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9話 悪役令嬢と呼ばれるヒロイン
しおりを挟む「殿下、本日はお招きいただきましてありがとうございます 」
会場に到着すると、まず主催者であるレオンハルト様の所へ向かった。
お兄様が挨拶したのに併せて私も斜め後ろで淑女の礼をとる。
「ジル、エリシア嬢、よく来てくれたね、今日はゆっくり楽しんでいってね 」
レオンハルト様はこの前着ていた普段着のラフな感じとは打って変わって、正装をしているのでめちゃくちゃカッコイイ。さすが王子様だわね。
そんなことを思っていると、レオンハルト様は直ぐに別の方の所へ挨拶に行ってしまった。
よし、後は壁際族になるだけね。
「お兄様、私はあちらで休んでますわ 」
お兄様は男性からも女性からも人気があるので直ぐに囲まれてしまった。私に話が振られる前に離れないと巻き込まれてしまう。
お話中で聞こえなかったのか、お兄様からの返事はなかったけど、そのままお兄様から離れて誰もいない壁際の席に移動した。
ワインを手に壁際の席に座ったけれど、周りがチラチラと私を見る視線が居心地悪い。
もう少し人目に触れない場所は無いかしら・・・
そう思って当たりを見回していると、不意に横に立つ人影に気がついた。
誰? 何気に振り向いて隣に立つ人物を見た瞬間、息が止まる。
げっ、クリスティーナ様?
「こちらですわ 」
「は?」
突然クリスティーナ様が私を促すように話しかけて来て、なんのことか分からず困惑する。
「落ち着ける場所をお探しなのでしょう? あちらにございますわ 」
私を周りから隠すように前に回ってにっこり微笑みながら中庭を指すクリスティーナ様。
赤い綺麗な髪は背中の辺りからウエーブを描いて腰まで落ちる柔らかな印象で、ラピスラズリのような深い蒼の瞳は長い睫毛がその大きな瞳を覆い、柔らかに微笑む姿はまるで絵の中から抜け出てきた女神様を思わせる。
はーっ、ため息が出るくらいめちゃくちゃ美人だわ。
「私の顔になにか着いていまして? 」
「いえ、何でもありません 」
この人には関わっちゃいけないナンバーワンのクリスティーナ様に、何故か私は言われるがまま着いてきてしまった。
「改めまして、私クリスティーナ・ワーグナーと申します。お初にお目にかかりますわね、エリシア様 」
「エリシア・ドロウシスと申します。私の事をご存知頂けていたとは、光栄ですわ 」
何故私の事をクリスティーナ様が知っているのか、ドキッとしたけれど、謎は直ぐに解けた。
「お兄様のジルフレア様は有名ですもの、そのジルフレア様の妹ぎみを知らぬ者の方が少ないですわ 」
マジですか・・・極力目立たないように生きてきたつもりなのに、あのお兄様のせいで私まで目立っていたとか・・・気が付かなかったわ。
私に興味なんて持っても何も無いわよ!ってアピールしとかなくちゃ!
「まぁ、光栄ですわ。でも兄は兄です。私は平凡な娘ですわ 」
にっこり淑女のように微笑みながら答える。顔、引き攣りませんように・・・
「・・・そうでしょうか? 」
さっきまで見せていた人好きする微笑みを引っ込めて、クリスティーナ様は私を意味ありげに見つめる。
「え? そうでしょうかとは?」
「貴方、レオンハルト様に取り入ってるでしょ 」
「は? 何故でしょう? 取り入ってなどおりませんが 」
何言い出すの? 私がレオンハルト様に取り入る? そんな事するはずないじゃない。関わりたくもないのに!
「貴方もレオンハルト様に恋焦がれているんじゃなくて? 」
どうやらクリスティーナ様は何か勘違いされているようだわ。ここははっきり言っておかなきゃ。
「いいえ、全然 」
「え? 」
真顔で答える私に、今度はクリスティーナ様が困惑した表情で私を見る。
「何故そのように思われたのですか? 」
今度は私の質問にクリスティーナ様が戸惑った表情を見せた。けれど、その表情は一瞬で消える。
「3年前に私とレオンハルト様に婚約のお話がありました 」
ええ、知ってるわ。そうよね? そこで婚約してるはずなんだけど、何故してないのか気になるわ。
「婚約されたのですか? 」
私の質問に、クリスティーナ様は明らかに苦虫を噛み潰したような表情になる。
「してないわ・・・ 」
「まぁ、失礼致しました 」
何で?って聞きたいけど、聞くのは失礼よね、どうやって聞こうかしら・・・
「貴方のせいなんじゃないの?!」
「え? 」
私のせい? 何故?
「私・・・何かしましたでしょうか? 」
クリスティーナ様が何を言いたいのか全然分からない。
何を根拠にそんな事を言っているのかしら・・・そう思う私をよそに、クリスティーナ様はますます顔を歪めて私を睨みつける。
「知ってるのよ、貴方転生者でしょ! 」
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