4 / 8
4.
しおりを挟む
外は一桁台の気温のはずなのに、二人の周りだけは温かそうに見える。漫画だったら、ハートが周りに飛びまくってるやつ。
少し白けた気持ちでぼんやりと見ていると、ふいに瀬良が立ち止まった。そして彼の恋人が腰をかがめ、二人のシルエットが重なる。
何してるんだろう――首をかしげた瞬間、急に視界が影に覆われた。反射的に見上げると、俺の真上から晃成が窓の外を乗り出してみている。
驚いて飛びのくよりも先に、晃成の口が動いた。
「あっ、キスしてる」
「んえぇっ?!」
どこに驚けばいいのかわからない。咄嗟に窓の外を見るともう二人は離れていて、体育館へと戻って行く恋人を瀬良が名残惜しそうに見送っていた。
「相変わらず仲良いなぁ。羨ましい。ね?」
「うん? そ、そうだね」
――羨ましいって、晃成も思うんだ。
なぜか、勝手に気まずくなって、そらすようにして視線を下げてしまった。ちょっと感じが悪かったかもしれない。
でも、仕方ないじゃん。せっかく収まりかけていた動悸がまたぶり返してるんだから。
収まれ! と念じながら、ぎゅっとシャツの胸元を握った。
それなのに――。
「先輩? どうしたんですか? 調子悪い?」
晃成が固くなった俺の手をほどくように掴むから。体の内側が一気に熱をもって、絶対に顔は真っ赤だ。
そんな俺の顔を見て、晃成は驚いたのか、一瞬だけ目を丸くする。でも、次の瞬間には嬉しそうに笑って、ぎゅっと手を強く握りなおした。
「かわいー顔してる」
「はっ、はぁ?!!」
そのあとすぐに瀬良が来て、晃成は何事もなかったように元通り。俺はその後、何をしていたかほとんど覚えていない。気がついたら晃成に手を引かれて駅のホームに立ち、そのまま電車に押し込まれていた。
夕方の電車は混んでいて、いつも席には座れない。だから、ドアの横にあるスペースに二人で向かい合って立つのがお決まりのパターン。俺は壁にもたれて、晃成はその前に立つ。
いつものこと。いつものことなのに、俺は気が付いてしまった。
電車は揺れる。俺は背中が壁に着いているおかげで結構安定しているからまだいい。
でも、位置的に掴まるところのない晃成は、俺がもたれている壁に手をついて立つんだ。
つまり――これ、壁ドンじゃん!
しかも、車内は駅に止まるたびにどんどん人が増えていく。晃成との距離は近づく一方で、逃げ場もない。
ちょうど俺の目線の高さにある晃成の唇が、電車が揺れるたびに俺に触れそうになる。
心臓が痛いほど打ち鳴っていた。
少し白けた気持ちでぼんやりと見ていると、ふいに瀬良が立ち止まった。そして彼の恋人が腰をかがめ、二人のシルエットが重なる。
何してるんだろう――首をかしげた瞬間、急に視界が影に覆われた。反射的に見上げると、俺の真上から晃成が窓の外を乗り出してみている。
驚いて飛びのくよりも先に、晃成の口が動いた。
「あっ、キスしてる」
「んえぇっ?!」
どこに驚けばいいのかわからない。咄嗟に窓の外を見るともう二人は離れていて、体育館へと戻って行く恋人を瀬良が名残惜しそうに見送っていた。
「相変わらず仲良いなぁ。羨ましい。ね?」
「うん? そ、そうだね」
――羨ましいって、晃成も思うんだ。
なぜか、勝手に気まずくなって、そらすようにして視線を下げてしまった。ちょっと感じが悪かったかもしれない。
でも、仕方ないじゃん。せっかく収まりかけていた動悸がまたぶり返してるんだから。
収まれ! と念じながら、ぎゅっとシャツの胸元を握った。
それなのに――。
「先輩? どうしたんですか? 調子悪い?」
晃成が固くなった俺の手をほどくように掴むから。体の内側が一気に熱をもって、絶対に顔は真っ赤だ。
そんな俺の顔を見て、晃成は驚いたのか、一瞬だけ目を丸くする。でも、次の瞬間には嬉しそうに笑って、ぎゅっと手を強く握りなおした。
「かわいー顔してる」
「はっ、はぁ?!!」
そのあとすぐに瀬良が来て、晃成は何事もなかったように元通り。俺はその後、何をしていたかほとんど覚えていない。気がついたら晃成に手を引かれて駅のホームに立ち、そのまま電車に押し込まれていた。
夕方の電車は混んでいて、いつも席には座れない。だから、ドアの横にあるスペースに二人で向かい合って立つのがお決まりのパターン。俺は壁にもたれて、晃成はその前に立つ。
いつものこと。いつものことなのに、俺は気が付いてしまった。
電車は揺れる。俺は背中が壁に着いているおかげで結構安定しているからまだいい。
でも、位置的に掴まるところのない晃成は、俺がもたれている壁に手をついて立つんだ。
つまり――これ、壁ドンじゃん!
しかも、車内は駅に止まるたびにどんどん人が増えていく。晃成との距離は近づく一方で、逃げ場もない。
ちょうど俺の目線の高さにある晃成の唇が、電車が揺れるたびに俺に触れそうになる。
心臓が痛いほど打ち鳴っていた。
13
あなたにおすすめの小説
役を降りる夜
相沢蒼依
BL
ワンナイトから始まった関係は、恋じゃなくて契約だった――
大学時代の先輩・高瀬と、警備員の三好。再会の夜に交わしたのは、感情を持たないはずの関係だった。
けれど高瀬は、無自覚に条件を破り続ける。三好は、契約を守るために嘘をついた。
本命と会った夜、それでも高瀬が向かったのは――三好の部屋だった。そこからふたりの関係が揺らいでいく。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
人並みに嫉妬くらいします
米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け
高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
君を選ぶ理由 〜花の香りと幼なじみのΩ〜
なの
BL
幼い頃から、桐生湊は桜庭凪のそばにいると、花が咲いたような香りを感じていた。
祖父同士が幼馴染という縁もあり、二人は物心つく前からいつも一緒だった。
第二性の検査で湊はα、凪はΩと判明。
祖父たちは「完璧な番」と大喜びし、将来の結婚話まで持ち上がる。
――これはαとΩだから?
――家のため?
そう疑う湊。一方、凪は「選ばれる側」としての不安を胸に、静かに距離を取ろうとする。
湊の兄・颯の存在も、二人のすれ違いを加速させる。
花の香りの奥に隠れた本当の気持ち。
役割や運命ではなく、「君だから」と選び直す、
幼馴染オメガバースBL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる