きみに会いたい、午前二時。

なつか

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 外は一桁台の気温のはずなのに、二人の周りだけは温かそうに見える。漫画だったら、ハートが周りに飛びまくってるやつ。
 少し白けた気持ちでぼんやりと見ていると、ふいに瀬良が立ち止まった。そして彼の恋人が腰をかがめ、二人のシルエットが重なる。
 何してるんだろう――首をかしげた瞬間、急に視界が影に覆われた。反射的に見上げると、俺の真上から晃成が窓の外を乗り出してみている。
 驚いて飛びのくよりも先に、晃成の口が動いた。

「あっ、キスしてる」
「んえぇっ?!」

 どこに驚けばいいのかわからない。咄嗟に窓の外を見るともう二人は離れていて、体育館へと戻って行く恋人を瀬良が名残惜しそうに見送っていた。

「相変わらず仲良いなぁ。羨ましい。ね?」
「うん? そ、そうだね」

 ――羨ましいって、晃成も思うんだ。

 なぜか、勝手に気まずくなって、そらすようにして視線を下げてしまった。ちょっと感じが悪かったかもしれない。
 でも、仕方ないじゃん。せっかく収まりかけていた動悸がまたぶり返してるんだから。
 収まれ! と念じながら、ぎゅっとシャツの胸元を握った。

 それなのに――。

「先輩? どうしたんですか? 調子悪い?」

 晃成が固くなった俺の手をほどくように掴むから。体の内側が一気に熱をもって、絶対に顔は真っ赤だ。
 そんな俺の顔を見て、晃成は驚いたのか、一瞬だけ目を丸くする。でも、次の瞬間には嬉しそうに笑って、ぎゅっと手を強く握りなおした。

「かわいー顔してる」
「はっ、はぁ?!!」

 そのあとすぐに瀬良が来て、晃成は何事もなかったように元通り。俺はその後、何をしていたかほとんど覚えていない。気がついたら晃成に手を引かれて駅のホームに立ち、そのまま電車に押し込まれていた。

 夕方の電車は混んでいて、いつも席には座れない。だから、ドアの横にあるスペースに二人で向かい合って立つのがお決まりのパターン。俺は壁にもたれて、晃成はその前に立つ。
 いつものこと。いつものことなのに、俺は気が付いてしまった。
 電車は揺れる。俺は背中が壁に着いているおかげで結構安定しているからまだいい。
 でも、位置的に掴まるところのない晃成は、俺がもたれている壁に手をついて立つんだ。
 つまり――これ、壁ドンじゃん!
 しかも、車内は駅に止まるたびにどんどん人が増えていく。晃成との距離は近づく一方で、逃げ場もない。
 ちょうど俺の目線の高さにある晃成の唇が、電車が揺れるたびに俺に触れそうになる。
 心臓が痛いほど打ち鳴っていた。
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