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10話 その表情は何?
しおりを挟む「貴方転生者でしょ!」
「・・・・・・」
クリスティーナ様に指さされながらそう言われて一瞬思考が停止したけど、そう、それよ、物語の設定からすると、クリスティーナ様は転生者でないといけない。
だからクリスティーナ様は転生者では無いかとはずっと思っていたのよ。
でも、今クリスティーナ様は私に向かって「転生者か」と聞いた。
「え? 」
「とぼけても無駄よ、こんなにシナリオが狂うってことは私の他に転生者が居てシナリオ通りに進めていない人がいると思ったのよ 」
確かに、私は関わりたくないのでイベントは避けて生きてきたわ。
「それが何故私だと思われたのですか? 」
「だって、物語だと、貴方はもっと私の前に姿を表して関わって来るはずなのに、今日まで出会うことも無かったわ、だから、貴方が影でレオンハルト様と上手くやってると思ったんだけど・・・違うの? 」
「違います 」
影でコソコソなんてとんでもない。そんな事したらクリスティーナ様が私を敵視するだけじゃない。
「じゃあ何故?・・・」
考え込むクリスティーナ様に私は少し近付いてこっそり話しかけた。
「転生者だと見抜かれたのは流石ですわ 」
クリスティーナ様は目を大きく開いて私を凝視する。
「やっぱり! 」
「でも、私はクリスティーナ様にギャフンされる未来が分かってて突っ走るなんてしないわ。出来ればレオンハルト様ともクリスティーナ様とも関わらず、ひっそりと生きて行きたいのよ、クリスティーナ様がレオンハルト様狙いなら、私は邪魔なんてしないわ 」
「本当に? 」
クリスティーナ様は虚をつかれたように私を見つめる。
「ええ 」
私はそんな疑うクリスティーナ様に、敵意など無いと分かるように笑顔でにっこりとほほ笑みかける。
「私達、前世の物語を知ってる者どうし、いいお友達になれると思うの 」
その言葉にクリスティーナ様も頷いて微笑む。
「それもそうね! 」
クリスティー様とお近づきになってしまったのは計算外だけど、私はレオンハルト様には興味無いし、懐に入り込んでしまって仲良くしていれば問題ないわよね・・・
それから私達は前世の話しで盛り上がった。
「それで、婚約の話が上がった時にやっと物語が始まると思ったのに、お会いする前にレオンハルト様からお断りされちゃって、何で? って思ったのよ 」
「それは不思議ね、レオンハルト様は何故シナリオ通りに動かなかったのかしら・・・」
そう言ってからふと私達の共通項に思い当たる。
「ねえ! もしかしてレオンハルト様も転生者? 」
「まさか! 」
私の思いつきにクリスティーナ様は信じられないとでも言うように両手で口をおおって眼を大きく開く。
けれど、少し思案して何か思い当たったのか、何かを思い出すように下を向く。
「・・・そうなの?でも、それなら納得が行くわね・・・ 」
クリスティーナ様も私の思いつきに納得したのか頷く。
「でも、そうだとすると、私との婚約を断ったって事は、レオンハルト様は私に興味が無いという事? そんな・・・ 」
「そんなことないと思うわ、きっと何か理由があるのよ、とにかく、レオンハルト様が本当に転生者なのか確認しないといけないわね 」
しまった、結局クリスティーナ様が振られた事の決定打になっちゃうじゃない! 何とかしないと・・・と思い話をごまかしたけれど、もしレオンハルト様が転生者だとしたら何を考えてシナリオから外れた行動を取っているのか気になるわね。
そういう自分もシナリオから外れた行動を取ってるんだけど、破滅へのシナリオを知ってて従う子なんて居ないと思うの!
私の事は置いといて、私はクリスティーナ様に睨まれないように行動しなくてはね!
「エリシア様、今日はありがとう、私もレオンハルト様の事調べてみるわ、じゃあ、これで失礼するわ、またね! 」
何かを思案していたクリスティーナ様は行動を思い立ったのか、手を振りながらその場を離れていった。
「エリシア、ここに居たのか 」
一人になってから色々と考え事をしていると、お兄様が私の所にやってきた。
「お兄様、どうかなさいまして? 」
「もう、遅い時間だからお邪魔しようと思ってエリシアを探してたんだ。ずっとここに居たのか? レオンハルト様は? 」
そう言われて、レオンハルト様と一度も話をしていないことに気がついた。
ここにずっと居たから話をしたければ探せば見つかるはず。
なのに最初の挨拶から一度も姿を見ていないわ。別に話したかった訳じゃないし、関わらずに済んだならいい事なんだけど、じゃあ、何故私をエサで釣ってまで呼んだの?
もしクリスティーナ様が居たから来れなかったというなら、クリスティーナ様が居なくなってから随分経つから来る気があれば来れたはず。
意味がわからないわ。
ホールの中を見ると、レオンハルト様は女性方に囲まれて楽しそうにお話している。
楽しいならそれでいいけど、私をこんな所まで引っ張り出しておいてどういう事?
ちょっとイラッとしながらレオンハルト様を見ていると不意にこっちを向いて目が合った。
ヤバっ、目が合っちゃったけど、どうすればいい? と、何故かレオンハルト様から目が離せずにあたふたしていると、しばらく合っていた目をレオンハルト様が不意に逸らす。
何事も無かったかのように。
え? 今、目合ってたわよね? 普通会釈とか、にっこりするとか何かしない? 今のは明らかに私を捉えたけれど、物か何かを見た時のような無機質な表情だった。
なによ、わざわざ呼び出しておいてその対応はどういう事なの?
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