとわかったからなのかも知れない。たまにからかって俺を抱こうとするのも、本心からでないとわかる。何処か優しい表情を見せるんだ。
でも、たまに見せる寂しげな表情、気にならないふりをしてるけど、ちょっと気になる。
寂しげな表情の時のグレンは今にも泣き出してしまいそうだから・・・
グレンは俺が本当に嫌がる事はしない。・・・と思う。まだ完全に信用してる訳じゃないけど、グレンはいい人なのかもしれない・・・
「シンラ?どうしました?」
俺が考え込んでいると、ユリアンさんが顔を覗き込んでくる。
「あ、なんでもないよ。ちょっとぼーっとしてた。」
「大丈夫ですか?」
ユリアンさんが心配そうに見るのでにっこり笑って返す。
「シンラ、すみませんが、報告ををしておきたいので、私を家まで送って貰ってもいいですか?」
「うん、いいよ。」
「シンラを一人にするのは心配ですが・・・」
困ったように俺を見るユリアンさん。
「くすくす。ユリアンさんは本当に心配性だね。俺は大丈夫だよ。」
俺って本当にユリアンさんに泣き虫だと思われてるっぽい。
「じゃ、行くよ?」
「ええ、お願いします。」
俺は自分が居たユリアンさんの家の部屋を思い浮かべて移動した。
「本当に便利ですね。」
「えへへ、こんなことが出来るとは思わなかったけどね。夕方くらいに迎えに来ればいい?」
「ええ、お願いします。」
「じゃあ、夕方ね。」
俺は手を振りながらユリアンさんを置いて魔王城に戻った。
思い浮かべたのはさっき食事をしていた部屋だ。
しまった、自分の部屋を思い浮かべれば良かった。
そう思いながらも、部屋までは歩いて行こうと思い、自室を目指した。
流石にちょっとは動かないと、食べてばっかりだとブタさんになっちゃうよね。
「すみません。」
部屋までもう少しの所で、誰かに後ろから声を掛けられた。
誰?
振り向いた瞬間、なにかを口に当てられて、グラりと辺りが回ったと思ったら俺はそのまま気を失った。
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