侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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5話 合同練習

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「何で俺を座らせた!あんな奴らボコボコにしてやったのに!」

三人が立ち去った後、ギルが苛立たしげに僕を見る。

「ギルが僕の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、場所が悪い、教官に目をつけられたらギルの評価が下がるよ、それに・・・僕は評価を下げたくない!」

その言葉に、ギルの勢いが下がる。

「・・・悪かった。」

シュンとするギルに僕はにっと悪戯っぽく笑いかける。

「それに・・・さっきの奴ら、四班の連中だよ。」

僕のその言葉に、ギルもピンと来たのか、ニヤリと笑う。

「そうだったのか!アイツら・・・覚えてろよ!」

明後日は四班との合同練習だ。
公の場でボコボコにしても怒られない、むしろ評価も上がる最高の舞台があるのに気が付いたから、僕は冷静でいられた。



四班との合同練習当日、朝からギルは張り切っている様子だ。

「クリス、この前の三人、どっちがやる?」

今日は木刀なので思う存分やれる。
ギルもこの前バカにされたウサを晴らしたいみたいだけど、僕もバカにされたことは頭に来てる。

「うーん、その場の雰囲気かな、三人ともやっちゃったらごめん。」

僕はとりあえずギルに謝っておく。

「いや、お前の方が頭にきてるだろ?全部お前にやるよ、援護は任せろ。」

僕の冷静な言葉に、ギルも冷静さを取り戻す。
僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「ギル!それやめて!」

ギルはすぐに僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「ああ、すまん、つい。」

そう言って、くしゃくしゃになった僕の髪を撫で付ける。

「もう!」

僕はいつも怒るんだけど、ギルはまた繰り返す。そんなに撫でやすい頭してるのかな・・・?



合同練習はお互いの班が胸につけてる班の印を多く奪った方が勝ちという単純なゲームだ。
木刀で殴ってもいいけど、殺しちゃったら即失格、やり合いたくなかったら早めに自分の持ってる印を相手に渡してもいい。
会場は広いので、なにもせず逃げ切っても勝ちだな。
もちろん印を取られた時点でゲームには参加できなくなる。
時間内に多く残ってた方が勝ちだ。


「あれ?この前の腰抜けチビじゃん。」

班同士が向かい合って挨拶した時、三人のうちのリーダーっぽい奴が僕に気がついて話し掛ける。

「この前はどうも。」

僕は普通に挨拶を返す。

「はははっ、またビビってるんじゃないのか?」

可笑しそうに笑う三人。
好きなように笑ってくれ、今のうちに・・・

「おい、この可愛いチビちゃんは可哀想だから最後にしてやろうぜ。」

リーダーっぽいのが、他の奴らにも声をかける。

「そりゃどーも。」

僕の班の連中は相手が地雷を踏みまくってるのに気が付いているので、僕を不安そうにチラチラと見ている。

「大丈夫、殺したりはしないから。」

班の連中にウインクしながらそっと声を掛けたつもりだったけど、何故か後から「天使のウインクは恐ろしい」と言われるようになった。
なんでだ?

「これはチーム戦だ。作戦通り、俺とクリスが前に出るから、ダンとカール、マーカスは他の奴らの盾になってくれ。もちろん、みんなも油断するな、取られるなよ!」

「うん。」
「任せとけ!」

開戦前のミーティングで、ギルの指揮にみんなが従う。

そして、大きくラッパが鳴り響いた。

「初め!」

開始の合図と共に、僕達は陣形を作る。
相手の奴らも基本は同じだ。

「おいおい、チビちゃん、いきなり捨て身の攻撃?デカいの、チビちゃんを囮に使う気か?」

僕とギルが前に出たのを見て、リーダーっぽい奴が僕を見て挑発して来た。

奴は中間に居る。
ギルが「任せろ」と言うので、前にいる五人はギルに任せる。

僕は相手に向かってにっこり微笑んでみせた後、一番端の奴目掛けて走って行くと、相手が構える。それを剣で交わしてから懐に入り込むと、胸ぐらを片手で掴んでくるりと相手から背を向ける。
そのまま勢いで相手を投げつけると、他の四人はギルに足止めされているのでそのまま三人の元へ向かう。

「な、」

僕たちの手際の良さに三人が怯む。
さっきまでの威勢はどうした。

「さんざん僕の事をチビだのお嬢ちゃんだの言ったこと後悔させてやるよ。」

僕はにっこり微笑むと、木刀を構えた。

虚勢を張ってた割には呆気なかった。
三人対僕なのでもう少し歯応えがあるかと思ったのに・・・

その後、先鋒の五人を片付けたギルと合流して、後は時間を余らせる形で三班の勝利に終わった。

僕は腹に入れてやった一撃に苦しむリーダーの前に立つと手を差し出した。

「僕になんか言うことあるでしょ?」

「う・・・悪かった・・・」

僕の差し出した手に捕まって立ち上がりながら、情けない声で、謝る。

「うん、僕体のことでバカにされるの嫌いだから、今度からは気をつけてね。」

僕はにっこり笑うと、ギルたちの元に戻った。




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