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2話 おい、お兄様!
しおりを挟む「エリシア、顔見せて? エリシアの可愛い顔に傷でも着いたら大変だ 」
心配そうに、私が顔を隠す手を外そうとしているのは私の兄、ジルフレアだ。
お兄様、やめて、顔をわざと隠してるんだから!
「お兄様、今笑ってましたよね? 」
恨みがましくお兄様を上目遣いに見る。
「いや、ごめん、エリシアがあまりにも見事に扉に体当たりしてったからつい、どれ、見せて? 」
私を優しく見つめて私の手にそっと手を添えるお兄様は、ご令嬢方からとても人気のイケメンです。
父の爵位は子爵ですが、お兄様はとても優秀なようで、将来出世間違いなしと騒がれているほどなので、レオンハルト様と人気を二分されています。
物語りの中ではレオンハルト様の婚約者のクリスティーナ様に恋してしまい、レオンハルト様と争った仲なのですが、どうやらここでは今の所違うようで、何故かお兄様は私を溺愛しています。
だから、レオンハルト様に私を紹介しようなんて、絶対考えないと思っていたのに・・・私が甘かったわ。
お兄様は私と同じ金色の髪にアメジストのような紫の瞳で私を見つめる。 その瞳に思わずドキッとして、手を緩めると、手を顔から離されてしまった。
「少し鼻とおでこが赤くなってるね、酷い音がしたから、痛かっただろ? 」
「うん・・・」
お兄様、顔が近いです。
いくら兄妹とはいえ、好みのお顔のお兄様にここまでされると照れます。
「ジル、仲の良い所申し訳ないが、そこの綺麗なお嬢さんを紹介してくれないか? 」
「ああ、ごめん、そのために来てもらったのにね 」
レオンハルト様に促されて、ジルフレア兄様が私を見る。そして、私の背中に手を回してレオンハルト様と向き合うよう促された。
だから、会いたくないんだってば!
「レオンハルト様、妹のエリシアです。今日は妹の誕生日パーティーに来ていただいてありがとうございます 」
いやいや、なんで呼んだのよ、私聞いてないわよ?
「エリシア嬢、レオンハルトです。さっきは本当にごめん、今日は貴方の誕生日をお祝い出来たらと思って来てしまいました 」
レオンハルト様はにっこり微笑んだ後手を差し出される。
仕方がない、覚悟を決めて挨拶をしたらさっさと退席しよう。
「初めまして、エリシアと申します。今日レオンハルト様が来て下さるとは思わず、とんだ失態をお見せしてしまってお恥ずかしいです 」
そう言って差し出された手に手を添えた。
目はあえて合わせない。
「ジルがとても自慢するだけあって本当に美しい方だ 」
「そんな・・・とんでもございません 」
「あ、エリシアは私の大事な妹なんだから、手は出さないでくださいよ! 」
「そんな事しないよ、でも、ずっと気になってた人にやっと会えたんだ、少しくらい話をさせてくれてもいいじゃないか 」
は? ずっと気になってた? まさか! だって、私は社交界には極力参加しないようにしてるし、たまに行ってもレオンハルト様のお目に触れないよう、遠く離れた場所に居たのに、なんで? 一度も接触なんてしてないわよ!
レオンハルト様ってもしかしてタラシ? そう言えば令嬢が喜ぶと思ってる?
残念ながら私は普通の令嬢じゃないんです。
確かに、顔も声もどストライクなんだけど、揉め事に巻き込まれるのはごめんだわ。
「レオンハルト様、お上手ですわね、でも、今日はこれで・・・」
「エリシア、私が妥協してレオンハルト様をお連れしたんだから、今日くらいは相手して差し上げてよ 」
失礼致します・・・って言葉が出る前にお兄様が重ねて話しかける。
お兄様・・・お兄様は私が大事じゃないの? 何王子様に売ってるのよ!
言葉を邪魔されてお兄様をにらみつける。
「ほら、そんな顔しないで、不貞腐れた顔も可愛くて好きだけどさ、今日はにっこり笑顔でレオンハルト様とお話しよう、ほら、こっちに席を用意させてるからおいで 」
お兄様が強引なのはいつもの事だけど、今日ばかりは「はいそうですか」と従えないわ。
「お兄様、私先程から気分が優れないのです。頭をぶつけたからかしら・・・」
ここは仮病で切り抜けて、何としてもレオンハルト様とお近づきになるのは避けなければ。
「え? 大丈夫か? 」
「はい・・・少し目眩もするので、休めば楽になると思います 」
よし、これで切り抜けられる!
そう思った瞬間、私の身体はふわりと浮き上がっていた。
「っ?!」
突然の事に驚いて何が起こったのか確認すると、私はレオンハルト様に抱き上げられていた。
「いきなり失礼、目眩がするならあまり頭を動かさず、すぐに休んだ方がいい、ジル、エリシア嬢の部屋は? それと、医者を呼んで 」
何故かテキパキと指示を出すレオンハルト様。
あまりにも素敵なお顔が目の前にあって、一瞬見とれてしまっていたけど、これはヤバい。
「レオンハルト様、私大丈夫です。一人で戻れますわ、下ろしてください 」
赤面した顔を隠すように俯きながら懇願したけど、下ろしてくれる様子はない。
「エリシア嬢、これは私の責任でもあるんだ、少しだけ我慢してくれないか? 」
子供をあやす様に優しく甘い声で、息が掛かるほど近くでレオンハルト様の声がする。
そんな優しい声で話しかけないでよ!
「レオンハルト様、部屋へは侍女が案内する、私は医者を手配してくるから、妹をよろしく、あ、絶対手は出さないでくださいよ! 」
唯一の頼りのお兄様はそう言い残して部屋を出ていってしまった。
ちょっと待って! お兄様!!
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